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    スピンオフ

    まえにし猿棚

    DOODLE2024年度ルクイユほの怖いBL準備号に見せかけた脇役達のスピンオフ。ボンデージ・アーティスト見習い×ポルノスター
    美しい年齢達 ”ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。”
     そう書いた小説家は、35歳の時にフランスの浜辺で戦死してしまったそうだ。15年余分に生きた暁には、その傲慢さも少しは悔い改められていただろうか。

     少なくともシャハブからすれば、彼の考えは全く傲慢なように思えた。世間が20歳の人間を美しいと定義付けるなんて、無邪気に信じていたのだから。
     この業界だと、20歳にもなればそうそう新人とは見做されない。高校を中退するや、国中からニューヨークへ、ロサンゼルスへ、マイアミへ、グレイハウンド・バスの片道切符を買ってぞくぞく押しかけてくるポルノスター志願者は後を経たない。例え古い肉が腐ろうと、新鮮な肉のお代わりは幾らでも。動画サイトのプロフィール欄を検索してみるがいい。この国中の19歳が登録しているのかと思うほどの人数が現れる。明らかに盛っている人間もいれば、その容姿で名乗るのは幾ら何でも肌が弛んでいるだろうと思える者まで、19歳の示す射程範囲は様々だった。
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    plntanightlunch

    DONE残響スピンオフ。もういくつめかわからない。三井酒店で働くモブの久保さんが、「7」に行く話です。
    おいしいお酒が飲みたいだけなのに 店に入る少し前に約束をしていた友人から遅れると連絡をもらった久保は急がずにきてと返信し、そのまま店に入るか本屋に行って時間を潰すか数秒迷った後で、やはりそのまま歩を進めるほうを選んだ。かばんには読みかけの本が入っていたし、今日行く予定の店は一人で飲むことに躊躇するような店の雰囲気でもない。なにより喉が渇いていた。

     歌舞伎町はそれほど行きたい街というわけではない。ごちゃごちゃしているし、道には人も多ければゴミも多い。そのくせ隠れた名店みたいなのが多いのが、ついつい好きでもない街に足を向けたくなってしまう理由でもあるのだが。「7」だってそのひとつかもしれない。ホテルほど敷居も値段も高くなく、だからといってカジュアルに振りすぎていることもない。外の喧騒とは逆に静かに飲むことだけを目的としている客が集まっているし、酒はうまい。カウンターに座るとわかるが、バーテンダーの後ろの棚に並ぶ酒は結構なコレクションで、これはまあ、うちの社長の営業の成果だろう。口はうまいからあの人は……考えるともなしに考えて、そこまで思考が到ったところで、久保は息を吐き出した。仕事が終わってまで会社のことを考えるなんてよくない。オフィスを一歩出たら仕事のことは忘れる。これが日々を穏やかに過ごす大原則だというのに。
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