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    nanana

    PAST文アルでマリみてパロ

    【姉妹】:学園生活を規律正しく円滑に過ごすために、指導者役になる上級生が下級生と「姉妹」になる。上級生、下級生いずれも1対1で行うものであり、複数の「姉」、「妹」を持つことは出来ない。
    【山百合会】:生徒会。選挙で選ばれる役員は紅、白、黄の3人の薔薇さまだけだが、3人だけでは手が足りないため、手伝いとして妹である薔薇のつぼみ、さらには薔薇のつぼみの妹が常時働いている
    マリみてパロ詰め1.多喜啄
    たきじ(1年)とたくぼく(3年紅薔薇様)

    「あ」
     とお互いに声が出た。

     いつものように昼休みに聖堂の隅にある小部屋に逃げ込もうとした時の事だった。そこは何に使っている部屋なのかはよく知らない。知っているのは小さい部屋で滅多に人がこず外にも声は響かないということだけ。誰もいないだろうと信じ切って開けた部屋に先客がいたのだ。
     相手の顔は酷く狼狽していた。一年生だろうか、見たことのない顔である。癖のある柔らかい猫っ毛が肩のあたりから伸びている。床に座り込んでいるからよくわからないけれどやたらと手足がすらりと長い。綺麗な足をしているなと助平親父のような事を思った。
    「先客か?悪い、出ていくから」
     先客がいたのなら仕方ない、出ていこうと背を向ける。こんなところで何をしていたんだろうと聞きたい気持ちもあったけれど、初めて会った下級生に尋ねるなど自分のお姉様のお姉様にあたる先々代の赤薔薇様でもあるまいし聞けやしない。
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    asaki

    PAST2022.12.18[星々が紡ぐ旋律2]にて展示していた作品。

    卒業式後、気持ちに見て見ぬふりをする桐ケ谷と落ちてくるのを待つ刑部の話

    ※多分、今後続きます。
    【刑桐】Irresistibile/春 すうすうと無防備に寝息を立てる男の姿を、初めて見たかもしれない。
     二人掛けのソファに窮屈そうに脚を投げ出し、胸元には読みかけの参考書らしきものが伏せられている。
     ベランダの窓は開け放たれ、生成りのシアーカーテンが揺れるたびに影が揺らめく。甘い匂いを乗せた風がはらりはらりと桜を誘い込んでくるのか、室内に桜の花弁が散っていた。
    (絵になる男――)
     まるで映画かドラマのワンシーンのようで、桐ケ谷は思わず舌打ちしたくなった。


     高校を卒業したら進路は分かたれる。今までのようにつるんではいられない。
     地元の専門学校に進んだ桐ケ谷と、都内の大学に進学した刑部――どうしたって、共有する時間は減る。中学と高校時代、小学校の時よりも一緒にいた時間は少なかったが濃度が違った。ぎゅっと凝縮されていて、いつでも桐ケ谷の後ろには刑部がいるような気がしていた。事実、スターライトオーケストラとして活動している間は刑部とほぼ一緒にいたと言っても過言ではない。菩提樹寮へ通う際も、一緒にツーリングしているような気になった。
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