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    志村

    はねた

    DONE志村さんが月島さんに迫るところを見た壬生さんがやきもきする話を書きました。
    ほたつき前提。
    あたみのじけん「月島コーチ、僕と熱海の宿で一夜をともにしていただけませんか」
     いきなり耳に飛びこんできた声に、壬生は手にしたカメラをとり落としかけた。
     おわ、とすんでのところでストラップをひっつかみ、どうにかこうにか高額備品と地面との衝突は免れる。ふうと深い息をつきつつ、さていったい何ごとかとあらためて声のした方角へと目を向けた。
     秋も間近い時分、ユースの練習場はこどもたちの活気で賑わっている。AチームとBチーム、それぞれに切磋琢磨ししのぎを削り合う、その様は清々しくまさに青春と呼ぶにふさわしい。トップチームのむくつけき選手たちの撮影を終えたあとではいっそうに、青少年の爽やかさは目に眩しかった。
     練習場の片隅、AB両チームともに見渡せる位置に陣取って、壬生はカメラを構えているところだった。トップチームとクラブユース、それぞれの練習風景をおさめS N Sにあげるのがちかごろ壬生の日課となっている。練習の光景や日常のちょっとしたひとコマなど、ものめずらしいのかサポーターの反応は上々だったから仕事のモチベーションもそこそこ高い。
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    建河羊子

    DONE赤エンド後の、野盗と地頭の話。甥御もいますが、カップリングの含みはありません(が、例のごとく限界オタムーブっぽいものはかましています)。地頭が元地頭になっていたり、いろいろ捏造しています。また書き手は地頭推しのため、お嫌いな方はご注意ください。
    ツにはまって三本目くらいに勢いだけで書いたネタを今さら形にしてみました。
    二人の間に、和解まではいかないものの何かしらの歩み寄りがあれば、という願い。
    たなごころに黎明積みて 飯を作るのもひとり分なら、食うのだって当然ひとり。洗い物だってひとり分で。夜に響く寝息も、気配も、ひとつきり。
     その空虚とは一年近い付き合いとなり、そろそろ寄り添われるのが当たり前になりつつはあるのだけれど――唐突に、どうしようもなく受け入れ難くなる時がある。
     胸中にて起こる、通りもののごとき凪いだ嵐は、自身にすらどんな契機で発生するのか予測もつかない。

     けれども、いかなる手段によるものか。この男は毎度、その瞬間を予め見越しているかのよう、姿を現すのだ。

    「久しいな、ゆな。息災であったか」
    「……あんたに比べりゃあね」
     同じ言葉をそっくりそのまま叩き付けてやりたい衝動をぐっと抑え込んだ代わりに、皮肉が飛び出てしまった。
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    5296mithu5296

    PROGRESS続々・もしも境井家が代々志村家当主の夜伽をしていたらの話 3
    (支部に無印と続があります)
    若い志村×若い正
    「大事ないか、正」

    かたりと音がして我に返ったというのに、まだ夢の世界のようにふわふわしている。
    正は軽く目眩を覚えながら、正面を見た。
    黒曜石の輝きを持つあの目が、ぐぅっと近付いていた。
    志村は膳を脇に避けて、身を乗り出している。
    長く美しい指先が、正の方へ伸びてくるー…。

    「大事ありませぬ…!」

    裏返りそうな声を無理に抑え込み、俯いて袴の酒の染みを睨んだ。
    あぁ、恋をしてしまっているのだ。
    城にまで会いに行きながら、志村を目の前にして声をかけることができなかった……郷のおなごが〈若様を一目見るだけで幸せにございます…〉と愛を伝えてくれたことがあったが、まさにそれではないか。
    恋をしてしまっているのだ。
    なんと不毛な恋か。
    ただの掟で抱かれただけだというのに…。
    気遣うようにこちらへ伸びた志村の指先を、これ見よがしに顔を逸らして拒絶する。
    志村はしばらく思い悩んでその手をそのまま宙に置いていたが、やがて、ゆっくりと引っ込めた。
    正は目の皿をふつふつと燃え上がらせながら、この愚かしい恋心を読まれたならば困ると、志村のあの黒々と濃く美しい双眸を決して見ないようにした。

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    5296mithu5296

    PROGRESS続々・もしも境井家が代々志村家当主の夜伽をしていたらの話 2
    (支部に無印と続があります)
    若い志村×若い正
    ふらふらするので一度きんきんに冷えた井戸水で顔を洗い、正は改めてしゃっきりした心持で屋形の中へと戻った。
    父を探したが、明らかに帰り支度を整えている家人に出くわした。

    「殿は既にお出かけになられました。殿が、我らも今夜は家へ帰るようにと」
    「…聞いている」
    「若様と志村様をお二人にするようにと」

    この若い男の家人は不躾である。
    普段から若い正の女の影など探るのだ、正はあまり好きではない。
    今夜も“何故地頭の嫡子と二人きりなのだろう”と興味津々である。
    普段ならば苦言を呈して下がらせるが、正としても今からその地頭の嫡子を鍛えたこの体で遊び女のように誘惑しなればならないのだと思うと、後ろめたさから強く言えない。

    「……父上からのお申し付けだ」

    それだけ言って、正は家人を突っぱねた。
    屋形はとっぷり闇に包まれているが、勝手知ったる屋形の間取りである。
    わざと足を引きずってゆっくり歩いてみても、直ぐ、ろうそくの灯がゆらゆらと廊下まで伸びている部屋の前へと到着した。
    正はその場に片膝をついた。
    そして“ふっふっふ―――っ”と息をついてから、唇を薄く開いた。
    …が、喉がカサカサに絡 2853

    5296mithu5296

    PROGRESS続々・もしも境井家が代々志村家当主の夜伽をしていたらの話
    (支部に無印と続があります)
    若い志村×若い正

    前にツイートで流したんですが、ツイートだと遡りにくいのでここにおきます。
    進捗ここに載せつつ、完成したらまとめて支部にあげます。
    続々・もしも境井家が代々志村家当主の夜伽をしていたらの話





    青海湖が、冬の宵の黒くくすんだ夕日の残火に、水面を怪しく揺らめかせている時分である。

    「お招きに預かり、感謝致す」
    「こちらこそお立ち寄り頂きまして有難う存じます。冷え込んで参りましたでしょう」

    屋敷にて大黒柱たる父がそのように若者を歓待している様を、正はそうそう見ない。
    父はどちらかと言うと居丈高な侍で、腰が低いということもない。
    だが相手がのちの地頭を約束された志村家嫡子であれば、態度も違ってくるのだろう。
    正としては、父がそのように熱烈に歓迎して招き入れる、寒風で頰や鼻に赤みを滲ませている志村の若を目撃したとき、雷に打たれたようになった。志村が訪れるなど寝耳に水である。
    父の後ろで目を見開いてすっかり固まっていると。

    「志村殿、我が息子は…無論、ご存知でしたな」

    ご存知も何もである。
    父はわざと、含ませて尋ねたのだ。

    「…あぁ…」
     
    志村の切長の目が正を見た。
    途端、心の臓を矢でズバリと射抜かれたような衝撃が走り、正はバッと胸元に手をやった。
    数日前、居てもたってもいられず志村城前まで出向いて志村の姿 1964