Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    王様

    えんどう

    DONE▽オメガバもどき
    ▽王様が巣作りする話
    愛のかたち▽「巣作りする王様ってかわいくない」と思って書いた話です
    ▽オメガバについて浅い知識しかない人が書きました
    ▽転生記憶あり風味の現パロ
    ▽ぐだキャスギル





     ぬかった。確かにここのところあれこれと立て込んでいたのだが、それを体調管理を怠ったことの言い訳にはできない(と、先程散々秘書に言われた)。周期的に言えばあと一週間は先のはずだつたから、大丈夫だと高を括っていたのは慢心だったか。身体が重い。熱い。息を吐くのも億劫だ。玄関先でへたり込みそうになる脚を叱咤して、背を預けていた玄関ドアから身を起こす。ここで座り込めば動けなくなる。ネクタイを緩め、震える指でシャツのボタンを二つ三つ外してズボンのポケットから引っ張り出したスマートフォンの画面を見やる。会話の履歴は今朝、『今日はバイトがあるから夜は遅くなる』という連絡だった。遅くなる、と言うことは閉店までいるのか。さて、閉店は何時だったか。零時か?それ以降だったか?常ならば持ち帰った仕事を片づけているうちに帰ってくるのだが、この状態でそれはとてもできそうにない。できることなら今すぐに帰ってきてほしい、が、無様にそれを請うほどまだ正気は失っていない。画面上の時計は正午を示している。状況を伝えるべきなのは解っているが、少し躊躇ってから画面をロックする。帰ってくるまで耐えればいいだけの話だ。深い溜め息を吐いてスマートフォンをポケットへしまおうと腰に当てたところで、振動と共に電子音が腰に伝わって思わず取り落とす。廊下の床にゴトッと重たい音を立てて落ちたスマートフォンの画面には着信を知らせる表示が光っていた。今確かに伝えるのをやめたはずなのに何故。一瞬無視するかとも考えたが、無視したところで諦めはすまい。壁に手をついてのろのろと屈み込んで拾い上げる。画面に触れ、耳に当てれば即座に切羽詰まった大声が鼓膜に飛び込んできた。
    6860

    鬼ムチコ

    MOURNING次に出す予定の本だったけど、これ以上の進展が書けないのでここに供養。
    トリップもののお話。千里眼に偶然写ったぐだちゃんを、気まぐれで自分の世界に引きずり込む王様。所有欲を満たす行動だったけれど、次第にぐだちゃんという存在に惹かれていく王様は……という感じなお話。
    ・序
     しばらく発動していなかった千里眼が、断片的に映像を映し出す。灰色の空に、窮屈で息苦しい街並み。我が国とは違い、何とも生きづらそうな世界だと傍観していると、映像は突如ぶつりと消えてしまう。そして映写機のようにまた別の映像を映し出す。
    「あれは……」
     一人の少女が歩いていた。見目は質素だがどこか上質な布地に身を包み、四角い物を腕に下げてカサカサを音を立てる見たこともないような白い物を手に持って、ただひたすらに暗闇の中を歩く。だが空は闇に包まれているのに、辺りが妙に明るいのは本当に今が夜なのかと疑うほどだ。
    「チッ、ノイズがひどいな」
     久方ぶりの発動の影響だろうか、ホワイトノイズが映している映像の邪魔をし、歩いていた少女の姿を追うことができない。あれは誰なのか。なぜ己の千里眼はこの少女を映し出すのか。理由は全くと言って見当がつかないが、その少女には一際目立つものがあった。
    11657