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    盗賊

    まさのき

    DONEアンデルセンの「雪の女王」をわりとまじめにパロったカイ潔(+糸師兄弟)です。藤田貴美さんの漫画版に多大なインスピレーションをいただいてます。中盤までカイザーの気配が皆無ですが、ちゃんとカイ潔です。

    ゲルダ→潔(と冴)、カイ→凛、盗賊の娘→カイザー
    花待ちの窓雪の晩に、枕べで聞く物語



    第一のお話 はじまり


     昔、むかしのお話です。ここではないどこか遠くの国の、知らない土地の、小さな箱庭の村に、ひっそりとよりそい合って暮らす、三人の子どもたちがおりました。三度の春と冬のあいだに生まれた彼らは、名前をそれぞれ冴、世一、凛といいました。赤髪の冴は、三人の中ではもっとも年長で、その下に世一と凛が続きます。泣き虫世一と、やんちゃな凛、面倒見のよい冴の三人組は、遊ぶときも、出かけるときも、眠るときでさえもいつも一緒でした。血をわけた兄弟である冴と凛は、となりの家に住む世一のことを、まるで本当の兄弟のようにたいせつに思っていました。世一だって、冴と凛の二人と血がつながっていないことなんて、つゆとも気にしたことはありません。だって、朝も昼も夜も、扉を開けばそこに冴と凛が立っていて、ふたりといれば、世一に怖いものなんて、なんにもなかったのです。三人は野を駆けて遊び、泥まみれになって眠り、手に手をとって、いつまでもいつまでも仲むつまじく暮らしていました。
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    じゅれ

    TRAININGbrnr盗賊団時代の日常のようなお話。えちちはないけどこの後してほしい。ネ口は面倒くさければ面倒くさいほど良い。
    夜寒を凌ぐには 次に狙っている宝物。今練っている作戦。誰を連れていき、どう立ち回らせるか。勝算の程度。危惧すべき点は何か。決行にあたるおおよその日程、等々。厨房の大テーブルに地図を広げて、ブラッドが語る。活力に満ちた、耳馴染みの良い低音だ。饒舌さからその自信の程も伺える。自ら危ない橋を渡ろうとする性分なのは苦手だが、生き生きとして、愉しそうにしているこいつを見るのは、結構好きだ。
     昼間よりもぐっと冷え込む冬の夜、敢えて起きている物好きはそうそういない。見張りを任された奴以外はそろそろ大人しく就寝しているだろう。そんな夜更け、明日の朝飯の支度を兼ねて食材を処理していた所にやってきたブラッドは「ちょっと耳貸せ」と言った。あいにく手元は忙しかったので、「耳だけでよけりゃ、いいよ」と返し、作業の片手間、男の声に耳を傾けた。楽観的な希望的観測ではなく、きちんと計算立てられ、緻密に企てられており、しっかりと現実味がある。ブラッドの作戦が失敗に終わることは、予想外の事態ーー例えば、他の北の魔法使いとバッタリ遭遇するとかーーを覗けば、まずない。それは決行前にかき集められる情報の範疇を越えている事象だから、もはや運としか言いようがないものだ。それでも、その万が一を想定して思案している所は、やはり抜かりがないというか、俺も含め、皆が安心して付き従う所以なのだと思う。
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