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    自給自足

    tofukinoshita

    MOURNING1~2年ほど前に書こうとして挫折していた文或二次小説の供養です……
    ししょとーのつもりです。オリジナル司書注意!

    作風は全然違うのですが、とあるお方のハイクオリティ司書藤小説を読んで、ししょとーにはまってしまったのです……。マイナーCPなので自給自足の日々です。
    午睡「あれ、何処に行っちゃったんだろう……?」
     談話室で目覚めた藤村は、ソファーの空いた部分に無造作に置いていたはずのマントの不在に気づき、辺りをきょろきょろと伺っていた。
     部屋の角にある蓄音機からは『亡き王女のためのパヴァーヌ』が流れていた。誰か洒落た趣味の文豪がセットしていったのであろう、心地よいクラシックのレコード。ここ最近頻繁に頼まれる助手業務の疲れとこの音楽とが合わさった結果、不覚にも居眠りをしてしまったようだ。
     図書館の文豪の中でも藤村と親しくかつ情報通な独歩に尋ねると、繊細な模様の藤色の裏地が美しい茶色の布を司書が抱えて歩いている姿の目撃情報があったとのことだった。

     コンコン、とドアをノックしたが反応がなかったので、少し躊躇った後、ドアを開ける。年若くして飛び級で大学を卒業しアルケミストになった特務司書は、実験に集中しすぎると周りが見えなくなるきらいがあった。勿論、ノックの音を聞き逃すことも。
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    さいか

    MOURNINGらぶらぶハッピー自給自足
    i犬みたいだと笑われることがあるけどそう言う自分だって小さな動物みたいじゃないかと思いながら見下ろしている。ベッドに押し倒して好き勝手して、そんな無体を易々と受け入れる恋人の頭を、耳を、頬を、撫でるたびにそう思っている。悩ましげに寄っていた眉間が緩んでぼんやりとした目の色が覗く。言葉に成りきらない甘えた声を微かに漏らす唇が笑む。ぐりぐりと、掌へじゃれつく仕草。柔らかい髪がくしゃりとからまる感触。たぶん、いま、顎の下を撫でたらごろごろっていうんじゃないだろうか、なんてからかうような軽やかな気持ちと裏腹に胸が詰まって、喉の奥は熱くて、なんだろうこの感覚、と思っている間になぜか涙が出そうになる。訝しむ瞳に名前を呼ばれるより先に動いて、呼吸ごと抱き締めて誤魔化した。衝動的にそうしたいと思ったことも、身の内に湧く暖かい何かだってたぶん愛と呼んでもいいもので、どうにかしてそれを明け渡したくてもどかしい。でも、目の前の恋人が求めているのは本当にそんなものなのか、いまいち自信が持てないでいる。自分の中にあるのが不純物だと知っている。だって、与えることだけを望むのは、どうしてもずっとできずにいるんだ。
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