蛍
さくらい
PAST蛍🔥/塚橋既刊『群青抱きて』収録、戦後の淀野さんとたろちゃんのお話です。短いですが気に入ってます。点と線約束の時間の少し前に着くと、もうそこに彼がいた。
「すみません、突然お呼びだてして」
「いえ、こちらこそわざわざこんな田舎まで来ていただいて……俺がお役に立てるかどうか」
油で薄汚れた作業服、と裏腹に名刺を受け取った指先は綺麗だった。
「特攻に征った〝やぎ〟という人の情報を探していましてね、もう十年になります。ご存知ありませんか?」
「やぎ、さんですか。聞いたことあるようなないような……そんな人いたようないないような……すみません、人の名前を覚えるのがあんまり得意じゃなくて。それに実際整備兵をしてたのもそんなに長い間じゃないんです、すぐに終戦になってしまって」
「いいんですいいんです、わかります。私もね、せっかく名前と顔を覚えても次の日にはもう会えない人になっている、そんなことしょっちゅうありましたから。仲良くなるだけ、その人のことを知れば知るほど、別れが辛い時代でしたね」
2015「すみません、突然お呼びだてして」
「いえ、こちらこそわざわざこんな田舎まで来ていただいて……俺がお役に立てるかどうか」
油で薄汚れた作業服、と裏腹に名刺を受け取った指先は綺麗だった。
「特攻に征った〝やぎ〟という人の情報を探していましてね、もう十年になります。ご存知ありませんか?」
「やぎ、さんですか。聞いたことあるようなないような……そんな人いたようないないような……すみません、人の名前を覚えるのがあんまり得意じゃなくて。それに実際整備兵をしてたのもそんなに長い間じゃないんです、すぐに終戦になってしまって」
「いいんですいいんです、わかります。私もね、せっかく名前と顔を覚えても次の日にはもう会えない人になっている、そんなことしょっちゅうありましたから。仲良くなるだけ、その人のことを知れば知るほど、別れが辛い時代でしたね」
satoooo_sum
INFOCoC「旅館の捕食者」KP/もる SKP/Ri、うめ
PC/PL
HO1→榎本凪花/みんとあいす
HO2→柳蛍/はぎ
HO3→九重蒼/さとー
恐怖と面白さのバランスがとても素晴らしいシナリオでした!
面白かった…! 4
sujyo_trpg
INFO+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+𝐂𝐚𝐥𝐥 𝐨𝐟 𝐂𝐭𝐡𝐮𝐥𝐡𝐮
寒暁に童心
✧𝐊𝐏/𝐊𝐏𝐂:こもるるさん / 法霊正宗
✧𝐏𝐂/𝐏𝐋:数条 / 蛍火 扇
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
▽ シナリオクリア
「……まったく、仕方のないひとだ」
ぱん小屋
MEMOCoC『花とひきがね』KPC/KP:二貝堂 蛍 / まや子さん
PC/PL:葉野 公貞 / ぱんこ
『庭師は何を口遊む』自陣のHO2さんとお話してきました。
KPさん、二貝堂さん、ありがとうございます。お話を聞けてよかった…。これからもよろしくお願いします。
さくらい
MOURNING蛍🔥/こいさや戦後のお話。小池が和菓子屋の息子だったらいいなという願望からできました。
狭山、小池の家に行く 終戦から二年が経った秋、俺は帰還前に小池から手渡された住所へ足を向けた。なぜ会いたくなったのかと言われれば、自分の方も落ち着いたのでそろそろ会ってもいいかと思ったからだ。手土産に道中で和菓子も買った。物資の少ない時分に、手に入れるのはなかなか大変だった。本当だったら俺が食べたいくらいだ。食べてしまってもよかったし幾度となく食べようかとも思ったが、戦時中ことあるごとに大福が食べたいと言っていたあいつの顔を思い浮かべてはこらえた。そうしてはるばるたどり着いた住所にあったのは一軒の小さな店だった。
「いけ屋……」
食堂か? 白いのれんに書かれた店の名前を呟いてみる。あいつの家は商売をしていたのか。実家がなにをしているかなんて話まではしなかったしな。もし客があったら迷惑になるかとも考えたが日にちと時間を前もって手紙で伝えておいたし大丈夫だろう。俺は息を吸うとのれんをくぐった。
3884「いけ屋……」
食堂か? 白いのれんに書かれた店の名前を呟いてみる。あいつの家は商売をしていたのか。実家がなにをしているかなんて話まではしなかったしな。もし客があったら迷惑になるかとも考えたが日にちと時間を前もって手紙で伝えておいたし大丈夫だろう。俺は息を吸うとのれんをくぐった。
さくらい
MOURNING蛍🔥/こいさや現パロ。狭山くんイメージ香水を作ったので香水作りに行くこいさやを書きました。
選ばれしもの「香水?」
買いに行きたい、じゃなく作りに行きたいと言われた時は驚いた。香水って作るもんなのかー、って。
「この店だ」
狭山に連れられて行った店は商業施設の中にあって、そこであいつはなにやら真剣な顔をして店員のお姉さんと話してた。てっきり一緒に選ぶのかと思ったのに「お前は適当にその辺見ていてくれ」と言われてしまい暇な俺は言われた通り適当にその辺に置いてあった香水の香りを手当たり次第に嗅いだ。
(お、いい匂い)
(甘ったる)
(……草?)
(どっかで嗅いだな……柔軟剤か?)
(おーっ! これクレっぽい! あとで教えてやろ)
十数種類も嗅ぐとさすがに鼻が馬鹿になってくる。遠目に狭山の方を見てみるとまだお姉さんとなにやら真剣な顔で話をしていた。【ご自由にお使いください】というラベルが貼られた小瓶には珈琲豆が入っていて、嗅いでみると鼻の中のごちゃごちゃした香りがいくらかマシになった。気を取り直してまたいくつか香水の香りを嗅いでから狭山の隣に行くと「香水を作りに行きたい、お前も付き合え」と言った割には話に入ってきてほしくないようで向こうへ行ってろと言いたげな視線を向けてくる。なんだよー、そんなにお姉さんと二人きりで真剣な顔で話すことがあるのか。仕方ない。店内はカップルや若い女の子のグループでいっぱいだ。みんな匂いを嗅ぎながらキャンキャンもといキャーキャー言っている。うふふ、あははと楽しそうな声も聞こえる。俺はきれいなお姉さんと二人で真剣に話し合う狭山の横顔を見つめてた。そんな顔久しぶりだ、と言うか滅多にしたことないだろ、俺にだって。でもそんな顔も好きなんだよなー。色んな匂いを嗅ぎすぎて俺は鼻どころか頭も心も色んな感情でぐちゃぐちゃになったらしい。リラックスとかリフレッシュとか森林浴、とか書いてあるものも嗅いでみたが全然落ち着けない。それどころかざわざわするしイライラもしてきて、なのにお前は変わらずきれいな顔してそこにいる。ここに俺がいるのにまるで眼中にないみたいに。なんだか初めて会った時のことを思い出した。俺に興味がない、眼中にないってツラしてツンとすましてたな。そんな俺と、興味なかったはずの男と楽しげに歩いてるお前が好きだ。なんだか照れくさくて、嬉しくなるから。でも今はちょっとだけ初めて会った時よりも遠く感じる。他人より、他人に感じるよ。
5254買いに行きたい、じゃなく作りに行きたいと言われた時は驚いた。香水って作るもんなのかー、って。
「この店だ」
狭山に連れられて行った店は商業施設の中にあって、そこであいつはなにやら真剣な顔をして店員のお姉さんと話してた。てっきり一緒に選ぶのかと思ったのに「お前は適当にその辺見ていてくれ」と言われてしまい暇な俺は言われた通り適当にその辺に置いてあった香水の香りを手当たり次第に嗅いだ。
(お、いい匂い)
(甘ったる)
(……草?)
(どっかで嗅いだな……柔軟剤か?)
(おーっ! これクレっぽい! あとで教えてやろ)
十数種類も嗅ぐとさすがに鼻が馬鹿になってくる。遠目に狭山の方を見てみるとまだお姉さんとなにやら真剣な顔で話をしていた。【ご自由にお使いください】というラベルが貼られた小瓶には珈琲豆が入っていて、嗅いでみると鼻の中のごちゃごちゃした香りがいくらかマシになった。気を取り直してまたいくつか香水の香りを嗅いでから狭山の隣に行くと「香水を作りに行きたい、お前も付き合え」と言った割には話に入ってきてほしくないようで向こうへ行ってろと言いたげな視線を向けてくる。なんだよー、そんなにお姉さんと二人きりで真剣な顔で話すことがあるのか。仕方ない。店内はカップルや若い女の子のグループでいっぱいだ。みんな匂いを嗅ぎながらキャンキャンもといキャーキャー言っている。うふふ、あははと楽しそうな声も聞こえる。俺はきれいなお姉さんと二人で真剣に話し合う狭山の横顔を見つめてた。そんな顔久しぶりだ、と言うか滅多にしたことないだろ、俺にだって。でもそんな顔も好きなんだよなー。色んな匂いを嗅ぎすぎて俺は鼻どころか頭も心も色んな感情でぐちゃぐちゃになったらしい。リラックスとかリフレッシュとか森林浴、とか書いてあるものも嗅いでみたが全然落ち着けない。それどころかざわざわするしイライラもしてきて、なのにお前は変わらずきれいな顔してそこにいる。ここに俺がいるのにまるで眼中にないみたいに。なんだか初めて会った時のことを思い出した。俺に興味がない、眼中にないってツラしてツンとすましてたな。そんな俺と、興味なかったはずの男と楽しげに歩いてるお前が好きだ。なんだか照れくさくて、嬉しくなるから。でも今はちょっとだけ初めて会った時よりも遠く感じる。他人より、他人に感じるよ。
utsm_sta
INFOCoC「フカシカ▲▲」(KPレス)作者*とりPRO様
PC/PL
東雲 玄希/空蝉
蛍原 聖/ヨルさん
両生還にてシナリオエンドでした!ありがとうございました!!
ソプほよん同士で行ってきました!楽しかった!!ツッコミ不在
さくらい
DONE蛍🔥/こいさやお瓶さんに描いて頂いたシガーキスするこいさやがあまりにも素晴らしくて勝手に小説書きました!
またの名を「まったく! 苛苛するっ!」
今日も装備はもちろん、覚悟も決意も万全だった。空はどこまでも限りなく青く雲ひとつない、風もない。これ以上ないほど条件が整っていながら、それでも上はけっして首を縦には振らなかった。暗澹たる思いだ。まさに真っ暗闇。目の前の世界はこんなに眩しくひらけているのに。空はその大きな腕を広げているのに。
地面を飛行靴の底で蹴れば砂埃が立つ。それを見た別隊搭乗員数名の「荒れてるな」「気持ちはわからんでもないがなあ」「何かにあたってどうこうなるものでもあるまい」などという会話がはっきり聞こえた。わざと聞こえるように言っているのだろうか。ちらりと目をやれば慌てたように小走りに視界から消えた。
4670今日も装備はもちろん、覚悟も決意も万全だった。空はどこまでも限りなく青く雲ひとつない、風もない。これ以上ないほど条件が整っていながら、それでも上はけっして首を縦には振らなかった。暗澹たる思いだ。まさに真っ暗闇。目の前の世界はこんなに眩しくひらけているのに。空はその大きな腕を広げているのに。
地面を飛行靴の底で蹴れば砂埃が立つ。それを見た別隊搭乗員数名の「荒れてるな」「気持ちはわからんでもないがなあ」「何かにあたってどうこうなるものでもあるまい」などという会話がはっきり聞こえた。わざと聞こえるように言っているのだろうか。ちらりと目をやれば慌てたように小走りに視界から消えた。
さくらい
MOURNING蛍🔥/こいさやバレンタインのこいさや現パロ。手直ししました。
俺に甘いひと「仕方ない、たまには作ってやるか」
いつもは高級菓子店のハイセンスで洒落たものを小池にやっているのだが(俺が食べたいのもある)今年のバレンタインは手作りのものを渡してやることにした。そうと決まればと張り切って臨んだ俺だったが、何をどうしてこうなったものか。
粉まみれで散らかったキッチン、破裂したチョコレートが四方に飛び散り中が汚れた電子レンジ。それらの惨状を前に泡立て器を握りしめたまましばらく固まっていた。チョコじゃなく俺が固まってどうする! と、誰もツッコミを入れてくれないので自分で入れてみたが、虚しい。泉水か連城に助けを求めよう、おろおろと散らかった材料に埋もれたスマホを探し当て粉まみれの指で画面をタップしたその時だった。
2156いつもは高級菓子店のハイセンスで洒落たものを小池にやっているのだが(俺が食べたいのもある)今年のバレンタインは手作りのものを渡してやることにした。そうと決まればと張り切って臨んだ俺だったが、何をどうしてこうなったものか。
粉まみれで散らかったキッチン、破裂したチョコレートが四方に飛び散り中が汚れた電子レンジ。それらの惨状を前に泡立て器を握りしめたまましばらく固まっていた。チョコじゃなく俺が固まってどうする! と、誰もツッコミを入れてくれないので自分で入れてみたが、虚しい。泉水か連城に助けを求めよう、おろおろと散らかった材料に埋もれたスマホを探し当て粉まみれの指で画面をタップしたその時だった。
さくらい
MOURNING蛍🔥/こいさや戦後の小池と狭山。
下巻書き下ろしの『戦後』を読んで書きました。ちょうどXで戦後の狭山が小池の子供にお土産持ってきてたらいいなあなんて話をしてたので。自己満の捏造。
1965相変わらず軍歌の大合唱は続いている。外にまで漏れ聞こえるその声を右から左に流しながら、小池は一人煙を吐き出す。皆して肩を組んで拳を振り下ろしながら歌っていたその前を、右手を立ててすまんすまんと頭を下げながら通り過ぎたのは、あれはかなり前のことのように思うが。一体どのくらいの時間が経ったのだろう。中の熱気は茹だるようだったが、外は少しひんやりと乾いた風が心地いい。
「ここにいたか」
ふと背中にかかる声は、小池が記憶しているあの頃の狭山よりだいぶおとなしくて静かだ。出会い頭に正面から思いっきり殴ってくるようなあの威勢は今や影もなく、背中を撫でるような甘くやわい調子はぞわぞわとくすぐったかった。もう何度も聞いているのに、だ。
3641「ここにいたか」
ふと背中にかかる声は、小池が記憶しているあの頃の狭山よりだいぶおとなしくて静かだ。出会い頭に正面から思いっきり殴ってくるようなあの威勢は今や影もなく、背中を撫でるような甘くやわい調子はぞわぞわとくすぐったかった。もう何度も聞いているのに、だ。
さくらい
PAST蛍🔥/塚橋既刊『群青抱きて』に載せた書き下ろしです。戦後if
いま、ふたたび 硝煙に覆われた空が少し遠くなってから何日、いや、何ヶ月経ったのか。
「流石に都会の駅は大きいですね」
「そうだな、人がすごい」
茶褐色、青褐色、国防色の人の波。戦争が終わってもなかなか色は戻ってこない。列車も、駅も、どこもかしこも復員兵でごった返していた。一般市民か軍人かで分けられていた世界、軍務を解かれた今は誰しもが一般市民と言えた。駅舎を出たところで靴を磨く少年たち、顔を墨だらけにしてそれでも瞳はその手によって艶やかに光り出す靴を映している。まだ目は死んじゃいない。生きていかねばなと橋内が小さく、しかしはっきりとそう呟いたので、独り言かもしれなかったが塚本は一応はいと返事をした。
「あっちに闇市があるみたいですね」
6605「流石に都会の駅は大きいですね」
「そうだな、人がすごい」
茶褐色、青褐色、国防色の人の波。戦争が終わってもなかなか色は戻ってこない。列車も、駅も、どこもかしこも復員兵でごった返していた。一般市民か軍人かで分けられていた世界、軍務を解かれた今は誰しもが一般市民と言えた。駅舎を出たところで靴を磨く少年たち、顔を墨だらけにしてそれでも瞳はその手によって艶やかに光り出す靴を映している。まだ目は死んじゃいない。生きていかねばなと橋内が小さく、しかしはっきりとそう呟いたので、独り言かもしれなかったが塚本は一応はいと返事をした。
「あっちに闇市があるみたいですね」
moonnooooonmoon
MEMO┈┈┈┈․° 🍁 °․┈┈┈┈✎ 𝖼𝗈𝖼 ⌜旅客叢書 -秋の章-⌟
𝗞𝗣 もえぎユユさん
♨ 𝗞𝗣𝗖 高松 蒼馬
𝗣𝗖 𝗣𝗟
長命寺 蛍杜 ♨ さとさん
六徳 向日葵 ♨ カニみソかんさん
雛方 礼泰 ♨ のう
▷ 𝖤𝖭𝖣-𝟣
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 2
萩田(hagita)
MEMOCoC『福綏たれ』作:あふりかいとうぞう様
KPC/KP:
十海月 白空/サテ様
PC/PL:
新鷹 舷/糸蔵 蛍様
アディラ・クロコッタ/萩田
名雪 豹衛/ゆうれん様
「……外だってのに、良く、寝てしまった……。っつうか、あいつらは本当に恥じらいねぇーなっっ……!!」