華葬　突然に、言葉は花と散る。

「あ…？」
「ミスタ…？」

　出掛ける予定の無い休日、少しクッションのヘタレたフェイクレザーのソファ、硝子のローテーブルに並ぶ違う飲み物の入った２つのマグカップ、身を寄せ合って体温を分かち合う生きる時間の違う二人のイキモノ。

　その足元に。

　薔薇様の芳香を纏った硬い靴で踏み躙じられた萼片と茎の苦い青味の中心に、雫型の５枚の花弁の小花が幾つか寄添った白い球体がひとつ。

「[[rb:天竺葵Geranium > 私はあなたの愛を信じない]]…気に入らないな」

　床に転がる花を横目に、己の吐瀉物を凝視したまま一時停止したミスタへ聴こえる様に、強く低くヴォックスは唸った。

「何で？オレは…」

馴化　普通、というのは日常の積み重ねだ。ルーチンをこなし、スケジュール通りに時間を進め、その流れに揺蕩う。驚きも突発的な事象もなく、全ては手中に収まる範囲の些事である。自分のできることを頑張り、それ以上は必要ではない。目立たず、誰かの目に留まることなく普通は通り過ぎてゆく。まるで日の当たる人間にそっと寄り添う影のように、普通はいつでもそこにある。

　朝がくれば夜が追いかけ、そして一日が終わる時の安堵をアオキは何よりも願っている。誰しも人生の大半であろう普通を手放してまで特別を求める人間の気が知れない。当たり前に積み上げてきたものが、一瞬にしてバラバラに崩れ去った後の絶望は計り知れない。確かに、普通には輝かしさや物珍しさはないだろう。だが失ったらば取り戻しにくいことに変わりはない。

雨あがりの番傘「うわ、また雨か」

蕎麦屋から出るなり髪を濡らした水滴に私はげんなりして声を漏らした。
スメールへ向かう日が決まるまで稲妻に滞在することとしたのだが、どうやら"梅雨"が訪れたらしいのだ。このジメジメした鬱陶しい気候はひと月ほど続くそうで、想像しただけで嫌気が差した。
慣れた様子で歩く稲妻人を見る。着物とやらは一見、さぞ暑かろうと思える格好なのだけれど。

『涼しいでござるよ、先人の知恵が詰まっておる』

のほほんとした、とある少年の台詞が蘇った。
稲妻での長旅に大いに関わりがあった男の子だ。年齢の割にどっしりと構えていて、剣の腕も頭脳も右に出る者はそういない。
とても頼りになる……が、時折真顔で嘘をつきからかってくる為油断は禁物だ。

【瑪德蓮超強學者魔法師高調追求濃縮咖啡王國騎士團團長】————————————————————


從前從前，在大家所熟知的那個餅乾王國以外，還有另一個極為相仿的平行世界，而我們故事中的兩位主角一樣住在汪洋大海的彼端，生活於和平繁榮的共和國裡。
──不過呢，在某些細節處卻有些不同。

今天某位剛入伍的貴族子嗣，不顧同袍攔阻、憤憤地逕直闖進了團長的辦公室，他有太多話想說了，明明抱著能一展長才、成為詩歌所稱頌的對象而申請加入了榮耀的騎士團，卻沒想到遭受了難以理解的對待。
別說是正式訓練了、這幾天下來連武器都摸不著邊，屈就於替市民送包裹、打掃城堡之類的小事，但這裡卻沒有一個反對的意見，整天還能聽到「團長踩我」之類的謎樣發言，沒錯，就是字面上的意思，這氛圍太奇怪了啊！

年輕的見習騎士儘管一頭熱地衝了過來，但見到團長從如山一樣高的文件中抬起頭看著自己的時候，還是不免緊張了起來，對方可是共和國內屈指可數、文武雙全的傑出菁英，雖然凡事親力親為、過於追求完美的個性頗受爭議，不過戰功彪炳、運籌帷幄的手段還是深得團員上下一致敬重臣服，但即使如此、大家整天把那句話掛在嘴上也太誇張了吧！