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    hiko_kougyoku

    DONE若やまささ+千日、逆骨
    「世のため人のため飯のため」①
    ※やまささと言い張る。
    ※捏造あり。かなり自由に書きました。
    ※名前付きのモブあり。
    世のため人のため飯のため①  1

     寒さが日に日に厳しさを増し、いつ雪が降ってもおかしくはないとの囁きを耳にするようになってからどのくらいの日数が経っただろうか。長かった秋が終わり、季節は冬になろうとしていた。
     日が昇ったばかりの透明な空気が、背筋をぴんと伸ばさせる。首筋を撫でる鋭さがまるで刃のようだと感じた長次郎は、そういえばここしばらく斬魄刀の手入れをしていないことを思い出した。思い立ったが吉日。長次郎は朝餉を終えた足で一番隊舎の自室へと向かい、押し入れから道具を引っ張り出すと、職務までの時間を手入れに充てるべく縁側へと座り込んだ。
     周りに人がいないことを確かめて鞘から引き抜くと、厳霊丸は光と言うには頼りない、曇り越しの淡い朝日を受けてやわらかく輝いた。慎重な手つきで柄を抜き、はばきを外しながら確かめれば、刃の表面に皮脂や汚れが付いているのが見て取れる。その向こうに眉間に皺を寄せた自分の顔が朧に映ったのを確かめると、思うところがあった長次郎はふと手を止め、刀を見つめた。
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