Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    2005年

    ぽえうぉ

    MOURNINGヒバツナですが別れ話です。
    2005年から2011年くらいまで稼働していたサイトで書いていたテキストになります。
    初出は2008年ですが2008年バージョンは目もあてられないレベルでヒギィーッて感じだったので加筆修正を加えています。
    あなたは泡になって消える 「海へ行くなら、駅からバスが出ていますよ」というのは女中の話で、行く気などさらさらなかったのに、チェックアウトの時間になってもまだしつこく海の話をされたから、結局海へ行くことになった。「綺麗ですよ、この時期の海は、人ももう少ないでしょうから」とにこやかに微笑む若い女中の話に付き合うのに、疲れたというのもある。「じゃあ行ってみます」綱吉は頷いて鍵を返した。「お出かけになっている間、お荷物お預かりしますよ」という宿の親切に結構ですありがとうと返事をして、宿代を支払い、頭を下げて宿を出ると、初秋の日差しが目をうつように眩しい。女中のお人よしそうなべに色の頬と、彼女の鈴を転がすような「いってらっしゃいませ」という声に送られて、彼らはいよいよ疲れきったものだ。行くも何も海など。別れを決意した二人に、こんな話はただ酷なだけである。二人の間に、何しろもう恋の高揚などないのだ。
    4737

    いずみのかな

    DONEパトレイバー ごとしの。「ランデブー」の続きです。 2005年の火星接近の際に書いたものです。 システムと確率、こことそこ、そして僕と君。
    レプリーゼ カタカタ……、と調子よく鳴っていたキーボードの音が不意に崩れたと思ったら、次の瞬間唸り声ともなんともいえない音が、低く部屋に響いた。 耳障りのよいものとは到底言えない種類の声だ。その調子から声の主の体調を正確に推し量ったらしい男が、
    「少し休んだらどうです?」
     と、モニタの向こうにいるであろう上司に声を掛けた。
    「ああ……うん……」
     相当疲れているのだろうか、返って来る返答も先程の搾り出すような声と大した違いはない。不明瞭な言葉を受けてどう思ったのか、男は一区切りするように小さく息を吐いて席を立った。
     二年前の春 、大学から警察学校を出て交番勤務を経て、まだ総てが手探りだった折り目正しい新人だった頃にこの部署に配属され、それ以来、目の前の男と東京はもちろん日本の津々浦々からロンドン、香港、ワシントンD.C.からベルリンまで、場所がどこであろうと仕事中は常に二人で行動してきた。仕事の濃さに付き合いの長さも手伝って、一見飄々としていて得体が知れないと称されているこの男の様子は、外の人間と違って大抵正確に推し量れるつもりなのだ。
    9428