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    ぬのさと

    DONE双聶本「You Mean the World to Me」につけていたおまけ折り本の再掲。
    最初は秋の話だったのを途中で春に変えたので、秋バージョンを持っている方はレアかも。
    元ネタは北宋の徽宗のエピソードです。
    作中の七言絶句は、『全唐詩』所収の劉長卿「過鄭山人所居」(鄭山人の所居を過ぐ)より。
     寂寂孤鶯啼杏園
     寥寥一犬吠桃源

    (寂寂として孤鶯、杏園に啼き
     寥寥として一犬、桃源に吠ゆ)
    ものいう鳥 数ある仙門世家のうちで唯一、刀術を使う清河聶氏の当代宗主は、聶懐桑という。
     勇猛なこと、義に篤いことで世に名を馳せた聶氏を束ねる長として、聶懐桑はあまりにも頼りない。領内でもめごとが起きても、悪鬼邪魅のたぐいが跋扈していると領民から訴えがあっても、困り顔に気弱げな笑みを浮かべて扇子ではたはたとあおぐばかり。なにを聞かれても「知らない」としか答えない、一問三不知とあだ名される人物だった。
    「――知らない」
     ふいに、つややかな黒い羽根の小鳥がそう云った。暖かな陽射しが明るかった。
    「ふうん、おいしいかい?」
     聶懐桑はにこにこと笑いながら、目もとから頭の後ろにかけて黄色い肉垂れのある、真っ黒な小鳥に手ずから餌をやった。九官鳥は橙色の嘴を開け、
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    kky_89

    MOURNINGmzqsの宋嵐の話の没です
    宋子琛は諦めない!※この小ネタの9割9分9厘が捏造。
    ※小説寄り設定。ホラー、グロテスクの描写があります。R―15

    温氏の横暴は悪化してゆき仙門百家は自領の対処に追われ、白雪閣のような一般人まじりの道観が彼らの頼みの綱となっていく、憂いのまま出奔同然に宋嵐は遊歴に出ることにした。若すぎると自覚はあったが、その頃には道閣で宋嵐に剣で勝てる者もおらず、これほどの力を賜りながら僻地寒村の民を見捨てろというのか、と青い義侠心を叫ばれては誰も彼を引き止めることができなかった。かりに、いつでも戻ってくればいい、疲れた時でも、安らぎが欲しい時でも、理由など何もなくたって構わない、と声をかけるのが精一杯だった。

    旅に身を置くうちに、温氏が滅び、乱葬崗でも戦いが起こったが宋嵐は淡々と邪祟を退けることに従事していた。噂を頼りに赴いた地で他の修士と鉢合わせとなり手柄で揉めたり、依頼されたというのに難癖をつけて報酬を減らされたり、仙家の領地の問題に勝手に手出しをしたとして罰を受けたりするうちに、散々からかわれた堅物さが潔癖症にまで悪化したが幸い彼は一人旅をしていたので宿に戻るか町を出れてしまえば不快に感じる相手もいない。誰もいない方が帰って快適だ、というのはただの強がりだけではなくなっていた。
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