波打ち際の天使or小悪魔「うわあ、大きい波が来た!ねえ子琛!」
子どものようにはしゃぐ暁星塵に思わず宋嵐は苦笑を零す。山育ちの彼は今時珍しく実際に海を見たことがないというから連れて来たのだ。
真夏日が続くけれど海水浴にはまだ早く、サーフィンする人以外は星塵と同じように波打ち際で波と戯れている。
「そう言えば、星塵は泳げるのか?」
「もちろん!」
「それはそうか。海じゃなくてもプールがあるし、体育の授業でも水泳はあるからな」
我ながらバカなことを訊いたと宋嵐は独り言つ。すると星塵から続けて予想外の言葉が返って来た。
「海と違って、川はこんな風に波はなかったけれど。ただ気を付けないと急に深くなったり流れが急になって……子琛?変な顔をしているけれどどうかした?」
「いや……」
野生児か。
そうだった。
一見柔らかく窓際で本を読んでいそうなイメージのある暁星塵は、事実宋嵐などより余程活発で所謂野生児なのだ。
「海開きしたら泳ぎに来るか?」
そう言うと、星塵はパッと笑って頷いた。
「是非!」
「海の家も出来るかな」
「海の家?」
「そう。海水浴と言ったら焼きそばだ」
宋嵐は自分の夏の思い出を星塵に教えた。
「ふふ」
「何だ?」
「その思い出に、今度は私が加われるんだなと思って」
「……、お前は、すぐそういう……。帰りがてら、水着でも見ていくか?」
「選んでくれるの?」
「だからっ」
「あははは。もう少し遊んでからね!」