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    狛犬

    ciff_2

    DONE番のいない狛犬が相方を見つけて首輪をかけるまでのはなし
    首輪 なんだか最近、つけられている気がするのです。分かっています。気のせいだというんでしょう。たしかに振り返っても、歩いた道を引き返してみてもそれらしい者の姿はないのです。同僚たちに打ち明けたとき、疲れているのだと笑われました。勤め先がいわゆるブラック企業なので、確かに彼らの言う通り私はひどく疲れていました。しかし幻覚を見る程ではないと思います。そんな人間がいるとすれば、彼でしょう。職場には私の上をいくオーバーワーカーがいるのです。今日、同じ話を彼にもしたのですが、気の毒なくらいびくびく震えてしまいました。普段の立ちふるまいを思うに、怖がりな性格なのかもしれません。相槌代わりのように「すみません」と何度も頭を下げるので少し困りました。怖がらせたうえに、気を遣わせてしまったのでしょう。申し訳ないことをしました。そういえば、途中から聞き流していたのですが、最後に気がかりなことを言っていました。さて、なんだったかな。・・・すみません。思い出せないみたいです。それからそのまま彼と帰路につきました。ひとりで帰すのが心許なかったのです。そして十分ほど歩いた頃だったでしょうか。ふと、例の気配がしたのです。繁華街を抜けてひと気がない道を歩いていたので余計に不安になりました。こんな場所で危害を加えられたらひとたまりもありません。そのうえ今日は連れもいましたし、なさけない話ですが腕っぷしには自信がないので、たとえなにか起こっても自分の身を守るので精一杯だと思いました。緊張しながら歩いていくと、不意に犬の唸り声が聞こえて足が止まりました。この辺りは路地がたくさんありますし、獣のにおいもしたので、野良犬でも潜んでいたのでしょう。脱力しました。おそれるあまり、私は犬と不審者を勘違いしていたのかもしれません。そう自分を納得させて彼に追いつこうとした私は、しかしまた立ち止まりました。目の前にいるはずの彼が、いないのです。血の気が引きました。振り返ることができませんでした。だって背後から気配がするのです。ここのところずっと私が感じていた、得体の知れないあの気配が。そして首筋にひたりと冷たいものを感じて意識を失う寸前、私は彼の最後に言った言葉を思い出しました。
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    iguchi69

    DOODLE「我が愛しのカルネアデス」
    ※メンスト、バンエピ、あの~を踏まえての狛犬兄弟過去捏造
    時折、兄から映画を観ないかと誘われることがある。
    正直言って煩わしい。双循の持ってくるタイトルは大抵が白黒であったり、後々調べものをする必要があるほど特殊な時代や風習を舞台にしたものが多かった。(ひどい時は色彩どころか音声さえもなかった)去年やっとケーキに乗せる蝋燭を二桁に増やした凱循にとっては退屈で仕方ないものだ。

    しかし断ればどんな嫌がらせを受けるかわからない。向こう三日はおどれは教養が足らん鳥並のおつむにゃちいと難しかったかと嫌味三昧の日々が待っていると思えば、凱循に選択肢は残されていなかった。それに、少なくとも画面の中の世界に没入する数時間は、もはや日常となった性質の悪い悪戯を回避できる。
    凱循はしぶしぶ兄の手招きに従い、暗幕を張った北の部屋へ入った。日当たりの悪い部屋は初春にも関わらずひんやりとした空気で満たされている。思わずくちゅん、とくしゃみがひとつ漏れた。ほれ、と差し出された毛布をひったくるようにして奪う。

    「200分近くあるけえ、便所は漏らす前に言うんじゃぞ」
    「漏らす訳ないだろ! ガキじゃないんだからな!」
    200分、という言葉を頭の中で計算する。全く以ていらつ 2540