Recent Search

    iguchi69

    @iguchi69

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 71

    iguchi69

    TRAINING2023バレンタイン(ジョ双) 6/7
    紙袋いっぱい ジョウは普段鞄の類を持ち歩かない。大切なものはお薬手帳と、その時々に処方された薬の入ったピルケース。そしてそれらを服用するための補助ゼリーと、せいぜいスマートフォンくらいのもので、それらは文字通り肌身離さずポケットに入れておける程度のかさだからだ。
     荷物が増えるとしても、愛機を寝かせた楽器ケースくらいしか思い当たらない。それにしたって、バックパックのように背負うタイプではなく手持ちに限る。いつなんどき道端で行き倒れるともしれない身として、布製の軽くが薄いソフトケースを下敷きにし自慢のネックをへし折る危険性を鑑みれば当然の選択であった。
     こうなれば、他にジョウが荷物を持てる余地はない。尤も、そうならないよう自身でも極力余分なものは持ち歩かないよう気を付けていたのだけれど。――それが今日に限っては裏目に出た。ジョウくん、これ使いな。そう言ってオーナーの奥さんから手渡された紙袋には、ジョウでも知っている洋菓子ブランドのロゴが控えめにあしらってある。贈答用の箱詰めでも入っていたのか、じゅうぶんにマチのある袋には大小様々の貰い物がみっちりと詰まっていた。きっと去年なら嬉しい重みだとにやけさせていた頬が、今は強張っている。
    3128

    iguchi69

    TRAININGジョ双SSチャレンジ 6/7
    使い捨てカイロ/アイスクリーム/山茶花/来年の計画または目標普段なら買い溜めている服薬用ゼリーが切れたのはここ一週間スタジオに通い詰めだったからだ。大きなライブを控え、いよいよ大詰めとばかりに学校とアルバイト以外の時間はほとんど練習に費やしている。ドラッグストアの開いている時間に空を見上げることのできた日はもう遠い。ジョウは仕方なくコンビニで馴染みの商品を手に取った。今日と明日の分、ふたつをレジに渡す。表示されるのは記憶している価格よりも随分割高で、どうせ定価を払うなら近所のドラッグストアでは扱っていない珍しい味にすれば良かったなとしみったれた考えが頭をよぎった。

    「1回でーす、どうぞ」
    店員が片手で示したのは赤と白の抽選箱だ。500円で1回。大概がハズレの応募券だが、低くはない確率で何かしらの商品との引換券が手に入るらしい。少しばかり期待しながら手を入れる。こういった軽い運試しは好きな性質だ。軽くかきまぜ、指の先に当たったものを摘まむ。が、防火用グローブ越しでは薄く小さなカードを掴むのは難しかった。引き抜きざまに引っかかったものが指先のカードを道連れに、二枚がカウンターに落ちる。
    1528

    iguchi69

    DONE211010*ジョ誕
    ジョ双
    ©itypopネタ
    ミントスカイの向こう側夕焼けの空に雲が流れていく。太陽の沈み行く根本はまだ明るく、闇の帳の降り始めた天井はうっすら紺碧がかっていた。幾重ものグラデーションが横目でも確認できるのは、ルーフを仕舞ったオープンカーならではの利点だ。もう少し暗くなれば頭上には星々が輝き始めるだろう。

    その時までには起こしてやるべきだろうか。ハンドルを握るジョウはバックミラーを覗く。細長い鏡には頭を寄せて眠るヤスとハッチンの顔が映っていた。普段はとにかくやかましいか鬱陶しいか目障りかの後輩だが、寝顔だけは存外罪のない子供然としている。器用にも互いの頭を中央にこてんと寄り添わせている二人は、絶妙なバランスを保っているらしかった。少しでも左右どちらかに揺れればハッチンの頭頂部に聳える針がヤスの頬を突くだろう。ジョウは改めてステアリングを操る指先に集中した。安全運転を心がけてはいるが、数年ぶりに運転席に座ったことへの緊張感とただでさえ抱えている吐血癖への懸念が心をざわつかせる。、万が一の光景が浮かんでアクセルを踏む足の力が緩んだ。流れる景色が失速する。助手席からすかさず叱責が飛んだ。
    5008

    iguchi69

    DOODLE「我が愛しのカルネアデス」
    ※メンスト、バンエピ、あの~を踏まえての狛犬兄弟過去捏造
    時折、兄から映画を観ないかと誘われることがある。
    正直言って煩わしい。双循の持ってくるタイトルは大抵が白黒であったり、後々調べものをする必要があるほど特殊な時代や風習を舞台にしたものが多かった。(ひどい時は色彩どころか音声さえもなかった)去年やっとケーキに乗せる蝋燭を二桁に増やした凱循にとっては退屈で仕方ないものだ。

    しかし断ればどんな嫌がらせを受けるかわからない。向こう三日はおどれは教養が足らん鳥並のおつむにゃちいと難しかったかと嫌味三昧の日々が待っていると思えば、凱循に選択肢は残されていなかった。それに、少なくとも画面の中の世界に没入する数時間は、もはや日常となった性質の悪い悪戯を回避できる。
    凱循はしぶしぶ兄の手招きに従い、暗幕を張った北の部屋へ入った。日当たりの悪い部屋は初春にも関わらずひんやりとした空気で満たされている。思わずくちゅん、とくしゃみがひとつ漏れた。ほれ、と差し出された毛布をひったくるようにして奪う。

    「200分近くあるけえ、便所は漏らす前に言うんじゃぞ」
    「漏らす訳ないだろ! ガキじゃないんだからな!」
    200分、という言葉を頭の中で計算する。全く以ていらつ 2540