羅小黒戦記
𝚊𝚕𝚝𝚊𝚒𝚛 𓅂 𝚝𝚛𝚢
DOODLE4話の感想絵…風息が小黒の領界を奪ったのは哀しく許されないけど、人間のせいで「こそこそ生きなければならない」事を強いられた風息も責める事が出来ないと思った自然も命なので、それに生かされてる事に感謝しなければならないと教えられましたね
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・5お題【逸風】【夕涼み】
東の国には、医者の不養生、という言葉がある。
いまの僕のことだ。
とはいえ、妖精が病気になるなんてことはない。
ただ、過労でへばることはある。
今まで、たくさんの人たちを癒やしてきて、時には無理はいけませんよと諭したりもしてきたのだけれど、人に言うのと自分がなるのとでは大違いだ。
僕はいま、横たえられた夏草の上で、つくづくとそれを感じていた。
「逸風、大丈夫ですか。水を持ってきました。飲めますか?」
「あ、ありがとうございます。——冠萱さんは」
「私は大丈夫です。慣れていますから」
さすが過重労働頻度ナンバーワンの猛者は言うことが違う。
とはいえ、今回の現場は酷かった。
妖精たちが住む大きな山で噴火があった。山体崩壊を引き起こすほど大規模なもので、溶岩と火砕流、そしてそれに伴う森林火災に生き物たちは追い立てられた。
7063東の国には、医者の不養生、という言葉がある。
いまの僕のことだ。
とはいえ、妖精が病気になるなんてことはない。
ただ、過労でへばることはある。
今まで、たくさんの人たちを癒やしてきて、時には無理はいけませんよと諭したりもしてきたのだけれど、人に言うのと自分がなるのとでは大違いだ。
僕はいま、横たえられた夏草の上で、つくづくとそれを感じていた。
「逸風、大丈夫ですか。水を持ってきました。飲めますか?」
「あ、ありがとうございます。——冠萱さんは」
「私は大丈夫です。慣れていますから」
さすが過重労働頻度ナンバーワンの猛者は言うことが違う。
とはいえ、今回の現場は酷かった。
妖精たちが住む大きな山で噴火があった。山体崩壊を引き起こすほど大規模なもので、溶岩と火砕流、そしてそれに伴う森林火災に生き物たちは追い立てられた。
haohao030
SPOILER羅小黒戦記TV版1話までの内容と、羅小黒戦記のシリーズについて、
1話に関わるちょっとした豆知識をまとめました。
※TV版1話のネタバレを含みます
映画を分割しているので分かりにくいよ〜という方は(少々見辛いですが)是非参考になさってください。 5
𝚊𝚕𝚝𝚊𝚒𝚛 𓅂 𝚝𝚛𝚢
DOODLE今日からTVで観れるとの事で無限師匠描きました✎ 公開当時に劇場へ行けなかったので有り難いですし、これから毎週拝めるなんて贅沢ですね…深夜ですが熱いお茶とお菓子をお供に1話を楽しみました☕️🍪muki_rururu
PAST2020/pixivサルベージ羅小黒戦記ログ③ pixivにまとめたのは2021年6月なんだけどほぼ2020のものです 後半にいくほどなんかネト……としてる
注意:未成年の軽度な性的消費(性的な視線の滲み) 34
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・4お題【鳩老】【お茶】
初めまして、と引き合わされた鳩老の弟子は人間だった。
「一度小黑に会わせてみたくてな。无限に無理を言って連れてきてもらった。年の頃も同じくらいだし、仲良くしてくれると、儂も嬉しい」
そう言い残して、鳩老と師父は揃って会議に出かけて行った。
初めて来る妖精会館。右も左も分からないから、とりあえずすぐそこの庭に面した卓と椅子に陣取って、自己紹介をする。
「僕は小黑。妖精だよ」
「俺は大志。人間だ」
なんだか、当たり前のことを当たり前に確認しているように思えて、互いにふふっと笑う。
——良かった、なんだか感じのいい子だ。
「でも実は初めましてじゃないんだよ。小黑はそのままだったから俺にはすぐ分かったけど」
6683初めまして、と引き合わされた鳩老の弟子は人間だった。
「一度小黑に会わせてみたくてな。无限に無理を言って連れてきてもらった。年の頃も同じくらいだし、仲良くしてくれると、儂も嬉しい」
そう言い残して、鳩老と師父は揃って会議に出かけて行った。
初めて来る妖精会館。右も左も分からないから、とりあえずすぐそこの庭に面した卓と椅子に陣取って、自己紹介をする。
「僕は小黑。妖精だよ」
「俺は大志。人間だ」
なんだか、当たり前のことを当たり前に確認しているように思えて、互いにふふっと笑う。
——良かった、なんだか感じのいい子だ。
「でも実は初めましてじゃないんだよ。小黑はそのままだったから俺にはすぐ分かったけど」
桜道明寺
DONE居酒屋でサシ飲みをする洛竹と无限 午後八時の居酒屋の店内は、満員の人いきれと、それが醸し出す喧噪に満ちていた。
古い格子の天井から幾つも吊り下げられた裸電球が、その下にある料理や人々の笑顔を暖色に照らし出す。縦横に並べられたステンレスのテーブルに人々が集い、その間を回遊魚のように料理や空の皿を抱えた店員が行き来する。その賑やかな店内において、ひとつだけ、しんと静謐を保った空間があった。四人掛けのテーブルで斜向いに座り、料理がまだなら飲み物もまだ、一人は淡々と前を向いていて、一人は俯いて自分の腿辺りを見ているといった体たらく。相席ではなく、顔見知りの待ち合わせだと言うのに、どうしてこんなことになっているのかを説明するためには、時を少し遡らなければならない。とはいえ、ほんの数分前のこと、俯いている男——洛竹——のスマホに、一件のコメントが入ったのだ。
3559古い格子の天井から幾つも吊り下げられた裸電球が、その下にある料理や人々の笑顔を暖色に照らし出す。縦横に並べられたステンレスのテーブルに人々が集い、その間を回遊魚のように料理や空の皿を抱えた店員が行き来する。その賑やかな店内において、ひとつだけ、しんと静謐を保った空間があった。四人掛けのテーブルで斜向いに座り、料理がまだなら飲み物もまだ、一人は淡々と前を向いていて、一人は俯いて自分の腿辺りを見ているといった体たらく。相席ではなく、顔見知りの待ち合わせだと言うのに、どうしてこんなことになっているのかを説明するためには、時を少し遡らなければならない。とはいえ、ほんの数分前のこと、俯いている男——洛竹——のスマホに、一件のコメントが入ったのだ。
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・3お題【大爽】【食事】
一応、仙、っていうことになるんだと思う。
とはいえ端くれの端くれの、そのまた端くれくらいの辺りだけど。
ただ自分で言うのも何だけど、きっとどこからどう見てもそうは見えないし、特に胸を張れるほどの神通力もない。仙侠小説の登場人物みたいに空を飛んだり、呪符を貼って人でないものを操ったりするなんてこともできない。
力も弱いし、剣なんかとてもじゃないけど持てない。というか持ったら最後、相手を斬るより先に自分が医者の世話になってしまうだろう。
自分にできるのはただひとつ、生き物を「飛ばす」こと。文字通り、あっちからこっちへ、ぱっと瞬間移動。種も仕掛けもございません。ただし、弱い霊力のものに限る。犬とか猫とか人間とかね。妖精なんかは無理。ちょっと霊力の高い人間も、無理。その代わりと言っちゃあなんだけど、飛ばす量に制限はほぼない。街ひとつの人間をまとめて移動させることだってできる。地味なんだかすごいんだか、自分にもよく分からない。まあ、使う機会も実際にはそんなにないしね。
5766一応、仙、っていうことになるんだと思う。
とはいえ端くれの端くれの、そのまた端くれくらいの辺りだけど。
ただ自分で言うのも何だけど、きっとどこからどう見てもそうは見えないし、特に胸を張れるほどの神通力もない。仙侠小説の登場人物みたいに空を飛んだり、呪符を貼って人でないものを操ったりするなんてこともできない。
力も弱いし、剣なんかとてもじゃないけど持てない。というか持ったら最後、相手を斬るより先に自分が医者の世話になってしまうだろう。
自分にできるのはただひとつ、生き物を「飛ばす」こと。文字通り、あっちからこっちへ、ぱっと瞬間移動。種も仕掛けもございません。ただし、弱い霊力のものに限る。犬とか猫とか人間とかね。妖精なんかは無理。ちょっと霊力の高い人間も、無理。その代わりと言っちゃあなんだけど、飛ばす量に制限はほぼない。街ひとつの人間をまとめて移動させることだってできる。地味なんだかすごいんだか、自分にもよく分からない。まあ、使う機会も実際にはそんなにないしね。
桜道明寺
DONESSガチャお題から「相手の嫌そうな顔を見て苦笑する老君の話」
「——また来たのか!」
坐っていた門柱の上から飛び降りて、これ以上ないほどの渋面を晒しながら子供が言う。
「やあこんにちは、お爺さん。元気そうで何よりだね」
そう爽やかに笑って返せば、ますます嫌そうに牙を剥き出す。
「お前が来ると碌なことがない! それに明王様はいま忙しいんだ。だからとっとと帰れ!」
「いや、今日は明王ではなく、君に会いにきたんだ」
しれっと言うと、虚を衝かれたような表情になって瞬いた。
「俺に?」
「そう」
「気持ち悪いな、一体なんの用だ」
「君、私のところに来ない?」
「断る」
「即決だね。ちょっとは考えたりしてくれたりはしないのかな」
「俺の欲しいものは、お前には出せない。絶対に。だから行かないし、そもそも俺が明王様を裏切ることも絶対にない」
1392坐っていた門柱の上から飛び降りて、これ以上ないほどの渋面を晒しながら子供が言う。
「やあこんにちは、お爺さん。元気そうで何よりだね」
そう爽やかに笑って返せば、ますます嫌そうに牙を剥き出す。
「お前が来ると碌なことがない! それに明王様はいま忙しいんだ。だからとっとと帰れ!」
「いや、今日は明王ではなく、君に会いにきたんだ」
しれっと言うと、虚を衝かれたような表情になって瞬いた。
「俺に?」
「そう」
「気持ち悪いな、一体なんの用だ」
「君、私のところに来ない?」
「断る」
「即決だね。ちょっとは考えたりしてくれたりはしないのかな」
「俺の欲しいものは、お前には出せない。絶対に。だから行かないし、そもそも俺が明王様を裏切ることも絶対にない」
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・2お題【洛竹】【笑顔】
よく笑う子だったよ、と物静かな氷の化身は、その冷たく冴えた表情を崩さずに言った。
俗に氷雲城と呼ばれる特殊な獄は、外界と隔絶された空間にある。その一郭、布団に衝立、文机等、生活するのに必要最低限の家具が揃った独房で、その場所の主——虚淮は、自らが事件を起こした地である龍游の館長——潘靖と、一対一で向かい合っていた。
円座もない床に直接腰を下ろし、淡々と潘靖に相対するその額にある両角に、かつてのような雄々しさはない。虚淮にとって角は能力の源であり、その力は強大だった。数年前に起きた龍游事変のとき、彼を止めるべく差し向けられた者は悉く戦闘不能に陥り、組織の中でもトップクラスの能力をもってして、ようやく鎮圧に成功したほどだ。
7348よく笑う子だったよ、と物静かな氷の化身は、その冷たく冴えた表情を崩さずに言った。
俗に氷雲城と呼ばれる特殊な獄は、外界と隔絶された空間にある。その一郭、布団に衝立、文机等、生活するのに必要最低限の家具が揃った独房で、その場所の主——虚淮は、自らが事件を起こした地である龍游の館長——潘靖と、一対一で向かい合っていた。
円座もない床に直接腰を下ろし、淡々と潘靖に相対するその額にある両角に、かつてのような雄々しさはない。虚淮にとって角は能力の源であり、その力は強大だった。数年前に起きた龍游事変のとき、彼を止めるべく差し向けられた者は悉く戦闘不能に陥り、組織の中でもトップクラスの能力をもってして、ようやく鎮圧に成功したほどだ。