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    絆創膏

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    DONEワタルが虎王に絆創膏を貼る話まずいものを見た、と、ワタルは思った。
    目を閉じて、耳を塞ぎ、顔を背けたい衝動に駆られる。
    それが、
    あと数分早ければ良かったのに……

    「……」

    ワタルは、苦いものでも食べたかのように眉をひそめ、通り過ぎようとした方を見る。見上げた先に、木の枝に掴まった子猫が、必死の声で鳴いていた。子猫のいる枝は細い。何かの理由でそこまで行ってしまい、降りる事も戻る事も出来なくなっているようだった。
    何故、今日この道を帰り道に選んでしまったのか……。
    ワタルは、深くため息をついた。
    背中の鞄を下ろし、木の根元に置いた。木の幹はそれなりに太く、ワタルくらいの体重なら、登れそうだった。激しい揺れで子猫がこれ以上怯えないよう、なるべくゆっくりと登っていく。半分まで来たところで、子猫がワタルに気づいたのか、さあっと毛を逆立てたのが分かった。明らかに警戒している。手を伸ばそうものなら、引っ掻かれるか、噛みつかれそうだった。放っておく選択肢はもちろんあった。
    ……が、

    「……、ホラ、おいで。怖くないから……」
    ワタルは、子猫のすぐそばまで登り、手を差し伸べた。シャーシャーという子猫の声が、ちょっと怖かった。 2904