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    怪物

    ふじたに

    PROGRESS猫と怪物 8の表 笹さに♂
    猫と怪物 8の表 笹貫に直に会って触れてみた効果はすごくて、読書も仕事も捗った。会わないと決めたのは自分だし、もう怪我なんてしてほしくないから、またしばらくは会えないほうがいい。そう頭では理解しているのに、彼がすぐそばにいた日のことを何度も思い返してしまう。
     研修のものがいないときは、基本的に蜂須賀が近侍を兼ねている。とはいえ蜂須賀は忙しいので、簡易版と言うべきだろうか。起こしてもらって、朝の支度はひとりでして、戻ると食事があるのでそれを食べ、器を厨に返してから執務室へ行く。猫のところはいっしょに行ってくれて、昼食は自室で取り、東屋へは執務室の誰かがついてきてくれる。蜂須賀に余裕があるときは内番を見に行ったり、私の仕事に余裕があるときは誰かを護衛に立てて演練へ。いっしょに猫に行って風呂に入ったら、部屋に食事を運んでくれて終わり。簡略化しても蜂須賀は残業をしている気配なので、私としてはもっとひとりでもいいと思っているのだが、本丸初期の本当に手が足りていないときに、私が不意に湧いたあやかしと遭遇してしまって以来、蜂須賀は常についていられる近侍に向いているものを見つけるのに熱心だ。
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    ふじたに

    PROGRESS猫と怪物 2の表 笹さに♂
    猫と怪物 2の表 笹貫が近侍の二日目。笹貫と蜂須賀が起こしに来てくれた。ノックでは起きられなくて、二人が部屋に入ってきて布団をはがされた。
    「夜ふかしされたんですか?」
    「してませんよ」
     実際に昨日は早く寝ようとしたのだが、風呂場でのことを何度も思い出してしまって、眠れなかっただけなのだ。お試し近侍の間は、なるべく新しい長編は読まないようにしているし、新刊確認も控えめにしている。
     笹貫に付き添われて洗顔、歯磨き。支度部屋で着替え。着替えは自分ですると言ったのに、手伝われた。笹貫の指が肌をかすめると、ドキリとする。
     急かして支度を終え、部屋に戻ると蜂須賀が食事を運んでおいてくれた。一人で部屋に入り、布団があった場所で食事を取る。布団の上で取るときもあるけれど、今日は蜂須賀が畳んだのだろう。夕餉はだいたい布団の上で取る。蜂須賀はそれを快くは思っていないが、長年の失敗や妥協を経て何も言わなくなった。私の部屋は8畳ほどの洋間で、この部屋だけ襖ではなく外開きのドアがついている。これは越してきたときにこの部屋だけ改装してもらったからだ。窓はなく、ドア以外の壁面は本棚にしてある。工事人と蜂須賀の懇願で、換気口とエアコンはつけた。買ってすぐにいじったのは自分の部屋と、各部屋の畳替えとエアコンの設置だった。襖と障子は蜂須賀と私でちまちまと貼っていった。そうなるだろうな、と思ってはいたが、本は本棚には入り切らなくて床に積まれている。いずれ飽和する前に、万屋が古本買取のサービスを行っているか調べなければ、と思ってからもう何年も経つ。ドアから布団に続く細い通路を設けてあり、布団の横には蜂須賀が跪坐できる分だけのスペースがある。
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