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    大正

    mia_amamiya

    MOURNING大正軸両片想い杏千。ちょっとだけ流血表現があります。
    EGOIST「あ」と思った時には遅かった。
    打ち込み稽古に使用している木製の打ち込み台が、千寿郎の一撃で細かく割れ、鋭い破片が千寿郎目掛けて飛んでくる。
    ここ数日ミシミシと嫌な音を立てていたので、新しいものを作らなくては、と思っていたのに。やらなければならないことを後回しにするなんて、と反省しているうちに、左眉の上にピリリと痛みが走った。次いで、生温かくどろりとした感触が瞼を伝い、目の前が赤く染まる。
    「……やってしまった」
    情けなく萎んだ声で傷口を抑えると、そのまま井戸端へ向かう。桶に水を汲み、水面に己を映せば、ぼたぼたと赤い雫が指の隙間から垂れ落ちた。痛みに眉を顰めながら傷口を洗い、然程深くはないことに一先ず安堵する。きっと数日もすれば傷は塞がるだろうし、一週間もすれば何事もなかったように跡形もなく消えているのではないだろうか。掌に付着する血に、先日帰宅した兄の身体に新たに刻まれていた傷がまざまざと思い出される。「大したことは無い。蝶屋敷に寄るほどの傷でもなかった」そう言って笑った兄の腕に巻かれていた包帯には、じわりと血が滲んでいた。あの時に千寿郎の胸に走った痛みと比べれば、取るに足らないものだ。
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    ロミオ

    DONE本当は第十回rntn ワンドロワンライお題: 『香水』の為に書いていたお話でしたが、時間的に間に合わず放置していた物を、今日のwebイベントの為に手直しして完成させました!

    大正謎時間 継子IFで煉獄さんも炭治郎も、大きな怪我なくピンピンしていて、しかも両思いです!

    そんな二人のちょっと色っぽい空気の話。こんなタイトルですが、雰囲気だけエッチなお話。キスなので一応、全年齢でございます。
    閨の香り「おはようございます、煉獄さん」
     炭治郎は障子の前に座し、師匠である煉獄杏寿郎に声を掛けた。鬼の噂を聞きつけて東京を離れ一週間、常陸宍戸まで探索に出掛けた煉獄とその継子である竈門炭治郎は、無事に任務を果たして明け方に屋敷へ帰り着いた。夜明け前の薄暮の中、師匠と共に湯で足を洗って下女の作り置いた粥を啜り、仮眠をとった炭治郎は、九時過ぎに起きだして風呂と昼餉の支度を始める。勿論、炎柱邸には家事を担う下男下女が居るのだが、炭治郎たっての希望で風呂の支度と炊事は主に彼が担当しているのだ。
     長い任務の後にはゆっくり湯に浸かり、美味い飯をたらふく食べて欲しい。それは炭治郎の真心であり、こだわりである。炎柱の稽古は噂に違わず厳しく、慣れないうちは稽古終わりに立ち上がれぬほど疲労困憊したものだが、それでも風呂と食事だけは弟子の務めと欠かした事はない。支度を済ませてきっかり十時半、炭治郎は障子越しに煉獄へ呼びかけて、いつもの様に返事を待った。
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