EBIFLY_72
DONEミサメイン蒼葉サブ
獺弥さん宅から天青浄さんお借りしました
親睦のお茶会「茶葉は…ある、豆も…大丈夫、お茶菓子…ちゃんと買ったし賞味期限も、問題なし」
もう何度目かの確認を済ませ、時計を見る。正確に時を刻む針は、無情にも刻限が迫っていることを告げていた。
蒼葉が天青浄を迎えに行って暫く経つ。もういつ戻ってきてもおかしくないというのに、ミサは気持ちの準備が一切出来ていなかった。
花見で天青浄をお茶会に誘い、日取りを決めたのまではよかった。問題は、天青浄の嗜好が一切分からず、そもそも食欲自体が希薄らしいことだ。
ミサも天照に来てまだ二年。しかし、こと食欲に関しては人並み以上だと自負している。現に朝食は蒼葉の二倍食べた。恐らく今後、食事以上の趣味はないと思える程にはご飯が好きだ。
5786もう何度目かの確認を済ませ、時計を見る。正確に時を刻む針は、無情にも刻限が迫っていることを告げていた。
蒼葉が天青浄を迎えに行って暫く経つ。もういつ戻ってきてもおかしくないというのに、ミサは気持ちの準備が一切出来ていなかった。
花見で天青浄をお茶会に誘い、日取りを決めたのまではよかった。問題は、天青浄の嗜好が一切分からず、そもそも食欲自体が希薄らしいことだ。
ミサも天照に来てまだ二年。しかし、こと食欲に関しては人並み以上だと自負している。現に朝食は蒼葉の二倍食べた。恐らく今後、食事以上の趣味はないと思える程にはご飯が好きだ。
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DONE螢メイン蒼葉、鳰サブ
来るもの拒まず去るもの許さず「そういえば、君妖刀普通に持って運んでたよね」
激務による徹夜がとうとう限界に達し、最早峠も超えたハイテンションも終わりが見える部下たちを仮眠室に詰め込む直前、同じく徹夜で土気色になりつつある顔色の上司の言葉を、五十鈴はよく覚えている。
当時なんて返したかは一切覚えていないが、結論から言えばそれがきっかけで五十鈴は刀遣いになった。適性があっても本人の性格が向いてるとは限らねェだろ、とは思いながらも、今まで近づくことすらできなかった妖刀に触れる方に天秤が傾いたのだ。
殆ど鍛えていなかったが、それでもなんとか訓練期間を終え、所属したのは当然峰柄衆。今まで細々としていた修理待ちの機材に大物が混じったり、妖刀の研磨依頼が舞い込んだりと、そこは五十鈴にとって最高の職場だった。
2951激務による徹夜がとうとう限界に達し、最早峠も超えたハイテンションも終わりが見える部下たちを仮眠室に詰め込む直前、同じく徹夜で土気色になりつつある顔色の上司の言葉を、五十鈴はよく覚えている。
当時なんて返したかは一切覚えていないが、結論から言えばそれがきっかけで五十鈴は刀遣いになった。適性があっても本人の性格が向いてるとは限らねェだろ、とは思いながらも、今まで近づくことすらできなかった妖刀に触れる方に天秤が傾いたのだ。
殆ど鍛えていなかったが、それでもなんとか訓練期間を終え、所属したのは当然峰柄衆。今まで細々としていた修理待ちの機材に大物が混じったり、妖刀の研磨依頼が舞い込んだりと、そこは五十鈴にとって最高の職場だった。
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DONEお相手が企画撤退されたので打ち切りです序章【キッカケは迷子探し】 緋鍔局での会議を終えた酔仙は、待ち合わせ場所に今から向かうと別行動していたバディに連絡を入れる。
端末から顔を上げると、深緑色の服を着た茶髪の少年が何やら考え込んでいるのが見えた。どうやら困っているらしい。
「どうかしましたか?」
「あっ、えぇとその、外に待たせていたバディの姿がなくて…」
面識はないが、頭に叩き込んでいる人物リストにはしっかりと入っている。
遍帯智。十八歳の伍段だ。探しているバディは凛威天封鉤爪剣(リンカイテンホウカギヅメノツルギ)。桃色のツインテールと狼の耳と尻尾が特徴だったはず。
「奇遇ですね。私もこの後バディと合流する予定なんです。折角ですし、一緒に探しませんか?」
「本当ですかありがとうございます!」
3378端末から顔を上げると、深緑色の服を着た茶髪の少年が何やら考え込んでいるのが見えた。どうやら困っているらしい。
「どうかしましたか?」
「あっ、えぇとその、外に待たせていたバディの姿がなくて…」
面識はないが、頭に叩き込んでいる人物リストにはしっかりと入っている。
遍帯智。十八歳の伍段だ。探しているバディは凛威天封鉤爪剣(リンカイテンホウカギヅメノツルギ)。桃色のツインテールと狼の耳と尻尾が特徴だったはず。
「奇遇ですね。私もこの後バディと合流する予定なんです。折角ですし、一緒に探しませんか?」
「本当ですかありがとうございます!」
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DONE蒼葉メインミササブ
獺弥さん宅から榊さん、青尾さん、水無瀬さん、天青浄さんお借りしました
春の終わりと新たな一歩 日が落ち、街灯が辺りを照らし始める黄昏時。夏と錯覚しそうなほどジリジリ肌を焼く昼の暑さから一転、びゅうと吹く風は肌寒さを感じさせる。
もうすぐ見頃を終える桜の木の下で、ひと足先にレジャーシートを敷いて人を待つ水無瀬は持ってきていたブランケットを広げた。
「君も使う?」
「…いらない」
ぶっきらぼうな返答だったが、小さく膝を抱える天青浄の横に一応一枚置き、少しの間敢えて体ごと視線を逸らす。
控えめな衣擦れの音が聞こえても、風に紛れて聞こえないふりを続けて数分後。陽の光が水平線の下に完全に隠れた頃、見覚えのある高身長の人影が二つ近づいてくるのが見えた。
「ええと、この辺りの筈だけど…」
「ふむ…おお!ミサちゃん殿、見つけたぞ!向こうの一番大きな木の近くだ!」
4188もうすぐ見頃を終える桜の木の下で、ひと足先にレジャーシートを敷いて人を待つ水無瀬は持ってきていたブランケットを広げた。
「君も使う?」
「…いらない」
ぶっきらぼうな返答だったが、小さく膝を抱える天青浄の横に一応一枚置き、少しの間敢えて体ごと視線を逸らす。
控えめな衣擦れの音が聞こえても、風に紛れて聞こえないふりを続けて数分後。陽の光が水平線の下に完全に隠れた頃、見覚えのある高身長の人影が二つ近づいてくるのが見えた。
「ええと、この辺りの筈だけど…」
「ふむ…おお!ミサちゃん殿、見つけたぞ!向こうの一番大きな木の近くだ!」
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DONE蒼葉メイン獺弥さん宅から榊さんお借りしました
let's買い出し! 長袖では汗が滲むほど暑い昼が終わり、ゆっくりと気温が落ち着き始める夕暮れ時。赤く染まった夕暮れ時の空は、昼と違い視界に入りやすい分、余計に眩しさを感じさせた。
「もう夕暮れ…少し急ぎましょうか」
「そうですね」
大きな買い物袋を片手に、陽の光を避けるように日陰に沿って進む榊の後ろを篠宮がついていく。
開花宣言がなされて早数週間。その前に偶々顔を合わせた際、なんやかんやで集まって花見をしようと言う話にはなった。しかし参段が二人、壱段が一人、挙句所属も異なる面子は中々休みが合わず、桜が散るギリギリとなってしまった。
「すみません、俺のせいで気を遣わせてしまって」
「俺たちの休みが簡単に合うわけないでしょう。日程に関して何か言うなら、調整した水無瀬さんにしてください」
1609「もう夕暮れ…少し急ぎましょうか」
「そうですね」
大きな買い物袋を片手に、陽の光を避けるように日陰に沿って進む榊の後ろを篠宮がついていく。
開花宣言がなされて早数週間。その前に偶々顔を合わせた際、なんやかんやで集まって花見をしようと言う話にはなった。しかし参段が二人、壱段が一人、挙句所属も異なる面子は中々休みが合わず、桜が散るギリギリとなってしまった。
「すみません、俺のせいで気を遣わせてしまって」
「俺たちの休みが簡単に合うわけないでしょう。日程に関して何か言うなら、調整した水無瀬さんにしてください」
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DONE酔仙メイン蒼葉・海狸サブ
初めての先輩 最近天照に入った男は酷く扱いづらい。
何も珍しくないただの噂話を、酔仙は正直聞き流していた。実際会って話せば取っ掛かりの一つや二つ必ずあるはずでしょ、と思っていたからだ。
そんな酔仙の甘い考えは、対面して十分で打ち砕かれることとなる。
「んも〜〜!あの年頃なら奢りの二文字につられてくれてもいいじゃない」
篠宮蒼葉。イギリス人の祖父を持つクォーターで、金色の髪と翠眼が目を引く新人。事前に得られた情報は役に立ちそうになかったし、実際そうだった。
報連相がない、自己主張しない、無口で変わらない表情からは感情を察することすら難しい。その上で勝手に前に出るわ返事しないわ傷隠すわと問題児特有の行動の連発。何とか無事に任務を終えて、親睦を深めるために食事に誘ったら「結構です」の一言で切り捨てられ、正直かなり挫けた。
4343何も珍しくないただの噂話を、酔仙は正直聞き流していた。実際会って話せば取っ掛かりの一つや二つ必ずあるはずでしょ、と思っていたからだ。
そんな酔仙の甘い考えは、対面して十分で打ち砕かれることとなる。
「んも〜〜!あの年頃なら奢りの二文字につられてくれてもいいじゃない」
篠宮蒼葉。イギリス人の祖父を持つクォーターで、金色の髪と翠眼が目を引く新人。事前に得られた情報は役に立ちそうになかったし、実際そうだった。
報連相がない、自己主張しない、無口で変わらない表情からは感情を察することすら難しい。その上で勝手に前に出るわ返事しないわ傷隠すわと問題児特有の行動の連発。何とか無事に任務を終えて、親睦を深めるために食事に誘ったら「結構です」の一言で切り捨てられ、正直かなり挫けた。
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DONE蒼葉メイン厄介な体質 篠宮蒼葉の幼少期は、彼の両親にとっては苦々しい記録の山である。
初めはほんの僅かな違和感だった。ただの幼児特有のものだと思っていたものが、原因不明の微熱だと発覚したのは、蒼葉が小学生の頃。
ただ同年代の子どもよりもマイペースでのんびりとした性格だと思っていた両親は、それはもう蒼葉に謝り倒した。今まで気づいてやれずすまなかった。辛かっただろうに気付なくてごめんね。医師だった父親に至っては今にも辞表を出してしまいそうな勢いで、それを止めたのは他でもない蒼葉だった。
「おれ、たいちょうわるくなんてないけど」
熱でぼんやりとした顔で、それでもしっかりと告げられた言葉に両親は崩れ落ちた。蒼葉は気遣っているのではなく、心の底からそう思っているのだと。
1971初めはほんの僅かな違和感だった。ただの幼児特有のものだと思っていたものが、原因不明の微熱だと発覚したのは、蒼葉が小学生の頃。
ただ同年代の子どもよりもマイペースでのんびりとした性格だと思っていた両親は、それはもう蒼葉に謝り倒した。今まで気づいてやれずすまなかった。辛かっただろうに気付なくてごめんね。医師だった父親に至っては今にも辞表を出してしまいそうな勢いで、それを止めたのは他でもない蒼葉だった。
「おれ、たいちょうわるくなんてないけど」
熱でぼんやりとした顔で、それでもしっかりと告げられた言葉に両親は崩れ落ちた。蒼葉は気遣っているのではなく、心の底からそう思っているのだと。
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DONE酔仙メイン海狸サブ
四月一日酔仙という人間 四月一日酔仙は参段の刀遣いであり、主に人物関係の情報屋でもある。
人間関係や人物像は勿論、何時何をしていたのか。過去何を経験したのか。何を思って現在の立場にいるのか。対等な取引を行うことで、対象の人物に関しての情報を確実に提供すると謳っている。
対等な取引で依頼人が出せる手札は金銭に限らない。求める情報と同等の情報、同等の金銭的価値のある骨董品等、最悪タダ働きや今後の情報提供者としての活動でも可能だ。つまり、彼女が同等と思う何かを提供すればいい。
当然ながら情報入手経路も方法も企業秘密だが、彼女は何一つとして特別なことはしていない。ただ限りなく情報網が広いだけだ。
例えば仲間の刀遣いやそのバディ。天照内で暇を持て余す刀神達は勿論、受付職員や事務員、アルバイトの清掃員から上の役職にも彼女の目と耳は届く。
3730人間関係や人物像は勿論、何時何をしていたのか。過去何を経験したのか。何を思って現在の立場にいるのか。対等な取引を行うことで、対象の人物に関しての情報を確実に提供すると謳っている。
対等な取引で依頼人が出せる手札は金銭に限らない。求める情報と同等の情報、同等の金銭的価値のある骨董品等、最悪タダ働きや今後の情報提供者としての活動でも可能だ。つまり、彼女が同等と思う何かを提供すればいい。
当然ながら情報入手経路も方法も企業秘密だが、彼女は何一つとして特別なことはしていない。ただ限りなく情報網が広いだけだ。
例えば仲間の刀遣いやそのバディ。天照内で暇を持て余す刀神達は勿論、受付職員や事務員、アルバイトの清掃員から上の役職にも彼女の目と耳は届く。
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DONE蒼葉メイン緋傘さん宅から定之さんお借りしてます
人様には言えないこと 人気のない夜中の商店街の路地裏で複数の足音が響く。入り組んだ道を全て把握している男は減速することなく駆け回り、体力が削れ荒らぐ呼吸と風が肩を切る音だけが鼓膜を揺らす。
振り返る余裕はない。そんな余裕があれば一歩でも前に進まなければ殺される。現に背後から聞こえる足音は数分前から少しも離れず、呼吸が乱れている気配すらないのだ。夜間でも目立つ橙色は着実に距離を詰めてきている。
それでも男には勝算があった。後数メートル先を曲がった先で仲間が待っている。戦う術だってある。相手は一人なのだから、集団でかかれば勝てるはずだ、と。
希望を胸に道を曲がる。少し足がもつれて減速したが、まだ追いつかれるほどじゃない。もう目の前には仲間が居るから。
2162振り返る余裕はない。そんな余裕があれば一歩でも前に進まなければ殺される。現に背後から聞こえる足音は数分前から少しも離れず、呼吸が乱れている気配すらないのだ。夜間でも目立つ橙色は着実に距離を詰めてきている。
それでも男には勝算があった。後数メートル先を曲がった先で仲間が待っている。戦う術だってある。相手は一人なのだから、集団でかかれば勝てるはずだ、と。
希望を胸に道を曲がる。少し足がもつれて減速したが、まだ追いつかれるほどじゃない。もう目の前には仲間が居るから。