A_wa_K
DONEアオ主。ランダとの悪魔会話ネタから。詩を綴るあおがみさんの小噺。愛の詩「悪くはないんだけど、他の詩に比べるとまだイマイチだねぇ」
長い爪で器用に掴んだ紙を少年に返しつつ、ランダはやれやれと溜息を吐き出した。仲魔になった際、ナホビノの――目前で僅かに頬を膨らませている少年の詩にイマイチという評価を付けたのは己である。それがまさか、彼の創作意欲を焚き付けてしまうとはと。
「どこが悪いんだよ」
「悪くはないよ。アタシには響かないってだけで」
「それが納得いかないんだ」
休憩として立ち寄った廃ビルの一角。その室内に残されていた白紙のノートに再び視線を落とし、同じく拾った鉛筆の消しゴム部分を額に当てながら少年は再び唸り始める。
ランダが少年に提示したお題は三つある。戦い、日常、そして愛。その内、前者の二つはランダにも響くものがある詩であった。技量的な判断はランダには出来ないが、包み隠さず伝わってくる人間の感情が綴られていた。けれども、愛に関しては違ったのである。
1715長い爪で器用に掴んだ紙を少年に返しつつ、ランダはやれやれと溜息を吐き出した。仲魔になった際、ナホビノの――目前で僅かに頬を膨らませている少年の詩にイマイチという評価を付けたのは己である。それがまさか、彼の創作意欲を焚き付けてしまうとはと。
「どこが悪いんだよ」
「悪くはないよ。アタシには響かないってだけで」
「それが納得いかないんだ」
休憩として立ち寄った廃ビルの一角。その室内に残されていた白紙のノートに再び視線を落とし、同じく拾った鉛筆の消しゴム部分を額に当てながら少年は再び唸り始める。
ランダが少年に提示したお題は三つある。戦い、日常、そして愛。その内、前者の二つはランダにも響くものがある詩であった。技量的な判断はランダには出来ないが、包み隠さず伝わってくる人間の感情が綴られていた。けれども、愛に関しては違ったのである。
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DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。褒めてやろうか?「褒めてあげようか?」
感情を極力抑えようと努めている静かな声と、隈を纏う鋭い双眸。
アオガミにとっては一瞬であったが、少年にとっては長い夜であったと直ぐに判断が出来た。しかし、アオガミは赦しを請わずに少年の隈へと指先を伸ばす。少年が避ける気配はない。
「君が無事で良かった」
揺らいだ緑灰色の瞳から零れた涙を指先で掬いながら、アオガミはやはり謝らない。少年が望む言葉は紡がずに、震える半身の体に手を伸ばした。
「本当に、良かった」
「……頑固者」
自身の背中に回される細い両腕。
触れる暖かさに今度はアオガミが身を震わせ、何があっても彼だけは守り抜くのだと、彼は幾度目の決意を固めるのであった。
それが、少年を傷つけるとしても。
321感情を極力抑えようと努めている静かな声と、隈を纏う鋭い双眸。
アオガミにとっては一瞬であったが、少年にとっては長い夜であったと直ぐに判断が出来た。しかし、アオガミは赦しを請わずに少年の隈へと指先を伸ばす。少年が避ける気配はない。
「君が無事で良かった」
揺らいだ緑灰色の瞳から零れた涙を指先で掬いながら、アオガミはやはり謝らない。少年が望む言葉は紡がずに、震える半身の体に手を伸ばした。
「本当に、良かった」
「……頑固者」
自身の背中に回される細い両腕。
触れる暖かさに今度はアオガミが身を震わせ、何があっても彼だけは守り抜くのだと、彼は幾度目の決意を固めるのであった。
それが、少年を傷つけるとしても。
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DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。惚気はいいので、用件を「そう、俺は一人じゃないんだ」
揺蕩う長い青髪に指先を通し、ナホビノは微笑む。
「この髪の色もアオガミの色。この瞳の色も。凄く綺麗な色」
『少年、私は君の髪と瞳の色こそ美しいと思う。この姿に反映されていないのが惜しい程に』
「……ふふ、お互い様か」
『そのようだ』
長い睫の影が掛かる頬を赤らめ、ナホビノは微笑む。
目前に立つ悪魔ではなく、自身の半身へと向けて。
「……」
余計な質問をしてしまったと、惚気に当てられたオンギョウキは眉間を押さえつつ、この場を去る選択をしたのであった。
「せいぜい仲良くやるがよい」
"彼ら"の恋路に巻き込まれるのはごめんだと。
280揺蕩う長い青髪に指先を通し、ナホビノは微笑む。
「この髪の色もアオガミの色。この瞳の色も。凄く綺麗な色」
『少年、私は君の髪と瞳の色こそ美しいと思う。この姿に反映されていないのが惜しい程に』
「……ふふ、お互い様か」
『そのようだ』
長い睫の影が掛かる頬を赤らめ、ナホビノは微笑む。
目前に立つ悪魔ではなく、自身の半身へと向けて。
「……」
余計な質問をしてしまったと、惚気に当てられたオンギョウキは眉間を押さえつつ、この場を去る選択をしたのであった。
「せいぜい仲良くやるがよい」
"彼ら"の恋路に巻き込まれるのはごめんだと。
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DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。恋人だった「恋人、か」
アオガミからの告白を受け、少年は目を伏せた。
自分達は想い合っている。
その確信を得て、アオガミは少年に告げた。君と恋人になりたいと。
だが、少年の表情は重い。
物憂げに睫毛を震わせ、少年はアオガミの左手薬指を掴んだ。
「俺はもっと先に進みたいよ、アオガミ」
恋人という関係は一瞬で終りを告げるのであった。
160アオガミからの告白を受け、少年は目を伏せた。
自分達は想い合っている。
その確信を得て、アオガミは少年に告げた。君と恋人になりたいと。
だが、少年の表情は重い。
物憂げに睫毛を震わせ、少年はアオガミの左手薬指を掴んだ。
「俺はもっと先に進みたいよ、アオガミ」
恋人という関係は一瞬で終りを告げるのであった。
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DONE140文字SSのお題(https://shindanmaker.com/587150)様から。忘れてあげる「君を愛しているから」
瞬間、両者の動きがぴたりと止まる。まるで時間が止まったかのように。
事の起こりは数分前に遡る。
待ちに待った新刊が発売されたと、日付が越えても読書を止めない少年をアオガミが制したのが始まりだ。
『少年、夜更かしは健康に悪い』
『……分かったよ』
物語が山場を迎えた所であったが、少年は不承不承とベッドの中に入り込んだ。文庫本と携帯端末をこっそり、手に持ったままで。
一緒のベッドを使おうという少年の誘いを断り続けているアオガミがベッドの傍らに座り込み、動く気配がなくなったことを察してから少年は端末を起動する。そして、液晶画面の明かりを元に読書を再開しようとしたのであるが。
『少年』
ばさりと音を立てて捲られる布団。その向こうに立つのは、勿論アオガミ。
1317瞬間、両者の動きがぴたりと止まる。まるで時間が止まったかのように。
事の起こりは数分前に遡る。
待ちに待った新刊が発売されたと、日付が越えても読書を止めない少年をアオガミが制したのが始まりだ。
『少年、夜更かしは健康に悪い』
『……分かったよ』
物語が山場を迎えた所であったが、少年は不承不承とベッドの中に入り込んだ。文庫本と携帯端末をこっそり、手に持ったままで。
一緒のベッドを使おうという少年の誘いを断り続けているアオガミがベッドの傍らに座り込み、動く気配がなくなったことを察してから少年は端末を起動する。そして、液晶画面の明かりを元に読書を再開しようとしたのであるが。
『少年』
ばさりと音を立てて捲られる布団。その向こうに立つのは、勿論アオガミ。
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DONE『I love you』を○○風に訳すと(https://shindanmaker.com/730931)さんのお題。
二人だけの秘密だよ 閉じた目を開いた少年の視界に映り込んだのは、普段と変わらぬアオガミの表情。
少年以外にとっては、だが。
「嫌じゃ、ない?」
緊張で震える少年の声。
好きだと。愛してると伝えた少年に対して、アオガミは即座に首肯で答えた。私も同じだと。
だが、本当に同じか不安になった少年は咄嗟に動いてしまったのだ。目前にあるアオガミの首へ両腕を回し、唇を重ねた。
(どうしよう)
取り返しの付かない事をしてしまったと、少年は己の体も震え始めてきたことを自覚した。
――もしも。
もしも、アオガミの「同じだ」が自分の好きと違った場合、きっと、これから先は――。
「少年」
少年を呼ぶと同時に、アオガミは少年の背中へと両腕を回した。
686少年以外にとっては、だが。
「嫌じゃ、ない?」
緊張で震える少年の声。
好きだと。愛してると伝えた少年に対して、アオガミは即座に首肯で答えた。私も同じだと。
だが、本当に同じか不安になった少年は咄嗟に動いてしまったのだ。目前にあるアオガミの首へ両腕を回し、唇を重ねた。
(どうしよう)
取り返しの付かない事をしてしまったと、少年は己の体も震え始めてきたことを自覚した。
――もしも。
もしも、アオガミの「同じだ」が自分の好きと違った場合、きっと、これから先は――。
「少年」
少年を呼ぶと同時に、アオガミは少年の背中へと両腕を回した。