meeeenkdm
PAST2024年9月1日発行 GW:TOKYO『雨』がテーマのアンソロジー(cp無し・全年齢)に寄稿させて頂いたものになりますKKの誕生日記念にうp
心の拠所「あ――、これは帰れないなぁ」
一人で依頼を熟せるようになって久しい僕は、今日も危なげなく悪霊を退治して帰路についている。しかし駅から出ようとすると、外はバケツをひっくり返したかの様な土砂降りで、まだそんなに遅い時間でもないのに暗く視界も悪い。思わず独り言を発してしまうのも仕方ない悪天候。
その中を折りたたみ傘で果敢に挑んで行く人、ビニール傘を買って行く人、僕のように諦めて待つ人と様々な人間がいる渋谷。
丈夫そうな黒い傘をさして歩くスーツのサラリーマンには、ついあのマレビトを連想して密かに警戒してしまうが、今はもう人間が戻ってきている事も同時に実感する。
そう、今人間は戻ってきているんだ。
思い出される、服や鞄だけが落ちている地面の上に、穏やかに降り注ぐ雨……絶望的な光景。
8628一人で依頼を熟せるようになって久しい僕は、今日も危なげなく悪霊を退治して帰路についている。しかし駅から出ようとすると、外はバケツをひっくり返したかの様な土砂降りで、まだそんなに遅い時間でもないのに暗く視界も悪い。思わず独り言を発してしまうのも仕方ない悪天候。
その中を折りたたみ傘で果敢に挑んで行く人、ビニール傘を買って行く人、僕のように諦めて待つ人と様々な人間がいる渋谷。
丈夫そうな黒い傘をさして歩くスーツのサラリーマンには、ついあのマレビトを連想して密かに警戒してしまうが、今はもう人間が戻ってきている事も同時に実感する。
そう、今人間は戻ってきているんだ。
思い出される、服や鞄だけが落ちている地面の上に、穏やかに降り注ぐ雨……絶望的な光景。
もちこの本棚📖
PAST同居師弟の今日のご飯🍚🍆CP要素なし、また続きを書きたいところ…
一応、第1弾になります
今後も一話完結の予定です
ナスの煮びたしとオクラのおひたし「涼しいなぁ……ずっとここに居たい……」
休日の昼下がり、暁人は行きつけのスーパーで買い物をしていた。今日は有難いことに、野菜が少しだけ安かった。これにしよう、と決めた料理のレシピ通りに材料を買い揃えていく。買い物カゴの中には、色鮮やかなナスとオクラが入っていた。会計前に〈今日の特売品〉とポップが掲げられている高級アイスクリームをカゴに入れて、レジへ向かう。さて、今日の夕飯は――
「さて、と……そろそろ帰ってくる頃かな」
スマートフォンで調べたレシピをもう一度確認しながら、暁人は夕飯の支度を始める。食べたことはあっても、作るのは初めての料理だ。
「まずは……ナスの下ごしらえだね」
まな板の上にナスを置き、はじめにヘタを切り落として縦半分に切り、皮に浅く切込みを入れていく。そのあと、更に縦半分に切り水にさらす。
1767休日の昼下がり、暁人は行きつけのスーパーで買い物をしていた。今日は有難いことに、野菜が少しだけ安かった。これにしよう、と決めた料理のレシピ通りに材料を買い揃えていく。買い物カゴの中には、色鮮やかなナスとオクラが入っていた。会計前に〈今日の特売品〉とポップが掲げられている高級アイスクリームをカゴに入れて、レジへ向かう。さて、今日の夕飯は――
「さて、と……そろそろ帰ってくる頃かな」
スマートフォンで調べたレシピをもう一度確認しながら、暁人は夕飯の支度を始める。食べたことはあっても、作るのは初めての料理だ。
「まずは……ナスの下ごしらえだね」
まな板の上にナスを置き、はじめにヘタを切り落として縦半分に切り、皮に浅く切込みを入れていく。そのあと、更に縦半分に切り水にさらす。
時人歩
DONE本編後n年後(多分暁人くん大学は卒業している)の夏の日を想定/暁人くんがKKと同じお仕事をするようになったという妄想を軸に。いなくなった人は、いない。暁人くん一人称。
―――以下、作者の独り言―――
前回の作品が2023年の11月ってマジ?
その時未クリアって明記したわけですが、そのあと本編を無事クリアしました。
今、蜘蛛の糸18層から下に降りられない芸人になってます。フフ(涙)
再訪、きさらぎ駅『―――鉄道をご利用いただきありがとうございます。各駅停車、―――行きです』
「……ん……」
いつの間にか眠っていたらしい。電車内の放送の声で意識が浮上する。
パチパチ、と瞬きを数回。
目の前の座席には誰も座ってない。……それどころか周りを見渡すと車両の中には自分以外誰もいない。
(……あれ……?この時間のこの電車こんなに空いてたっけ……?)
言いようのない不安感を覚える。
『次は、『きさらぎ駅』、『きらさぎ駅』……お出口、左側に変わります』
再び車内に放送が流れる。その内容に、僕は弾かれるように座席を立った。
窓の外を見れば夜よりも深い闇に濃い霧が出ていた。
「……っ」
反射的に普段持ち歩いている仕事用鞄の中を確認する。
4554「……ん……」
いつの間にか眠っていたらしい。電車内の放送の声で意識が浮上する。
パチパチ、と瞬きを数回。
目の前の座席には誰も座ってない。……それどころか周りを見渡すと車両の中には自分以外誰もいない。
(……あれ……?この時間のこの電車こんなに空いてたっけ……?)
言いようのない不安感を覚える。
『次は、『きさらぎ駅』、『きらさぎ駅』……お出口、左側に変わります』
再び車内に放送が流れる。その内容に、僕は弾かれるように座席を立った。
窓の外を見れば夜よりも深い闇に濃い霧が出ていた。
「……っ」
反射的に普段持ち歩いている仕事用鞄の中を確認する。
GegyoGWT
DONE本編後の暁人くんと祟り屋さんの妄想3つ目です。祟り屋さんとちょっと距離が近かったりします。無題3 霧の海に、巨大なビルが一棟聳えている。
窓には灯りが点っているが、人の気配はない。命ある人々が住まう現実世界から、適当に切り取られて、そこに漂着したようなうら寂しいオフィスビル。
その周囲に、ゆっくりと浮遊する小さな影が群れを成している。
『あれを始末してもらいたい』
番傘の上で祟り屋が言う。
その隣に浮かんだ番傘の上で、暁人はうんざりして溜息した。
あの霧の夜、今は亡き相棒から借りていた様々な霊能力。あの夜から実に十年が過ぎた今になって、再び能力を獲得した暁人は、やはりと言うべきか除霊やマレビト退治といった活動をするようになった。
決して積極的にではない。そのつもりはない。暁人も今やごくごく普通の会社勤めで、真っ当に生きているつもりなのだ。サラリーマンと霊能力者もどきの二足の草鞋など、たやすく履けるわけがない。
5722窓には灯りが点っているが、人の気配はない。命ある人々が住まう現実世界から、適当に切り取られて、そこに漂着したようなうら寂しいオフィスビル。
その周囲に、ゆっくりと浮遊する小さな影が群れを成している。
『あれを始末してもらいたい』
番傘の上で祟り屋が言う。
その隣に浮かんだ番傘の上で、暁人はうんざりして溜息した。
あの霧の夜、今は亡き相棒から借りていた様々な霊能力。あの夜から実に十年が過ぎた今になって、再び能力を獲得した暁人は、やはりと言うべきか除霊やマレビト退治といった活動をするようになった。
決して積極的にではない。そのつもりはない。暁人も今やごくごく普通の会社勤めで、真っ当に生きているつもりなのだ。サラリーマンと霊能力者もどきの二足の草鞋など、たやすく履けるわけがない。
GegyoGWT
MOURNINGぼんやりと思い浮かんだネタです。マレビトのコンセプトとデザインが好きで、ミニミニのマレビトを育成できたらなと思った話です。黒土女のデザインが一番好きなので黒土女が真っ先に浮かびましたが、人によって育つマレビトが違うやつです。
※全員生存if時空で、暁人くんとKKがバディをしている設定です。
※このお話にカプ要素はありませんがK暁を生み出す人間が書いております。
マレビト育成キット 女の喘鳴が聞こえる。
肺に水が溜まっているような、酷い音だ。
がらんとしたワンルームは明るかった。住む人間のいない部屋は、何も無い展示ケースのように淡々として静謐だ。だがそこに、濡れそぼった女の放つ濁った喘ぎ声だけが繰り返されている。
暁人はためらいつつ、リビングに足を踏み入れた。すぐ後ろでKKも息を潜めている。
カーテンの無い掃き出し窓から、昼下がりの柔らかい光が部屋を照らしている。
女は壁の隅にいた。住人が残した忘れ物のように、脈絡もなく倒れ伏していた。
暁人が近づくと、女はゆっくりと顔を上げた。
ごぼごぼと篭ったような水音がする。こんなにも明るい部屋にいながら、濁った深い水底を思わせる。重く、暗く、茫洋とした水。それはこの女の、胸腔にあたる所から聞こえる音だ。
4419肺に水が溜まっているような、酷い音だ。
がらんとしたワンルームは明るかった。住む人間のいない部屋は、何も無い展示ケースのように淡々として静謐だ。だがそこに、濡れそぼった女の放つ濁った喘ぎ声だけが繰り返されている。
暁人はためらいつつ、リビングに足を踏み入れた。すぐ後ろでKKも息を潜めている。
カーテンの無い掃き出し窓から、昼下がりの柔らかい光が部屋を照らしている。
女は壁の隅にいた。住人が残した忘れ物のように、脈絡もなく倒れ伏していた。
暁人が近づくと、女はゆっくりと顔を上げた。
ごぼごぼと篭ったような水音がする。こんなにも明るい部屋にいながら、濁った深い水底を思わせる。重く、暗く、茫洋とした水。それはこの女の、胸腔にあたる所から聞こえる音だ。
ことざき
PAST以前にXに連投していた、暁人くんに対する自己解釈です。主に、暁人くんに対する自己解釈 ゲーム本編当日が2022年で母3回忌後だと、少なくとも母死亡時から約3か月は暁人君も未成年だし、妹は義務教育中。
暁人君が子どもとして助けを求めるには年齢が微妙で、しかし法的にも社会的にも無力。さらに、成人しても社会的な部分は自動的に解決せず低いまま。
新しいスタート云々の力強い台詞は、そうでもしないとボキリと折れるから。底無し沼に沈みかけていたのは暁人君も同じ。
でもそれを認めると、唯一の家族である妹との生活が破綻する。だから、とにかく頑張ろうとしていた。
(実際は最初から破綻していたから本編開始時のムービーがああだったわけだが)
二人には大人や専門家の助けが必要だった。
けれど、ゲーム本編から推測する母の死因や、暁人君が隙間の年齢にあること、暁人君が妹以外の身近な人の話を一切口にせず匂わせもしないことを考えるに、暁人君も妹も『自分たちは助けてもらえる存在だ』と思う(=人や社会を信用する)のが難しかったのだろうと。
868暁人君が子どもとして助けを求めるには年齢が微妙で、しかし法的にも社会的にも無力。さらに、成人しても社会的な部分は自動的に解決せず低いまま。
新しいスタート云々の力強い台詞は、そうでもしないとボキリと折れるから。底無し沼に沈みかけていたのは暁人君も同じ。
でもそれを認めると、唯一の家族である妹との生活が破綻する。だから、とにかく頑張ろうとしていた。
(実際は最初から破綻していたから本編開始時のムービーがああだったわけだが)
二人には大人や専門家の助けが必要だった。
けれど、ゲーム本編から推測する母の死因や、暁人君が隙間の年齢にあること、暁人君が妹以外の身近な人の話を一切口にせず匂わせもしないことを考えるに、暁人君も妹も『自分たちは助けてもらえる存在だ』と思う(=人や社会を信用する)のが難しかったのだろうと。
GegyoGWT
DOODLE平日の深夜テンションで書いた雰囲気SS。きらきらしたものが好きなのでエーテルが好き。ほんとにどうしようこれ光素 くろぐろとした闇の中に、きらきらと三色のエーテルが浮いている。
暁人はそれを掴み、口に運んで噛み砕いた。
ある夏の夜、暁人は息をするようにこの元素を吸収していた。
体へ取り込んで、別の形へ変換して、エネルギーとしてまた宙へ放っていた。
恐ろしい魍魎の巣窟と化した街を駆け抜けるために、暁人にはこの光る結晶体が必要だった。あの夜に現れた異次元の事物は、全てがエーテルから成っていた。砕けばまたきらきらと元素の形に戻り、まるで従属するように暁人の体に集まった。
暁人の体はもういくつ、この結晶体を受け入れたか知れない。特殊なカメラで特定の波長の光だけを捉えるように、エーテルだけを捉える目があったなら、きっと暁人は燦然と輝く結晶の集積として見えただろう。
1239暁人はそれを掴み、口に運んで噛み砕いた。
ある夏の夜、暁人は息をするようにこの元素を吸収していた。
体へ取り込んで、別の形へ変換して、エネルギーとしてまた宙へ放っていた。
恐ろしい魍魎の巣窟と化した街を駆け抜けるために、暁人にはこの光る結晶体が必要だった。あの夜に現れた異次元の事物は、全てがエーテルから成っていた。砕けばまたきらきらと元素の形に戻り、まるで従属するように暁人の体に集まった。
暁人の体はもういくつ、この結晶体を受け入れたか知れない。特殊なカメラで特定の波長の光だけを捉えるように、エーテルだけを捉える目があったなら、きっと暁人は燦然と輝く結晶の集積として見えただろう。