haruka
PAST本編から数年後フランスでの牛天の小話
ちょっとセンチメンタルな感じの雰囲気です
瞳に映る世界 薄いドアの隙間から、また、微かに甘い香りが漂ってくる。
それは隣りの部屋に居る男の、繊細さを要求される挙動に合わせて、静かに、そろりと、波紋のように牛島の元へと届く。
ショコラ。カカオの香り。
牛島にとって、すっかり馴染みとなったもの。
ただその味や香りの違いはよく判らず、それに関しては少し申し訳なく思うのだが、ショコラに格別の愛を注ぐ男は、気にしていないと言って笑う。
『わからなくても、美味しけりゃいーの』
そう話したキッチンに立つこの部屋の主は、――たいてい、眉を寄せ、小首をかしげ、難しそうな顔をしている。牛島のわからない世界で、領域で、とても細やかなところまで、気力と技術と感性を行き届かせようとしている。
1806それは隣りの部屋に居る男の、繊細さを要求される挙動に合わせて、静かに、そろりと、波紋のように牛島の元へと届く。
ショコラ。カカオの香り。
牛島にとって、すっかり馴染みとなったもの。
ただその味や香りの違いはよく判らず、それに関しては少し申し訳なく思うのだが、ショコラに格別の愛を注ぐ男は、気にしていないと言って笑う。
『わからなくても、美味しけりゃいーの』
そう話したキッチンに立つこの部屋の主は、――たいてい、眉を寄せ、小首をかしげ、難しそうな顔をしている。牛島のわからない世界で、領域で、とても細やかなところまで、気力と技術と感性を行き届かせようとしている。
haruka
PAST引退後の牛天と沢のみなさんの話・後編ここまでお付き合いいただきありがとうございました
きみとマブダチ/後編 その日、白布は練習中に何度か川西と目が合い、自分の覚える些細な違和感が気のせいではないことを確信した。
休憩に入り、川西が後輩たちに水分補給の指示を出す。話すならいまのうちだと、白布は川西のドリンクボトルを持ってそこへ駆けていった。
「ほい、太一」
「ありがと」
お互いボトルをぐいと傾け喉を潤し、はあ、とひと息つく。
そうして、白布は少し離れた場所で集まっている1年の塊を見ながら横の男に話を切り出した。敢えて確認しなかったが、川西の視線もまた同じ場所に注がれていることはわかっていた。
「……やっぱ変だよな、あいつ」
「だな」
昨日から五色の様子がおかしい。
プレーそのものの調子はいい。練習にも身が入っている。
42355休憩に入り、川西が後輩たちに水分補給の指示を出す。話すならいまのうちだと、白布は川西のドリンクボトルを持ってそこへ駆けていった。
「ほい、太一」
「ありがと」
お互いボトルをぐいと傾け喉を潤し、はあ、とひと息つく。
そうして、白布は少し離れた場所で集まっている1年の塊を見ながら横の男に話を切り出した。敢えて確認しなかったが、川西の視線もまた同じ場所に注がれていることはわかっていた。
「……やっぱ変だよな、あいつ」
「だな」
昨日から五色の様子がおかしい。
プレーそのものの調子はいい。練習にも身が入っている。
haruka
PAST引退後の牛天と沢のみなさんの話・中編きみとマブダチ/中編 大きな手のひらが見えた。
その手はこの身を抱えるように包んでいき、強く抱きしめられた。
――若利。
――元気でな。
――からだを大事にするんだぞ。
――どこにいても、父さんはいつもお前のことをおもっているよ。
ぬくもりの中で、頭の上から声が降ってきた。
雪のようにやわらかくて。
すぐに消えていく。
(――うん)
(ぼくもおもう)
(お父さんも、げんきで)
ことばはここにあるのに、声にならなかった。
だから代わりに頷いて、最後まで、お父さんの姿が見えなくなるまで、見送った。
お母さんと、手をつないで。
でも、いつのまにか、手にはなにもなかった。
お父さんがいなくなって。
お母さんもいなくて。
ひとりだった。
33117その手はこの身を抱えるように包んでいき、強く抱きしめられた。
――若利。
――元気でな。
――からだを大事にするんだぞ。
――どこにいても、父さんはいつもお前のことをおもっているよ。
ぬくもりの中で、頭の上から声が降ってきた。
雪のようにやわらかくて。
すぐに消えていく。
(――うん)
(ぼくもおもう)
(お父さんも、げんきで)
ことばはここにあるのに、声にならなかった。
だから代わりに頷いて、最後まで、お父さんの姿が見えなくなるまで、見送った。
お母さんと、手をつないで。
でも、いつのまにか、手にはなにもなかった。
お父さんがいなくなって。
お母さんもいなくて。
ひとりだった。
haruka
PAST引退後の牛天と沢のみなさんの話・前編すれ違ったりケンカしたりしてくっつきます
キャラの過去や設定などをあちこち捏造しております
ご注意ください
このあと中編・後編につづきます
きみとマブダチ/前編 若利くんはときどき、小さく頷きながら本を読んでいた。
どの本もというわけじゃない。若利くんの部屋の本棚にあるうちの3冊で、取りやすい段にいつも置いてある。
若利くんは、ジャンプや他の本を読んでるときはほとんど動かず黙々と読んでるけど、その本を読んでるときだけは、よっぽどタメになることが書いてあるのか、そこから得たものを確かめるように何度も頷いてた。
フシギだねー、と思いながら俺は若利くんのベッドに寝そべって、その横顔を見ていた。
興味のあることには真剣な若利くんのことだ。あれだけ何度も、隣りでゴロゴロしてる俺が本の表紙とタイトルを覚えちゃうほど読んでたら、内容なんてすっかり頭に入ってそうじゃない?
33942どの本もというわけじゃない。若利くんの部屋の本棚にあるうちの3冊で、取りやすい段にいつも置いてある。
若利くんは、ジャンプや他の本を読んでるときはほとんど動かず黙々と読んでるけど、その本を読んでるときだけは、よっぽどタメになることが書いてあるのか、そこから得たものを確かめるように何度も頷いてた。
フシギだねー、と思いながら俺は若利くんのベッドに寝そべって、その横顔を見ていた。
興味のあることには真剣な若利くんのことだ。あれだけ何度も、隣りでゴロゴロしてる俺が本の表紙とタイトルを覚えちゃうほど読んでたら、内容なんてすっかり頭に入ってそうじゃない?
kosaidadore
DOODLE(肌色牛天)あげ忘れてた裸をあげるついでにポイピコが生き帰ったのか確認しようのコーナーこれが何かは流石にわかるんだけど何故ここにあるかはわからない🐂と
これがどういうことかは流石にわかるんだけど何故こうなったかがわからない🍫
見れなかったら😎を押してくれ、bang☆
kosaidadore
DOODLE(牛天)痕跡、わざとじゃないやつ、好きさとりちゃんは頭をまぜっ返しちゃう癖があり、わかとしくんは指の力が強すぎる 相手が華奢だと骨折りそうなのでマブダチがデカくてよかった🫶 2
支部住のお腐れ
INFO※帯の背幅不安ありだったので、背の色なしver.も+ブックカバー、帯が完成しました!
ブックカバーは組み合わせなきゃいけないですが、自分でやるよって方は自由に合体してください笑
(折り白が分割状態なので、A3に調整合体する仕様)
趣味本ご購入頂いた方の、巻末パスワードで閲覧出来ます。パスワードを知っている方は保存、使用可です。(文字数制限あるので、後ろの数字から6文字がパスワードです) 8
kosaidadore
MAIKING⚠️小説 巨根2人の牛天について 231117よく指摘されてることとして、テンド一くん、ウシジマと並べると牛天になるとしても単体で見るとかなり攻め度のポテンシャルあるよね。
なんなのあの感じ?もしかしてでかいのでは?自分の巨根がわりと気に入っているテンドー…初めて自分と同じくらいでっかいのを見てテンションが上がるテンドー…しかしその巨根を発揮する機会が無いテンドー… 2707
kosaidadore
DONE部!!の見合い回の牛天3種盛り(※半裸)テンド一のノリノリ女装、ゴツい脚も意外と乙女心わかってることもワ力トシくんを贔屓しまくってることもかわいいけど、本人がその姿を本気でかわいいと思ってることが一番かわいいよ… 3
小栗ビュン
DONE20231104牛天ワンライ お題「片道切符」片道切符振り返る日が来るとしたら、それはいつの日になるだろうか。そんなことを考える間もなく、成人を迎え、走り続けている。高校時代に誰かに惹かれることを知って、そのまま互いを受け入れた。そして共有していたものを卒業と同時に分かち、互いの道を突き詰めるべく、別な場所で生きることを選んだのだった。
自分の都合で恋人と会うことが出来ない生活をしている。それこそ互いの生き方を振り返らなければ変わることがないかもしれない。恋人の繁忙期に会うことはほぼかなわない。自分の都合は所属団体のスケジュール次第だ。所属しているところに従うことが自分のためにしか思えない。そこが自分の「わがまま」であり、会えない時期というのが互いの「わがまま」となる。
1622自分の都合で恋人と会うことが出来ない生活をしている。それこそ互いの生き方を振り返らなければ変わることがないかもしれない。恋人の繁忙期に会うことはほぼかなわない。自分の都合は所属団体のスケジュール次第だ。所属しているところに従うことが自分のためにしか思えない。そこが自分の「わがまま」であり、会えない時期というのが互いの「わがまま」となる。
小栗ビュン
REHABILI牛天ワンライ「午前零時」「海岸」「黒板」ホワイトボード教室のホワイトボードの前に立つ。白鳥沢学園高校には黒板がない。あまり好きじゃない過去にはいつも真っ黒の黒板があった。そしてそこには、誰かが書いた自分の悪口。
「妖怪」
そういった数々のあだ名と雑言。しかし不登校にはならなかった。幼い頃に心を殺す術を見つけてしまったがために、生き抜くことを自然と選んでしまった。どうせ義務教育など、義務でしかないのだ。たかが数年生きられれば、あとはどうにでもなる。
大人になれば、自由だ。何に染まることもない。逆に何かに染まってしまえばいい。自分を染めるものを選べるのが大人なのだ。そう思って生きてきた。誰かと交わることなんてないだろうと思っていた。
期待なんてしない。そんなものは持たない。使い古したバレーボールをひとつ持って、ただコートに立つ。勿論主役なんてなれない。けれど、何かを操作できるあの感じは、とても好きだった。自分で決められる何か。相手の悔しがる顔、仲間に驚かれる顔。そういうものに喜びを感じられる唯一のものだった。
2451「妖怪」
そういった数々のあだ名と雑言。しかし不登校にはならなかった。幼い頃に心を殺す術を見つけてしまったがために、生き抜くことを自然と選んでしまった。どうせ義務教育など、義務でしかないのだ。たかが数年生きられれば、あとはどうにでもなる。
大人になれば、自由だ。何に染まることもない。逆に何かに染まってしまえばいい。自分を染めるものを選べるのが大人なのだ。そう思って生きてきた。誰かと交わることなんてないだろうと思っていた。
期待なんてしない。そんなものは持たない。使い古したバレーボールをひとつ持って、ただコートに立つ。勿論主役なんてなれない。けれど、何かを操作できるあの感じは、とても好きだった。自分で決められる何か。相手の悔しがる顔、仲間に驚かれる顔。そういうものに喜びを感じられる唯一のものだった。
小栗ビュン
REHABILI20230917牛天ワンライ夜の部、お題「涙」侵入者誰に何を言われても、誰かに負けても、誰かに勝っても、卒業式を迎えても、泣かなかった。笑い転げて泣きそうになったことは何度もある。自分の頬に涙が伝っていく記憶はもう久しくない。
兄弟子に褒められても、師に褒められても、呆れられても、泣かなかった。
そうしてこうして、今日までなんとなく生きてきて、二十数年間。
泣きたくなったことは何度かある。その原因は全て初恋の相手、牛島若利にある。
兄弟子に夜を誘われて、断る理由もなく遊んでみた。西洋人の体の作りに惚れ惚れしたものだが、やはりあの全身バネのような筋肉が恋しくなる。牛島若利のあの体で遊べたことはない。遊ぼうだなんて思ったこともないのだが。体で遊んでくれるようなタイプでもない。健全な高校生をしていたのだ。
4020兄弟子に褒められても、師に褒められても、呆れられても、泣かなかった。
そうしてこうして、今日までなんとなく生きてきて、二十数年間。
泣きたくなったことは何度かある。その原因は全て初恋の相手、牛島若利にある。
兄弟子に夜を誘われて、断る理由もなく遊んでみた。西洋人の体の作りに惚れ惚れしたものだが、やはりあの全身バネのような筋肉が恋しくなる。牛島若利のあの体で遊べたことはない。遊ぼうだなんて思ったこともないのだが。体で遊んでくれるようなタイプでもない。健全な高校生をしていたのだ。