なりひさ
DOODLE⬜️🐜(⬜️記憶なし)🐜はあるきっかけで部屋に閉じ篭もるようになって…幸せに名前なんてなかったから6 カーテンの隙間から洩れる光が、舞う埃を照らしている。その輝きから瘴奸は顔をそむけていた。顔を押しつけた枕からはすえた臭いがする。外から聞こえる車の走行音すら自分を責めるように響いた。
瘴奸は少し目を開けてから、そのぼやけた視界すら忌々しく思った。今日も一日が始まってしまったという絶望だけが胸に広がる。何時間寝ても体は鉛のように重い。起きなければと思うのに、腕一本動かすことすら億劫だった。
いつからこうしていたのか、もう覚えていない。最初の数日は少し休むだけと自分に言い訳していたが、事態が好転することはなかった。
瘴奸がこうして起きられなくなることは、初めてではない。瘴奸はこれが起こるたびに絶望し、一緒に生活する貞宗たちに多大なる迷惑をかけてきた。最近は調子が良かったから、気を配ることを忘れていたのかもしれない。
3151瘴奸は少し目を開けてから、そのぼやけた視界すら忌々しく思った。今日も一日が始まってしまったという絶望だけが胸に広がる。何時間寝ても体は鉛のように重い。起きなければと思うのに、腕一本動かすことすら億劫だった。
いつからこうしていたのか、もう覚えていない。最初の数日は少し休むだけと自分に言い訳していたが、事態が好転することはなかった。
瘴奸がこうして起きられなくなることは、初めてではない。瘴奸はこれが起こるたびに絶望し、一緒に生活する貞宗たちに多大なる迷惑をかけてきた。最近は調子が良かったから、気を配ることを忘れていたのかもしれない。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜。距離感がバグってる二人ありえないほど近い 掠奪後の馬鹿騒ぎも落ち着いた朝方。昇る朝陽に目を焼かれながら、瘴奸は目を覚ました。昨夜は酒を飲んでいるうちに、いつの間にか眠り込んでいたらしい。
「あ、起きたんすか」
その声に目を向ければ、すぐそばに死蝋がいた。身を丸めて眠っていた瘴奸の背に背を預けるようにして、死蝋は座っている。
瘴奸は目を瞬いて死蝋を見た。死蝋の浅緑の直垂の袖が裂けている。血で汚れてはいないから、掠奪の最中にどこかに引っ掛けて破いたのだろう。
瘴奸は指を伸ばして破けた袖を摘んだ。まだ新しい直垂だというのに、随分と派手に破いたものだ。
すると死蝋はおもむろに直垂を脱ぎ始めた。
「頭、これ破れちまった」
「転がってる死体から新しいのを選んでこい」
1631「あ、起きたんすか」
その声に目を向ければ、すぐそばに死蝋がいた。身を丸めて眠っていた瘴奸の背に背を預けるようにして、死蝋は座っている。
瘴奸は目を瞬いて死蝋を見た。死蝋の浅緑の直垂の袖が裂けている。血で汚れてはいないから、掠奪の最中にどこかに引っ掛けて破いたのだろう。
瘴奸は指を伸ばして破けた袖を摘んだ。まだ新しい直垂だというのに、随分と派手に破いたものだ。
すると死蝋はおもむろに直垂を脱ぎ始めた。
「頭、これ破れちまった」
「転がってる死体から新しいのを選んでこい」
なりひさ
DOODLE現代転生⬜️🐜(⬜️記憶なし)の見守る側の人たち👀👅🟥幸せに名前なんてなかったから5 麗らかな日曜日。晴天に恵まれた庭で、タオルを広げる瘴奸の背を、貞宗は静かに見つめていた。四人分の洗濯物は青空の下で風に揺れている。瘴奸は空になった籠を持つと居間へと戻ってきた。
「新三郎殿、夕方に取り込みをお願いします」
呼ばれた新三郎は、半分目を閉じてトーストをかじっていた。少し前に常興に叩き起こされたばかりで、まだ眠気が抜けていないらしい。
休日の朝、誰よりも早く物音を立てていたのは瘴奸だった。洗濯機の音が止むころには、もう掃除機の低い唸り声が居間に響いていた。家事はそれぞれに分担されているが、新三郎は雑用や頼まれ仕事をこなしている。もっとも、それをよくサボっては常興から叱られていた。
洗濯籠を抱えて居間を横切る瘴奸の横顔を、貞宗は目で追った。いつもと何かが違う。違和感の正体を探るように目を凝らすが、それはすぐには掴めなかった。
3020「新三郎殿、夕方に取り込みをお願いします」
呼ばれた新三郎は、半分目を閉じてトーストをかじっていた。少し前に常興に叩き起こされたばかりで、まだ眠気が抜けていないらしい。
休日の朝、誰よりも早く物音を立てていたのは瘴奸だった。洗濯機の音が止むころには、もう掃除機の低い唸り声が居間に響いていた。家事はそれぞれに分担されているが、新三郎は雑用や頼まれ仕事をこなしている。もっとも、それをよくサボっては常興から叱られていた。
洗濯籠を抱えて居間を横切る瘴奸の横顔を、貞宗は目で追った。いつもと何かが違う。違和感の正体を探るように目を凝らすが、それはすぐには掴めなかった。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜(⬜️記憶なし)記憶はないけど🐜が気になってつけ回す⬜️幸せに名前なんてなかったから4 その翌日。予感はしていたがビルの前で死蝋が待ち伏せていた。瘴奸は一瞬足を止めかけたが、何も言わずに通り過ぎようとした。その背を、死蝋が当然のようについてくる。
「おはよ」
顔を覗き込んでくる死蝋に、瘴奸は顔を背ける。屋上に上がるためにエレベーターに乗り込むと、死蝋も乗り込んできた。死蝋は階数のボタンを押さず、エレベーターは屋上へと昇っていく。そもそも、瘴奸は清掃のためにこの時間に出社するが、ビルの中に入る会社の者の出社時間はもっと遅かった。
瘴奸はパネルを見つめるふりをして、死蝋の視線から逃げた。構わずこちらを見てくる視線を針のように感じる。
「やっぱりあんたが誰なのか思い出せないんだけどさ」
その言葉に、一瞬目の奥が揺れた気がした。想定していた反応のはずなのに、どうして胸の奥がこうも沈むのか、自分でもわからなかった。
1580「おはよ」
顔を覗き込んでくる死蝋に、瘴奸は顔を背ける。屋上に上がるためにエレベーターに乗り込むと、死蝋も乗り込んできた。死蝋は階数のボタンを押さず、エレベーターは屋上へと昇っていく。そもそも、瘴奸は清掃のためにこの時間に出社するが、ビルの中に入る会社の者の出社時間はもっと遅かった。
瘴奸はパネルを見つめるふりをして、死蝋の視線から逃げた。構わずこちらを見てくる視線を針のように感じる。
「やっぱりあんたが誰なのか思い出せないんだけどさ」
その言葉に、一瞬目の奥が揺れた気がした。想定していた反応のはずなのに、どうして胸の奥がこうも沈むのか、自分でもわからなかった。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜(⬜️記憶なし)幸せに名前なんてなかったから3「断ってよかったのか?」
新三郎の言葉に、瘴奸は一度目を伏せてから、ゆっくりと頷いた。
死蝋は連絡先を教えろと言ってきたが、瘴奸ははっきりと断った。そのまま家の中へ逃げ込んだから、その後のことはわからない。貞宗が追い返したと言っていたから、諦めて帰ったのだろう。
「ほれ、アイスを食べるぞ」
貞宗が冷凍庫から出したアイスを持ってきた。差し出されたアイスを受け取ろうとすると、貞宗はそのアイスを瘴奸の頬に当てた。冷たさに思わず声が出る。貞宗はその反応に笑うと、すまんすまんと言いながら瘴奸の頬に手を当てた。ついた水滴を拭うように動く手に、瘴奸は頬を擦り寄せる。誰かの視線が背中を撫でたような気がして振り返ると、常興と目が合った。常興は小さくため息をついて背を向ける。今回は見逃してくれるらしい。
1856新三郎の言葉に、瘴奸は一度目を伏せてから、ゆっくりと頷いた。
死蝋は連絡先を教えろと言ってきたが、瘴奸ははっきりと断った。そのまま家の中へ逃げ込んだから、その後のことはわからない。貞宗が追い返したと言っていたから、諦めて帰ったのだろう。
「ほれ、アイスを食べるぞ」
貞宗が冷凍庫から出したアイスを持ってきた。差し出されたアイスを受け取ろうとすると、貞宗はそのアイスを瘴奸の頬に当てた。冷たさに思わず声が出る。貞宗はその反応に笑うと、すまんすまんと言いながら瘴奸の頬に手を当てた。ついた水滴を拭うように動く手に、瘴奸は頬を擦り寄せる。誰かの視線が背中を撫でたような気がして振り返ると、常興と目が合った。常興は小さくため息をついて背を向ける。今回は見逃してくれるらしい。
なりひさ
DOODLE現代転生⬜️🐜(⬜️記憶なし)幸せに名前なんてなかったから2 数日経って、瘴奸の額の傷は瘡蓋になっていた。瘴奸はまだ気落ちしているようだったが、それもいずれ回復するだろうと新三郎は思っていた。今も貞宗と常興が瘴奸を連れてコンビニへ行っている。新三郎は家に残って夕食後の皿洗いをしていた。
台所の窓の外では、茜色に染まった空がゆっくりと暮れかけていた。少し開けた窓からそっと風が入り込み、薄いカーテンがを揺らしている。近所の公園で遊ぶ子どもの声も聞こえなくなり、どこからか魚を焼く匂いが漂って来ていた。
すると玄関の呼び鈴が鳴った。回覧板でも回ってきたかと、新三郎は濡れた手を拭いて玄関へと出た。
硝子の引き戸を開けると、そこに立っていたのは死蝋だった。
新三郎は驚きのあまり言葉を失った。田舎のヤンキーのような格好の死蝋がじろじろと新三郎を見る。
1853台所の窓の外では、茜色に染まった空がゆっくりと暮れかけていた。少し開けた窓からそっと風が入り込み、薄いカーテンがを揺らしている。近所の公園で遊ぶ子どもの声も聞こえなくなり、どこからか魚を焼く匂いが漂って来ていた。
すると玄関の呼び鈴が鳴った。回覧板でも回ってきたかと、新三郎は濡れた手を拭いて玄関へと出た。
硝子の引き戸を開けると、そこに立っていたのは死蝋だった。
新三郎は驚きのあまり言葉を失った。田舎のヤンキーのような格好の死蝋がじろじろと新三郎を見る。
なりひさ
DOODLE転生現パロ⬜️🐜(⬜️記憶なし)幸せに名前なんてなかったから「なんすか、あれ」
新三郎は芋虫のような瘴奸を見て言った。瘴奸は大きな体を丸めてうずくまっている。
「鴨居にぶつけてな」
貞宗が救急箱を持ってやってきた。貞宗はうずくまる瘴奸のそばに屈むと、絆創膏を取り出している。
「どんくさ。何やってんの」
上背のある瘴奸が和室の鴨居をくぐる姿はいつも見ていた。背が高いアピールやめろと言ったことがあるが、そうしたら「新三郎殿は屈まなくてよくて羨ましいですな」と言われたので喧嘩になったことがある。なぜ今日はぶつけたのか。
貞宗は正座すると膝に瘴奸の頭を乗せた。その体勢で傷口を消毒していく。瘴奸は放心しながら貞宗の太腿を撫でていた。それに気付いた常興が怒鳴りながら瘴奸の尻を蹴る。瘴奸は常興に痛いと文句を言い、常興が十倍言い返す。
2119新三郎は芋虫のような瘴奸を見て言った。瘴奸は大きな体を丸めてうずくまっている。
「鴨居にぶつけてな」
貞宗が救急箱を持ってやってきた。貞宗はうずくまる瘴奸のそばに屈むと、絆創膏を取り出している。
「どんくさ。何やってんの」
上背のある瘴奸が和室の鴨居をくぐる姿はいつも見ていた。背が高いアピールやめろと言ったことがあるが、そうしたら「新三郎殿は屈まなくてよくて羨ましいですな」と言われたので喧嘩になったことがある。なぜ今日はぶつけたのか。
貞宗は正座すると膝に瘴奸の頭を乗せた。その体勢で傷口を消毒していく。瘴奸は放心しながら貞宗の太腿を撫でていた。それに気付いた常興が怒鳴りながら瘴奸の尻を蹴る。瘴奸は常興に痛いと文句を言い、常興が十倍言い返す。
なりひさ
DOODLE🟥👀と⬜️🐜っぽいほのぼの白線の後ろにお下がりください 小笠原軍合同演習は本当の戦と見紛うばかりの様相を呈していた。得物こそ真剣ではないが、駆けた馬が土埃を巻き上げ、方々から怒号が響く。
それらの様子を小笠原貞宗は小高い丘から見下ろしていた。すぐそばには赤沢常興が控えている。貞宗はそのよく見える目で隅々まで自軍の兵を見渡した。
「新しい部隊はあれか」
貞宗の視線の先を確かめて、常興は短く返事した。それは最近になって常興が編成し直した部隊で、指揮は新三郎が取っている。
「なかなか良い動きをするではないか」
「お褒めの言葉、部隊の者に伝えておきます」
小笠原軍では戦力不足を補うために、盛んに鍛錬や演習が行われていた。その総指揮を任されているのが常興である。さらにその補助としてもう一人、最近になって小笠原軍に加わった元悪党がいた。
2724それらの様子を小笠原貞宗は小高い丘から見下ろしていた。すぐそばには赤沢常興が控えている。貞宗はそのよく見える目で隅々まで自軍の兵を見渡した。
「新しい部隊はあれか」
貞宗の視線の先を確かめて、常興は短く返事した。それは最近になって常興が編成し直した部隊で、指揮は新三郎が取っている。
「なかなか良い動きをするではないか」
「お褒めの言葉、部隊の者に伝えておきます」
小笠原軍では戦力不足を補うために、盛んに鍛錬や演習が行われていた。その総指揮を任されているのが常興である。さらにその補助としてもう一人、最近になって小笠原軍に加わった元悪党がいた。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜。現代転生してる⬜️🐜を目撃する👅そこになかったらないですね 新三郎は壁にかけられた時計を見やる。バイト上がりまであと半時間。面倒な客さえ来なければ何事もなく終わるだろう。
小さな駅のそばにあるコンビニエンスストア。利用者はその小さな駅の利用客や近隣住民だけで忙しくはない。田舎特有の広い駐車場があり、遊び場がない中高生の溜まり場になる。
新三郎はレジの空いたスペースに教科書とノートを広げていた。店内に客はいない。暇なら宿題をやっていてもいいと寛容な店長が言うので、せっせと問題を解いていた。
すると入店音が鳴る。「いらっしゃいませ」と、ほぼ語尾だけ発音してから、新三郎は顔を上げた。入ってきた客の顔は見えなかったが、男二人だった。一人がカゴを持って行ったので、購入点数が多いのだろう。広げた教科書を端に寄せながら、その客を目で追った。宿題には飽きていたし、何かしらの予感があったのかもしれない。
3094小さな駅のそばにあるコンビニエンスストア。利用者はその小さな駅の利用客や近隣住民だけで忙しくはない。田舎特有の広い駐車場があり、遊び場がない中高生の溜まり場になる。
新三郎はレジの空いたスペースに教科書とノートを広げていた。店内に客はいない。暇なら宿題をやっていてもいいと寛容な店長が言うので、せっせと問題を解いていた。
すると入店音が鳴る。「いらっしゃいませ」と、ほぼ語尾だけ発音してから、新三郎は顔を上げた。入ってきた客の顔は見えなかったが、男二人だった。一人がカゴを持って行ったので、購入点数が多いのだろう。広げた教科書を端に寄せながら、その客を目で追った。宿題には飽きていたし、何かしらの予感があったのかもしれない。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜看病話面影 その2 瘴奸の看病の成果か、皆の体調は快方に向かっていた。ところが安堵も束の間で、今度は瘴奸が倒れた。
誰より元気そうに振る舞っていた瘴奸だったが、粥を作っている最中に急にその場にへたりこんだという。手伝いをしていた白骨がそれを見つけて、大慌てで広間に運び込んだ。
「嘘だろ……」
腐乱が思わず声を漏らした。殺しても死なないと思っていた瘴奸が病で倒れて素直に驚いていた。
「大丈夫かよお頭」
既に回復していた郎党たちが寄ってくる。瘴奸の体は熱を帯び、虚な目は潤んでいた。
「ただの寝不足だ」
瘴奸はそう言い張って立ち上がろうとする。弱味を見せたくないのか強がる瘴奸に、皆が対応に困った。迂闊に手を出せば殴られそうだが、かといって無理をさせてはならないと皆が及び腰になる。
2254誰より元気そうに振る舞っていた瘴奸だったが、粥を作っている最中に急にその場にへたりこんだという。手伝いをしていた白骨がそれを見つけて、大慌てで広間に運び込んだ。
「嘘だろ……」
腐乱が思わず声を漏らした。殺しても死なないと思っていた瘴奸が病で倒れて素直に驚いていた。
「大丈夫かよお頭」
既に回復していた郎党たちが寄ってくる。瘴奸の体は熱を帯び、虚な目は潤んでいた。
「ただの寝不足だ」
瘴奸はそう言い張って立ち上がろうとする。弱味を見せたくないのか強がる瘴奸に、皆が対応に困った。迂闊に手を出せば殴られそうだが、かといって無理をさせてはならないと皆が及び腰になる。
なりひさ
DOODLE⬜️🐜。征蟻党で風邪が流行る面影 その1 病は人を選ばないというが、外道と称される賊も例外ではなかった。特に温暖な地から移り住んだばかりの征蟻党たちにとっては、信濃の冬の寒さは大変に堪えた。
最初にくしゃみをしたのは誰だったか。その時は誰も気に留めなかったが、雑魚寝や鍛錬で長い時間を共にする征蟻党たちの間で病はあっという間に広がっていった。
征蟻党が寝起きする地頭館の広間は郎党たちで埋め尽くされていた。あちらこちらでくしゃみや咳が響き、発熱にうなされていた。かき集めた火鉢や衣で暖をとるものもいれば、発熱で汗を流す者もいた。
「マジで死ぬかも」
腐乱は嫌な汗をかきながら呟いた。その隣では白骨が唸っている。いくら強かろうが、病には勝てなかった。
1600最初にくしゃみをしたのは誰だったか。その時は誰も気に留めなかったが、雑魚寝や鍛錬で長い時間を共にする征蟻党たちの間で病はあっという間に広がっていった。
征蟻党が寝起きする地頭館の広間は郎党たちで埋め尽くされていた。あちらこちらでくしゃみや咳が響き、発熱にうなされていた。かき集めた火鉢や衣で暖をとるものもいれば、発熱で汗を流す者もいた。
「マジで死ぬかも」
腐乱は嫌な汗をかきながら呟いた。その隣では白骨が唸っている。いくら強かろうが、病には勝てなかった。