ltochiri
DONE「フェアリーテイル』のステージを舞台にしたほろ苦い話更新:10/26
おとぎの夢 ここは夢の中でのみ訪れることができる不思議な図書館。
ナイトブルーを基調にしたクラシックな内装は落ち着いた印象なのに、壁際に並んだ本棚は思わず圧倒されてしまいそうなほど多く満たされている。
そんな不思議な図書館を訪れたあんずはしかし、困っていた。
探していた本を見つけたのはいいのだけれど、それが手を伸ばしても届かない高さのところにあったのだ。
ハシゴや踏み台がどこかにないかとあたりを確認したが、見つからなくて途方に暮れている。
呪文を唱えて自然に落ちてきたら便利なのに、などと背表紙を見上げて眉間に皺を寄せているあんずはそれでも現実的な思考の女の子だから、せめて椅子を持ってこられたら届くかも、と思いついた。
1861ナイトブルーを基調にしたクラシックな内装は落ち着いた印象なのに、壁際に並んだ本棚は思わず圧倒されてしまいそうなほど多く満たされている。
そんな不思議な図書館を訪れたあんずはしかし、困っていた。
探していた本を見つけたのはいいのだけれど、それが手を伸ばしても届かない高さのところにあったのだ。
ハシゴや踏み台がどこかにないかとあたりを確認したが、見つからなくて途方に暮れている。
呪文を唱えて自然に落ちてきたら便利なのに、などと背表紙を見上げて眉間に皺を寄せているあんずはそれでも現実的な思考の女の子だから、せめて椅子を持ってこられたら届くかも、と思いついた。
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DONE髪の長い英智を見て何かを閃いたあんずのお話。※Xでのアンケート結果を参考にして書きました。公私混同御法度注意報「ご奉仕してあげよう、あんずちゃん……♪」
眉目秀麗なメイドにそんなふうに言われて、嬉しくならないはずはない。あんずはそう思っていた。
だからキラキラと輝く淡い金色の髪をリボンでひとつくくりにしている英智に、『潮干狩り』に参加した時に作ったメイド服を着てほしいと頼んでみたのだ。
中性的な顔立ちの英智のこと、絶対かわいいメイドさんになると見込んでのことだった。
しかし実際この目で見てみると、どうも――違和感がある。
台詞が俗っぽいせいなのか、それとも英智が生来もつ高貴さがそうさせるのか――とにかく、似合っていないのだ。
「うわぁ」
あんずは英智に失礼だとは思いつつ、若干どころかドン引きして苦笑した。相手が英智だろうと容赦なく、発案者が自分だろうと慢心せず、素直な反応を見せるのがあんずという女の子だった。
3577眉目秀麗なメイドにそんなふうに言われて、嬉しくならないはずはない。あんずはそう思っていた。
だからキラキラと輝く淡い金色の髪をリボンでひとつくくりにしている英智に、『潮干狩り』に参加した時に作ったメイド服を着てほしいと頼んでみたのだ。
中性的な顔立ちの英智のこと、絶対かわいいメイドさんになると見込んでのことだった。
しかし実際この目で見てみると、どうも――違和感がある。
台詞が俗っぽいせいなのか、それとも英智が生来もつ高貴さがそうさせるのか――とにかく、似合っていないのだ。
「うわぁ」
あんずは英智に失礼だとは思いつつ、若干どころかドン引きして苦笑した。相手が英智だろうと容赦なく、発案者が自分だろうと慢心せず、素直な反応を見せるのがあんずという女の子だった。
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DONEエアブーの展示その2です。※付き合ってない話 英あん編。零ちゃん視点です。仲良きことはうつくしきかな スタプロの事務所に入るなり、朔間零は己の耳を疑った。
「英智さん。例の件ですが、どうなりましたか?」
他人に尋ねているとは思えないほど、あんずの質問は唐突で、漠然としていた。とくに抱える仕事の件数が多そうな英智にとって、あんずが言う『例の件』を当てるのは難題だろう。
しかしそう考える零の予想を裏切るかのように、英智は答えに詰まることなく、あんずの質問に素早く返事をした。
「当日マネジメントリーダーをしていた彼に引き継いだよ。わかりやすい資料で助かったと言伝を頼まれていてね。君が評価されるのを聞くと僕も鼻が高いよ。あ、それからあんずちゃん。あれについてなんだけど……」
あれっていったいどれのことだ? そんな指示で伝わると思っているのか? と、零は内心毒づいたが、みなまで言わずともわかるらしく、あんずは英智の言葉にかぶせ気味にして応えた。
1640「英智さん。例の件ですが、どうなりましたか?」
他人に尋ねているとは思えないほど、あんずの質問は唐突で、漠然としていた。とくに抱える仕事の件数が多そうな英智にとって、あんずが言う『例の件』を当てるのは難題だろう。
しかしそう考える零の予想を裏切るかのように、英智は答えに詰まることなく、あんずの質問に素早く返事をした。
「当日マネジメントリーダーをしていた彼に引き継いだよ。わかりやすい資料で助かったと言伝を頼まれていてね。君が評価されるのを聞くと僕も鼻が高いよ。あ、それからあんずちゃん。あれについてなんだけど……」
あれっていったいどれのことだ? そんな指示で伝わると思っているのか? と、零は内心毒づいたが、みなまで言わずともわかるらしく、あんずは英智の言葉にかぶせ気味にして応えた。
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DONE英智と桃李のバースデー後の『英智デー』にあんずが呼ばれた世界線の英あんです。癒しの象徴 会場の部屋に到着した瞬間、眩しいものが見えた。
「英智さま、どこか凝ってるところはない?」
英智の肩に手を置いた桃李が背中から顔を覗かせて英智に訊ねていた。
さながら天使を描いた西洋絵画のようだ。あんずは感動で震えていた。このまま彫刻にしたい。あんずが芸術家ならこの場で作業を開始して取り掛かっていただろう。
持ち前の天真爛漫で溌剌とした声に相手を労わる気持ちを乗せたらそこには優しい世界ができあがる。英智に体重をかけないようにしながらそれでも少し子どもっぽく無邪気な素振りを桃李は残していて——とにかく素晴らしいシチュエーションなのだ。
「う〜ん、レッスンで身体は動かしているつもりだけれど。それでもどうしても肩が凝ってしまうね」
4393「英智さま、どこか凝ってるところはない?」
英智の肩に手を置いた桃李が背中から顔を覗かせて英智に訊ねていた。
さながら天使を描いた西洋絵画のようだ。あんずは感動で震えていた。このまま彫刻にしたい。あんずが芸術家ならこの場で作業を開始して取り掛かっていただろう。
持ち前の天真爛漫で溌剌とした声に相手を労わる気持ちを乗せたらそこには優しい世界ができあがる。英智に体重をかけないようにしながらそれでも少し子どもっぽく無邪気な素振りを桃李は残していて——とにかく素晴らしいシチュエーションなのだ。
「う〜ん、レッスンで身体は動かしているつもりだけれど。それでもどうしても肩が凝ってしまうね」
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DONE英智のバースデー後の『英智デー』にあんずちゃんが呼ばれなかった世界線の英あんです。健全です。バラの香りを味方につけて 朝の気配に、英智は目を覚ました。
白い光が、顔を照らす。その眩しさに顔を顰め、思わず寝返りを打っていた。
できることなら、もう少し眠っていたい。
上掛けを肩まで引っ張ると、バラの花の香りに包まれて、ますます心地いい気分になる。
時間的な余裕を欲しがるだなんて、贅沢な話だ。それだけ、穏やかな朝ということだろう。
まるで、夢みたいな世界だ。
横たわるベッドの隣には、温かな、自分以外の存在がある。
手を伸ばしたら触れられる距離に——同じベッドの中に、あの子が……。
ふと、英智は疑問を抱く。昨夜は何をしていたっけ。
——思い出せない。
英智が薄く目を開くと、横たわっているあんずの顔が間近に迫っていた。顔を覗き込むようにして英智の様子を伺っている。
3314白い光が、顔を照らす。その眩しさに顔を顰め、思わず寝返りを打っていた。
できることなら、もう少し眠っていたい。
上掛けを肩まで引っ張ると、バラの花の香りに包まれて、ますます心地いい気分になる。
時間的な余裕を欲しがるだなんて、贅沢な話だ。それだけ、穏やかな朝ということだろう。
まるで、夢みたいな世界だ。
横たわるベッドの隣には、温かな、自分以外の存在がある。
手を伸ばしたら触れられる距離に——同じベッドの中に、あの子が……。
ふと、英智は疑問を抱く。昨夜は何をしていたっけ。
——思い出せない。
英智が薄く目を開くと、横たわっているあんずの顔が間近に迫っていた。顔を覗き込むようにして英智の様子を伺っている。
ろじーにゃ
MOURNINGけっこう前の英あん。続き書かないけどなんかもったいないから供養英智くん長期戦のチェスみたいにじわじわあんずちゃんを絡めとる感じがすきだな〜ってのと、あんずちゃん何気にちゃんと気づいてるよね〜っていう。英智くん絶対ズ!の時から権力行使してお茶会してるよね!英あんの不思議な距離感すき「あんずちゃん」
ESビルの廊下を歩いていると、ふいに背後から”あの人”の声がした。反射で振り返れば、天祥院先輩がいつものように品のある柔らかい笑みをうかべてこちらへと近寄ってきた。気のせいか、かすかに穏やかな春の匂いがして、久しぶりに会う先輩の顔色が良さそうだった。...うん、すこし安心した。
「こんにちは、天祥院先輩。何かご用でしょうか?」
「こんにちは、あんずちゃん。今は急ぎの用事はあるかい?もし時間があれば、お茶に付き合ってくれないかな」
小首をかしげて私に尋ねる先輩は、少しいたずらっぽくてあどけない。以前は学院でよく見せてくれていた表情だけれど、今ではあまり見ることがない気がする。生徒会長よりも大きな立場に就いているからだと思う。
「春の紅茶と苺のミルフィーユを用意したんだ。マカロンもあるよ」
私を誘うように先輩が告げたラインナップに心がときめいた。先輩が用意してくれる紅茶とスイーツは感動するほど美味しくて大好きだから、ついつい頬がゆるんでしまう。そんな私の様子を見て、先輩がくすりと微笑んだ。...すこし恥ずかしい。
「ちょうど1時間ほど余裕があるので、ぜひお 1931