summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【勉強】
【飯P】学びたくば 殆ど使われない神殿の客間で、悟飯は今日も机に向かっていた。少し前までは鬱陶しいほどピッコロにまとわりついていたのに、ここ数日は、ちょっと頭を下げただけですぐ客間に閉じ籠ってしまう。
社会で普通に生きていくためには、武術にだけ打ち込んでいれば良いというものでもないのだろう。戦いの中に生きていた悟飯が、全うな大人になろうとしていることは、ピッコロにとっても喜ばしいことのはずだった。
日が暮れかけて、部屋は薄暗い。ピッコロがさっき様子を見に来た時と同じ位置にティーカップがあり、量は全く減っていなかった。
「ずいぶん根を詰めているな」
「まぁ、ちょっと……」
「体がなまっていやしないか?」
ああ、とかええ、とか、気のない返事をして、悟飯は顔も上げない。ピッコロは妙に苛立ち、本を取り上げた。悟飯がはじめて目線を寄越して、驚いた顔をする。
1924社会で普通に生きていくためには、武術にだけ打ち込んでいれば良いというものでもないのだろう。戦いの中に生きていた悟飯が、全うな大人になろうとしていることは、ピッコロにとっても喜ばしいことのはずだった。
日が暮れかけて、部屋は薄暗い。ピッコロがさっき様子を見に来た時と同じ位置にティーカップがあり、量は全く減っていなかった。
「ずいぶん根を詰めているな」
「まぁ、ちょっと……」
「体がなまっていやしないか?」
ああ、とかええ、とか、気のない返事をして、悟飯は顔も上げない。ピッコロは妙に苛立ち、本を取り上げた。悟飯がはじめて目線を寄越して、驚いた顔をする。
なっとう
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題「デート」
参加させていただきました。
悟飯の為に頑張りたいピッコロさんの話です。
デートしてません…すみません。
25〜30歳の未婚悟飯×無知ピッコロさんイメージで読んでいただければ幸いです。
三十路近くまでピッコロさんの片思いを引きずって拗らせた世界線の悟飯もいると思います。
※悟天が少し出ます
デート「二人きりで……か」
悟飯に思いを打ち明けられ"そういう関係"になってから数週間が経とうとしていたが今だに二人きりで会うことはなかった。
しかし突如として悟飯から「二人きりでお出かけしましょう」と誘われた時、何故だか胸がゾワゾワとした。
今までは二人でいる時なんて何も思わなかったのに。
胸にある違和感を拭えなく、話を聞いてもらうべく俺はとある人物の元へと向かった。
「で……僕にアドバイスでも聞きに来たの?ピッコロさん」
「あ、アドバイスというか……お前はこういうことに関して詳しいだろう?悟天」
悟飯の実の弟である悟天は兄とは違い、こう言ったことに関してはまるで興味津々だった。それにコイツは兄のことを深く理解しているはずだ。
2311悟飯に思いを打ち明けられ"そういう関係"になってから数週間が経とうとしていたが今だに二人きりで会うことはなかった。
しかし突如として悟飯から「二人きりでお出かけしましょう」と誘われた時、何故だか胸がゾワゾワとした。
今までは二人でいる時なんて何も思わなかったのに。
胸にある違和感を拭えなく、話を聞いてもらうべく俺はとある人物の元へと向かった。
「で……僕にアドバイスでも聞きに来たの?ピッコロさん」
「あ、アドバイスというか……お前はこういうことに関して詳しいだろう?悟天」
悟飯の実の弟である悟天は兄とは違い、こう言ったことに関してはまるで興味津々だった。それにコイツは兄のことを深く理解しているはずだ。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【デート】
先週の「花」を少し引きずっているようなお話……
【飯P】なにをすれば 駅前広場のベンチに腰掛けて、僕らは行き交う人々を眺めていた。晩春のそよ風は間延びして、午後の雑踏を殊更に穏やかなものに見せている。
「いっぱい買っちゃいましたね」
「花壇も鉢もたくさんある、まだ足りないくらいだ」
僕らの足元には、デンデに頼まれた花の苗と球根、それから種が、手提げ袋四つ分もある。見ている内にあれもこれもと手が伸びて、店を梯子し、思った以上に時間もかかってしまった。
メモにあった百日草は、ずいぶん迷った。「色は、二人の好きなものを」と書き添えてあったが、百日草の種だけで一つの棚が埋まっているほど、実にさまざまな色のものが置かれていた。
「これはどうだ?」
ピッコロさんが指したのは、濃いオレンジ、ピンク、黄色、白の花の写真の載ったパッケージだった。
1768「いっぱい買っちゃいましたね」
「花壇も鉢もたくさんある、まだ足りないくらいだ」
僕らの足元には、デンデに頼まれた花の苗と球根、それから種が、手提げ袋四つ分もある。見ている内にあれもこれもと手が伸びて、店を梯子し、思った以上に時間もかかってしまった。
メモにあった百日草は、ずいぶん迷った。「色は、二人の好きなものを」と書き添えてあったが、百日草の種だけで一つの棚が埋まっているほど、実にさまざまな色のものが置かれていた。
「これはどうだ?」
ピッコロさんが指したのは、濃いオレンジ、ピンク、黄色、白の花の写真の載ったパッケージだった。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【花】
🐌のこと、どんな生物より花が似合うお花の妖精さんだと思ってるので、普段から背景として花は出しまくってます。なので改めて「花」って言われるとなかなか悩んだ。
【飯P】花を摘む ピッコロの部屋を訪ねる悟飯は、いつも花を摘んで来る。雨に濡れた露草、朝焼けに塗られたひなげし、目に染みる紫のあざみ……摘んできては、勝手にガラス瓶に活けていく。
ピッコロは決して、飾られた花に触れることはなかった。触れずとも、何かにつけて花が目に入り、そのたび悟飯を思い出した。
今日持ち込まれたのは、小振りな笹百合だ。ピッコロは椅子に深く掛け、余分な葉を切り落とす悟飯を眺めている。はじめて会った時はほんの子供だったのに、来年にはハイスクールも卒業だという。大人になり、段々と、ここへも来なくなるのだろう。
「ピッコロさんって、花、あまり好きじゃないですか?」
「そんなことはない」
「だけど好きなら、摘むでしょう。手元に置いて、香りを感じて、最後まで開いて枯れていくのを……側で毎日、見ていたければ、好きな人は摘みます」
1606ピッコロは決して、飾られた花に触れることはなかった。触れずとも、何かにつけて花が目に入り、そのたび悟飯を思い出した。
今日持ち込まれたのは、小振りな笹百合だ。ピッコロは椅子に深く掛け、余分な葉を切り落とす悟飯を眺めている。はじめて会った時はほんの子供だったのに、来年にはハイスクールも卒業だという。大人になり、段々と、ここへも来なくなるのだろう。
「ピッコロさんって、花、あまり好きじゃないですか?」
「そんなことはない」
「だけど好きなら、摘むでしょう。手元に置いて、香りを感じて、最後まで開いて枯れていくのを……側で毎日、見ていたければ、好きな人は摘みます」
なっとう
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題[花]
参加させていただきました。
少し早いですが誕生日ネタです。
ピッコロさん(28)にまだ手を出せてないけど束縛したい欲が溢れてるタイプの悟飯(24)です。
※SH世界線
※悟飯(→→→→)→←ピ
※一瞬ブルマさん出ます
花 太陽が沈みかけている昼下がり、仕事を終えると急いで愛する師匠の元へと向かった。
コンコンとノックをすると見慣れた顔がひょこっと現れた。
「ピッコロさん!お待たせしました!!!!」
5月9日、ピッコロさんは今日が何の日か理解していない様子だ。「とりあえず中に入れ」そういうと部屋の中へと招き入れてくれた。
「急に家で待っていろなんて、一体何の用だ?」
キョトンとしたお顔の師匠はとても愛らしくて一生見ていたいなんて思ったけど、今日の目的を果たすのが先決だ。
僕は何も言わずにバサァとそれをピッコロさんに差し出した。花びら一枚一枚が淡い紫色に輝いたそれは束になってピッコロさんの方を向いた。
「これは?」
「ピッコロさん。今日が何の日か覚えてないんですか?」
1963コンコンとノックをすると見慣れた顔がひょこっと現れた。
「ピッコロさん!お待たせしました!!!!」
5月9日、ピッコロさんは今日が何の日か理解していない様子だ。「とりあえず中に入れ」そういうと部屋の中へと招き入れてくれた。
「急に家で待っていろなんて、一体何の用だ?」
キョトンとしたお顔の師匠はとても愛らしくて一生見ていたいなんて思ったけど、今日の目的を果たすのが先決だ。
僕は何も言わずにバサァとそれをピッコロさんに差し出した。花びら一枚一枚が淡い紫色に輝いたそれは束になってピッコロさんの方を向いた。
「これは?」
「ピッコロさん。今日が何の日か覚えてないんですか?」
なっとう
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題「爪」
幼少期🍚とピっさんの話(仙豆は無かったことになってます)
🍚がピさんの爪を食すシーンがあります。
🍚もピも恋愛はまだわからないけどお互いだいだいだ〜い好きです。
※軽い流血表現あり 3014
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【爪】
ぴの爪の美しさは毎回しつこくうるさく描写しまくってますが、今回はぴ視点寄りの三人称なので、あまり爪の美しさは描写してません🙄
【飯P】夏を抱いて爪を立つ 細く鋭い三日月が、天頂に頼りなく貼り付いている。空は橙と紫の間にあり、夜がすぐそこへ迫っていた。辺りには、若葉の青い匂いと梅雨前の湿った土の匂いが満ちている。連山を望む草原はほの暗く、叢立つ露草の青が、初夏の風に揺れていた。
腕の引っ掻き傷を眺められていることに気付いたのか、悟飯がピッコロに笑いかけた。
「……大丈夫ですよ、痛くもなんともなかったし」
「すまない、注意不足だった」
ここへ着いてすぐ、突然飛んできた虫を躱して悟飯は大きくよろめいた。咄嗟にそれを支えようと手を出したピッコロの爪が、悟飯の手首から肘まで届く長い傷を作ってしまった。
「注意不足は僕の方ですから……却って、ピッコロさんに怒られずに済んでよかったです」
1603腕の引っ掻き傷を眺められていることに気付いたのか、悟飯がピッコロに笑いかけた。
「……大丈夫ですよ、痛くもなんともなかったし」
「すまない、注意不足だった」
ここへ着いてすぐ、突然飛んできた虫を躱して悟飯は大きくよろめいた。咄嗟にそれを支えようと手を出したピッコロの爪が、悟飯の手首から肘まで届く長い傷を作ってしまった。
「注意不足は僕の方ですから……却って、ピッコロさんに怒られずに済んでよかったです」
なっとう
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題「卵」
参加させていただきました。
pixivからポイピクへ内容はそのまま移行させて頂きました。
飯(→→→→)→×(←)P
殴り書きのため細かい描写などは省かれております。
17歳の悟飯が恋心を自覚するまでの話。
両片思いに見せかけた片想いです。
ピッコロさんは悟飯を愛しているけど恋愛ではないので、今後悟飯から恋愛を学ぶと思います。 2109
なっとう
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題「写真」
初参加させていただいた作品です。
pixivからポイピクへ内容そのまま移行させていただきました。
タイトルが全て
ブウ編後の悟飯とピッコロさん
悟飯がどうやって媚薬を入手したなどの細かい設定は省いております。カプセルはブルマさんから頂いたもの。
この後R18展開になる予定ですが書ききれませんでした。
※悟飯がヤンデレ
※キャラ崩壊 3473
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【夢】
毎週ありがとうございます🥹
【飯P】夢にうつつに君が手の這う 神殿の窓には、鍵がかからない。本来、そう簡単に人が訪れる場所ではないためだ。
それをいいことに、夜更けに悟飯が訪れ、ピッコロの部屋へ……寝台へ忍び込むことは、ままあった。
「……何をしている?」
「眠れなくて……隣で眠らせて下さい。隣に誰かいると、よく眠れるので」
寄り添って眠るだけ……それなら、ピッコロも目を潰れる。
しかし悟飯は布団に潜り込むたび、執拗に身体に触れてくる。じれったいほど弱く、手のひらが腹から背へ。あばらを丁寧に辿り、胸を這い上がる。指先で鎖骨をなぞり、首筋の薄い膚に熱を灯しながら行き来する。
腰骨の頂点から太腿へ滑り、膝までゆっくり撫で下ろされる。脚の内側を丁寧に辿り、また腰の高さまで戻る。
1664それをいいことに、夜更けに悟飯が訪れ、ピッコロの部屋へ……寝台へ忍び込むことは、ままあった。
「……何をしている?」
「眠れなくて……隣で眠らせて下さい。隣に誰かいると、よく眠れるので」
寄り添って眠るだけ……それなら、ピッコロも目を潰れる。
しかし悟飯は布団に潜り込むたび、執拗に身体に触れてくる。じれったいほど弱く、手のひらが腹から背へ。あばらを丁寧に辿り、胸を這い上がる。指先で鎖骨をなぞり、首筋の薄い膚に熱を灯しながら行き来する。
腰骨の頂点から太腿へ滑り、膝までゆっくり撫で下ろされる。脚の内側を丁寧に辿り、また腰の高さまで戻る。
summeralley
DOODLE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【卵】
本来の慣用句は「料理」じゃなくて特定の一品だけど、字面があまりにも浮いていたので……
【飯P】卵を割らねば 枝葉の向こうに見える空は、傾いた陽で少しずつ色を変じてきていた。
「ずいぶん静かだったな、今日は」
並んで歩く師弟を、やわらかい風が追い越していった。夜が近付くと、春先とはいえかすかに冷たさを感じる。昼の名残が徐々に陰りを見せる中、足音が静寂を塗り替えていく。
悟飯は答えられず、かわりにため息を逃がした。胸の裡にはたくさんの思いが渦巻いているのに、どれも言葉にはなってくれない。抱えている気持を伝えたいが、どのような表現ならば的確なのか、正しく伝わるのか、分からなかった。
「考え事か?」
穏やかな問いかけが、逆に悟飯をかき乱す。優しげな声音が今は、心を波立てるものとなっていた。
「……はい、ちょっと」
1552「ずいぶん静かだったな、今日は」
並んで歩く師弟を、やわらかい風が追い越していった。夜が近付くと、春先とはいえかすかに冷たさを感じる。昼の名残が徐々に陰りを見せる中、足音が静寂を塗り替えていく。
悟飯は答えられず、かわりにため息を逃がした。胸の裡にはたくさんの思いが渦巻いているのに、どれも言葉にはなってくれない。抱えている気持を伝えたいが、どのような表現ならば的確なのか、正しく伝わるのか、分からなかった。
「考え事か?」
穏やかな問いかけが、逆に悟飯をかき乱す。優しげな声音が今は、心を波立てるものとなっていた。
「……はい、ちょっと」
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【写真】
【飯P】ファインダー越しに 「……こんな感じだったかなぁ」
僕は机の上の一枚の写真を見つめ、ため息をついた。
「きちんと撮れているんじゃないのか?」
横合いからピッコロさんが声をかけ、写真を手にとって眺める。
物置で遊んでいた悟天が、おじいちゃんの古いカメラを見つけたのは先週だった。ずっしりと重量感のある、フィルム式のカメラだ。すぐさま「みんなの写真を撮る!」とカメラを持ち出した弟へ付き添って、僕もあちこち出歩いた。
誰も彼も、古いカメラを面白がり、快く撮らせてくれた。女性陣には、化粧を直すから待てと言われたが……それでも、断られることはなかった。そして、「現像したら見せに来い」と全員に言われた。撮ったものがその場ですぐ見られないというのは、却って新鮮だ。
1786僕は机の上の一枚の写真を見つめ、ため息をついた。
「きちんと撮れているんじゃないのか?」
横合いからピッコロさんが声をかけ、写真を手にとって眺める。
物置で遊んでいた悟天が、おじいちゃんの古いカメラを見つけたのは先週だった。ずっしりと重量感のある、フィルム式のカメラだ。すぐさま「みんなの写真を撮る!」とカメラを持ち出した弟へ付き添って、僕もあちこち出歩いた。
誰も彼も、古いカメラを面白がり、快く撮らせてくれた。女性陣には、化粧を直すから待てと言われたが……それでも、断られることはなかった。そして、「現像したら見せに来い」と全員に言われた。撮ったものがその場ですぐ見られないというのは、却って新鮮だ。
summeralley
DOODLE荒野の飯P。#飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
お題【月】
【飯P】月が落ちる時 荒野の夜に、月はなかった。
何気なく「この荒野からは、月が見えませんね」と話した悟飯に、ピッコロは興味がないといった様子で「軌道が変わったのではないか」と答えた。どんな本でもそんな話は読んだことのない悟飯だったが、子供を荒野に放り出す大人も、戻ってくるなり毎日ぼろぼろになるまで修業に取り組ませる大人も、そのくせ時たま、直視を躊躇うほど優しく笑いかけてくれる大人も、やはり本には載っていなかった。衛星の軌道が変わるくらい、大した現象でもないかもしれないと自分を納得させていた。
高台に熾した焚火の側に腰を下ろし、悟飯は疲れた身体を休めていた。荒野に覆い被さる夜空は晴天で、砕いた氷を撒いたような星が瞬いている。
1683何気なく「この荒野からは、月が見えませんね」と話した悟飯に、ピッコロは興味がないといった様子で「軌道が変わったのではないか」と答えた。どんな本でもそんな話は読んだことのない悟飯だったが、子供を荒野に放り出す大人も、戻ってくるなり毎日ぼろぼろになるまで修業に取り組ませる大人も、そのくせ時たま、直視を躊躇うほど優しく笑いかけてくれる大人も、やはり本には載っていなかった。衛星の軌道が変わるくらい、大した現象でもないかもしれないと自分を納得させていた。
高台に熾した焚火の側に腰を下ろし、悟飯は疲れた身体を休めていた。荒野に覆い被さる夜空は晴天で、砕いた氷を撒いたような星が瞬いている。
summeralley
DONEまだくっついてない飯P。#飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
お題【秘密】
【飯P】手の中の秘密 「ピッコロさん。僕に秘密にしてることって、ありますか?」
午後おそい光に満ちた僕の部屋で、ピッコロさんは机の本を見るともなしに捲っていた。窓から吹き込む初春の風はまだ少し冷たいが、ピッコロさんのマントを揺らすほどの強さはない。昼というには遅く、夕方というには早い、なんとも間延びした時間帯だ。
「……話したら、秘密ではなくならないか」
「まぁ、確かに……じゃあ、そろそろ白状してもいいかなっていう秘密」
ピッコロさんは本を閉じて、少し思案する。窓からのやわらかい光がその横顔を照らし、よりいっそう思慮深い印象にしていた。
「人に話させる前に、お前はあるのか?」
「僕は、いーっぱいありますよ。荒野でマント踏んづけて汚したのに、知らん振りしてたのとか……」
1643午後おそい光に満ちた僕の部屋で、ピッコロさんは机の本を見るともなしに捲っていた。窓から吹き込む初春の風はまだ少し冷たいが、ピッコロさんのマントを揺らすほどの強さはない。昼というには遅く、夕方というには早い、なんとも間延びした時間帯だ。
「……話したら、秘密ではなくならないか」
「まぁ、確かに……じゃあ、そろそろ白状してもいいかなっていう秘密」
ピッコロさんは本を閉じて、少し思案する。窓からのやわらかい光がその横顔を照らし、よりいっそう思慮深い印象にしていた。
「人に話させる前に、お前はあるのか?」
「僕は、いーっぱいありますよ。荒野でマント踏んづけて汚したのに、知らん振りしてたのとか……」
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【眼鏡】
【飯P】焦点の先 常緑樹の木立は冬でも青々として、木漏れ日をちらつかせている。湧き水に濡れた手を払いながら振り向いたピッコロさんは、僕を見るなり怪訝な顔をした。何か言われる前に口を開く。
「すっかり視力が落ちて……とうとう眼鏡になりました」
濡れた口元から、首まで水の筋が延びて光っている。怒られるかな、という予想に反し、ピッコロさんは静かに頷いた。
「勉学に打ち込んでいたからだな」
「最近まで、なんとか裸眼で暮らせてたんですが」
眼鏡を作ってはじめて、どれほど視力が落ちていたか分かった。そして眼鏡をかけてはじめて、どれほど世界がくっきりと鮮やかだったかを思い出した。この人の目が、こんなにも美しかったことも。
ふと、ピッコロさんの面差しが困惑に染まる。
1884「すっかり視力が落ちて……とうとう眼鏡になりました」
濡れた口元から、首まで水の筋が延びて光っている。怒られるかな、という予想に反し、ピッコロさんは静かに頷いた。
「勉学に打ち込んでいたからだな」
「最近まで、なんとか裸眼で暮らせてたんですが」
眼鏡を作ってはじめて、どれほど視力が落ちていたか分かった。そして眼鏡をかけてはじめて、どれほど世界がくっきりと鮮やかだったかを思い出した。この人の目が、こんなにも美しかったことも。
ふと、ピッコロさんの面差しが困惑に染まる。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【ぬいぐるみ】
【飯P】真夜中に目覚めた時は 窓から覗く冬の三日月は、刃のように鋭かった。されども部屋の中は暖炉にあたためられ、燭台の灯りも手伝いほの明るい。
ピッコロはベッドに掛け、サイドテーブルの隅にある小さなぬいぐるみを、見るともなしに眺めていた。
「これ、まだ持ってくれてるんですね」
悟飯はテーブルへ歩み寄り、ぬいぐるみを片手に持ち上げた。ピッコロはきまり悪そうに目を逸らし、捨てる理由がなかっただけだ、と呟く。手の中にあるぬいぐるみと、そのようなものに興味はないとでもいうように窓の外に目を遣ったピッコロとを見比べ、悟飯は声に出して笑った。
「ずーっとそんな風に言ってますよ。もう何年も」
「そんなことはない」
ピッコロの返答は実に素っ気ない。だが、悟飯が握っていたぬいぐるみを取り上げて、テーブルの隅ではなく自分の膝の上へ転がした。
1351ピッコロはベッドに掛け、サイドテーブルの隅にある小さなぬいぐるみを、見るともなしに眺めていた。
「これ、まだ持ってくれてるんですね」
悟飯はテーブルへ歩み寄り、ぬいぐるみを片手に持ち上げた。ピッコロはきまり悪そうに目を逸らし、捨てる理由がなかっただけだ、と呟く。手の中にあるぬいぐるみと、そのようなものに興味はないとでもいうように窓の外に目を遣ったピッコロとを見比べ、悟飯は声に出して笑った。
「ずーっとそんな風に言ってますよ。もう何年も」
「そんなことはない」
ピッコロの返答は実に素っ気ない。だが、悟飯が握っていたぬいぐるみを取り上げて、テーブルの隅ではなく自分の膝の上へ転がした。
summeralley
DONEお題【寿命】 #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負●お題の通りの、二人の寿命の違いに起因する死別のお話ですので、そのあたりが苦手な方は避けてね●
【飯P】インクが尽きるまで 悟飯が差し出したのは、一本の万年筆だった。一目でそれと分かる立派なもので、濃い紫の軸に、金であろうペン先がよく映えている。
「これ、受け取ってください。昔、初任給で買って……ずっと使ってたんですけど」
初夏の陽は暮れかけて、窓の外には、気の早いひぐらしの声が響いていた。
「あまり書き物はしないが……」
「僕が死んだあと、僕のこと、思い出したら書いてほしいんです。花を見て、雨が降って、海へ行って、何かの拍子に思い出したら……一緒にこんなことしたとか、言っていたとか……僕がどれほど、ピッコロさんのこと、好きだったか」
悟飯の提案に、思わず動揺を露にしてしまう。いつか向き合うべきなのに、先延ばしにしてきた問題だった。悟飯は先に死出の旅へ踏み出し、おれは現世へ残される。
1956「これ、受け取ってください。昔、初任給で買って……ずっと使ってたんですけど」
初夏の陽は暮れかけて、窓の外には、気の早いひぐらしの声が響いていた。
「あまり書き物はしないが……」
「僕が死んだあと、僕のこと、思い出したら書いてほしいんです。花を見て、雨が降って、海へ行って、何かの拍子に思い出したら……一緒にこんなことしたとか、言っていたとか……僕がどれほど、ピッコロさんのこと、好きだったか」
悟飯の提案に、思わず動揺を露にしてしまう。いつか向き合うべきなのに、先延ばしにしてきた問題だった。悟飯は先に死出の旅へ踏み出し、おれは現世へ残される。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【林檎】
【飯P】毒りんごの木立で よく繁った枝葉の間に、瑞々しいりんごがいくつも生っている。翠葉を透かして見る秋空は涼やかで、流れる雲もひつじの群れのようだ。
思わず、美味しそう、と溢した僕の視線に気付くと、ピッコロさんも目線を上げた。僕にくれるつもりなのか、りんごの中からよく熟れていそうな一つを捥ぎ取って眺めている。
「……荒野でピッコロさんがくれたのは、毒りんごでしたよね」
「なんだ、藪から棒に」
果樹園ではなく、山中の一帯に自生しているものだから、片手に載せて余裕がある程度の小さなりんごだ。
「毒とは失礼なことだな、手助けしてやったというのに」
「いいえ、あれは毒でした。あの時から僕は、りんごをくれた人に恋い焦がれて、今も患っているんですから」
1973思わず、美味しそう、と溢した僕の視線に気付くと、ピッコロさんも目線を上げた。僕にくれるつもりなのか、りんごの中からよく熟れていそうな一つを捥ぎ取って眺めている。
「……荒野でピッコロさんがくれたのは、毒りんごでしたよね」
「なんだ、藪から棒に」
果樹園ではなく、山中の一帯に自生しているものだから、片手に載せて余裕がある程度の小さなりんごだ。
「毒とは失礼なことだな、手助けしてやったというのに」
「いいえ、あれは毒でした。あの時から僕は、りんごをくれた人に恋い焦がれて、今も患っているんですから」
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【指輪】
なんとか書いたよ、まだくっついてない飯P
【飯P】金属の温度 神殿の奥、久々に訪れたピッコロさんの部屋の机には、見慣れないものが沢山積んであった。歯車にネジ、鍵、コインやメダルのようなもの。大小様々なナイフ、万年筆、文鎮、動物や乗り物を象った無数の置物のようなもの。どれも片手に載るほどの大きさで、どうやら金属で作られているという点で共通している。
じろじろと無遠慮に眺めていると、ピッコロさんはややきまり悪そうに口を開いた。
「昔、お前に服を出してやっただろう? 服は簡単だが、硬い素材の小さなものが得意ではないから、色々と試しているんだ、最近」
「じゃあこれみんな、ピッて出したんだ」
僕は感心して、ひとつひとつをあらためた。手にとってみると、どれも冬の空気にすっかり冷やされている。動物の置物はちょっと粗く大きめのものから、鱗まで美しく整った爬虫類まで様々だ。この粗いものが、試しはじめた頃のものなのだろう。
2700じろじろと無遠慮に眺めていると、ピッコロさんはややきまり悪そうに口を開いた。
「昔、お前に服を出してやっただろう? 服は簡単だが、硬い素材の小さなものが得意ではないから、色々と試しているんだ、最近」
「じゃあこれみんな、ピッて出したんだ」
僕は感心して、ひとつひとつをあらためた。手にとってみると、どれも冬の空気にすっかり冷やされている。動物の置物はちょっと粗く大きめのものから、鱗まで美しく整った爬虫類まで様々だ。この粗いものが、試しはじめた頃のものなのだろう。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【お風呂】
飯Pが同棲している都合のいい時空
決定的なことはしてないけど性的な空気のシーンはほんの少しだけあります。
【飯P】ぬるい水にあなたと 子供の頃、真夏のこんな暑い日は庭にビニールプールを出して遊んだ。円いかたちの青いプールで、壁面には賑やかな魚や貝の絵がプリントされていた。水ははじめ暴力的に冷たく、だが陽射しにさらされる内にぬるく温まっていく。ビニールの匂いがかすかに立ちのぼって、なんとも言えない「夏の気分」を掻き立てたものだ。
暑さからふとそれを思い出し、ぬるい水を溜めた浴槽は、ビニールプールとは様子が違っていた。手足の長いピッコロさんのために、この家の浴槽は大きいものを選んでいた(なのに、ピッコロさんは全く浴槽に浸からない。暮らしはじめてすぐ湯あたりしてから、シャワーで済ませるようになってしまった)。さりとてビニールプールの広さには遠く及ばず、白いプラスチックは無愛想で固かった。そんなものへせっせとぬるい水を溜めている僕を、朝から神殿へ出掛けているピッコロさんが見たら、きっと呆れただろう。
2624暑さからふとそれを思い出し、ぬるい水を溜めた浴槽は、ビニールプールとは様子が違っていた。手足の長いピッコロさんのために、この家の浴槽は大きいものを選んでいた(なのに、ピッコロさんは全く浴槽に浸からない。暮らしはじめてすぐ湯あたりしてから、シャワーで済ませるようになってしまった)。さりとてビニールプールの広さには遠く及ばず、白いプラスチックは無愛想で固かった。そんなものへせっせとぬるい水を溜めている僕を、朝から神殿へ出掛けているピッコロさんが見たら、きっと呆れただろう。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【口笛】
【飯P】ひとさらい 休日にも関わらず、僕は朝から大学の研究室に籠っていた。論文が行き詰まり、もう何週間も休みらしい休みもとれず過ごしている。
季節はすっかり春で、いつの間にか空調を入れる必要もなくなっていた。眠気を誘われそうになり、窓を開けようかと考えたその時、まさにその窓を外から叩く音がする。三階の研究室だ、そんなことが出来る人はそう多くない。僕は早足に窓へ近付いて、鍵を外す。
まさしく、今一番会いたかった人が、ピッコロさんがそこにいた。
「休みの日にまで、ご苦労なことだな」
「嬉しいな、よくここにいるって分かりましたね」
「たまたま上を通ったら、窓からお前が見えた」
中へどうぞ、と促したが、断られる。研究室は狭く、所属する学生がみんな荷物を好き勝手に積んで、まるで物置のようだ。客観的に見て、積極的に入りたい様相ではないし、寛げそうにもなかった。
2352季節はすっかり春で、いつの間にか空調を入れる必要もなくなっていた。眠気を誘われそうになり、窓を開けようかと考えたその時、まさにその窓を外から叩く音がする。三階の研究室だ、そんなことが出来る人はそう多くない。僕は早足に窓へ近付いて、鍵を外す。
まさしく、今一番会いたかった人が、ピッコロさんがそこにいた。
「休みの日にまで、ご苦労なことだな」
「嬉しいな、よくここにいるって分かりましたね」
「たまたま上を通ったら、窓からお前が見えた」
中へどうぞ、と促したが、断られる。研究室は狭く、所属する学生がみんな荷物を好き勝手に積んで、まるで物置のようだ。客観的に見て、積極的に入りたい様相ではないし、寛げそうにもなかった。
summeralley
DONE #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題「マント」
【飯P】雨音の下、マントの内 枯れ果てているように見える冬野にも、目を凝らせば水仙や冬わらびの緑が点在している。一度目につけば、周りが寂しい枯野であるが故に、より一層その生命力でもって視線を引き付ける。
久々の手合わせの合間、僕とピッコロさんは大きく抉れた岩壁の内に腰掛けていた。休憩といっても、北風に嬲られては余計に体力を奪われるばかりだ。ここにいれば他より少しは風を避けられる。厚い雲に覆われた空は重苦しい灰色で、冬の割に空気も湿っていた。
「お前、少し腕が落ちたんじゃないか」
ピッコロさんが侮るように言うので、僕はむっとする。確かに、ハイスクールへの入学を控え、以前ほど鍛練に打ち込めていない……とはいえ、今の手合わせでは特段押されてもいなかったはずだ。
2951久々の手合わせの合間、僕とピッコロさんは大きく抉れた岩壁の内に腰掛けていた。休憩といっても、北風に嬲られては余計に体力を奪われるばかりだ。ここにいれば他より少しは風を避けられる。厚い雲に覆われた空は重苦しい灰色で、冬の割に空気も湿っていた。
「お前、少し腕が落ちたんじゃないか」
ピッコロさんが侮るように言うので、僕はむっとする。確かに、ハイスクールへの入学を控え、以前ほど鍛練に打ち込めていない……とはいえ、今の手合わせでは特段押されてもいなかったはずだ。