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    iori_kakei

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    iori_kakei

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    自覚する五の五乙両片思い。書きかけです。五が自覚するお話なので、乙の出番は基本、回想や電話のみ。一年生トリオが準主役的な。

    #五乙
    fiveB

    sky-high 夢を見ている。
     あの日、可愛い教え子であり、新しく生まれたばかりの特級呪術師を送り出す景色に、またこの夢かと五条は眠っているにも関わらず盛大な溜め息を吐いた。

    『向こうに着いたらミゲルの言うことをよく聞くように。こっちとは勝手が違って大変だろうけど今の憂太なら大丈夫』
    『わかりました。……あの…………え、と……』
    『うん? なあに』
    『…………いえ……。がんばります』
    『んんん? まあ、ほどほどでいいよ。無理のないようにね』
    『はい……』
     新学期が始まってすぐのころ。同級生たちと青春を謳歌する暇もないほど詰め込まれた任務に疲労困憊な乙骨憂太は、恩師であり導き手たる五条悟からの個人依頼を請け負うことになった。
     見た目も一新し、頑張るぞと意気込んでいたところでの海外任務。
     せっかく特級呪術師に返り咲いたのだからと、深い信頼を寄せる同級生らにイメージチェンジを進められ、野暮ったく伸びた前髪を左右に分けて額を出せば清潔感あふれる優男が今は台無しなおどろおどろしい雰囲気を背負う。
     最近になって慣れてきた前髪のセットは今日も上出来で。しかし、柔らかく垂れた大きな双眸にぶら下がった濃い隈と、じめっとした重苦しい空気を背負う姿は見送りに来た五条悟と等級の呪術師だとは到底見えず。
     物言いたげな様子に気付いていても、本人が言葉にしない限り、初めての海外でさみしいのだろうと五条は小さく笑う。
    『まあまあ、うまくいけばとんぼ返りになるでしょ。いろいろと楽しんでらっしゃいな』
     親指を立ててサングラス越しにとびっきりのグットルッキングガイスマイルをお見せすれば、周囲から黄色い悲鳴がひっきりなしに響く。
    『……そう、ですね。はい、……行ってきます』
    『行ってら~』
     ぎこちない笑みを浮かべる乙骨の肩をぺしぺしと叩いて五条なりに元気を注入する。
     一年前まで栄養失調だった乙骨は、個性豊かで騒がしくも世話好きな同級生らや五条の餌付けによってにょきにょきと上へ育った結果、今や五条の素敵な鼻先に小さく丸い頭がたどり着く。これ以上は伸びないで欲しいなー……などと勝手に思っていた五条の考えが呪いにでもなったのか、乙骨の上への成長は止まった。
     残念ながら横の厚みを持たせることは出来ず、肉付きの悪さと控えめな性格が余計に儚さを演出する。
     さらりと流れてきた前髪を細くも武骨な指先でそっと耳に掛ける仕草がしどけなく見え、五条は背筋を伸ばしてからぐるりと大きく周囲を見渡す。忙しく行き交う群れの中で足を止め、ねっとりとした視線を向けてくる幾人かをサングラス越しに鋭く見遣れば、ただ人ではない気配と凍てつく眼差しによって乙骨へ注がれていた分不相応な熱は消滅していく。
     やれやれと一息吐いた五条はすぐ真下よりじっと注がれる純粋な眼差しに気付き、片手を振りながら教師らしく朗らかな笑みを向けた。
    『先生も、ご無理をなさらず。お元気で』
     ぎこちなさが消え、ふんわりと柔らかく穏やかな微笑みに五条は即答できなかった。
     軽口を返すつもりでいたのに、深い藍色の双眸がゆらゆらと綺麗な水の膜を薄く張って揺れるさまを見て、こくりと言葉を飲み込む。
     大丈夫だよ――。告げるつもりで唇を開くより先に乙骨は深く頭を下げ、五条の応えを待たずに踵を返して保安検査場へするすると入場してしまった。

     ふつり、映画のネガフィルムが途絶えてしまったかのように訪れた暗闇へ五条は忌々しく舌打ちを鳴らす。
     暗闇の世界へ届くけたたましい音へ嘆息し、悶々とした鬱屈を抱えながらゆっくりと瞼を持ち上げていく。
     晴れ渡った青空を埋め込んだ双眸が移すの景色は見慣れた寝室の天井だ。
     乙骨を見送ったのは数か月前。
     定期連絡は届くが、進捗の有無だけを綴った一行は温度のない言葉の羅列。むしろ、案内役のミゲルから届くメッセージの方がよほど感情豊かだろう。
     乙骨がいない日々は妙に味気なくて、やはりミゲルだけに依頼すべきだったかと首をひねった回数は少なくない。今は新たな火種と、いよいよ隠さなくなった上層部の動きで毎日がジェットコースターだ。
     日々が慌ただしくなり、乙骨からの定期連絡へ即答できなくなった辺りから夢を見始めた。まるで、忘れてくれるなと言われているように思え、ベッドから起き上がった五条は苦笑する。
     保管場所から消えた親友の躯。
     今になって高専へ情報が下り始めた特級呪物の存在。
     両面宿儺を宿した虎杖を死刑にしようとする上層部。
     親代わりになって育てた伏黒恵を狙う禪院家。
     何やらきな臭い動きをする加茂家。
     世継ぎを作れとせっついてくる実家。
     一つでも面倒だと顔を顰める案件が手を繋いでラインダンスをしている状況に五条は深い溜め息を吐く。
     表面化する間際に力の全容を知られていない乙骨を海外へ向かわせたのは保険だ。もし、自分が動けない事態に陥れば、乙骨が切り札になると直感しての一手だった。こうして表面化した今、正しい判断だと自分を褒めてやる傍ら、あの子が隣にいてくれたなら出来ることも多かっただろうと悔やむ気持ちもある。
     欝々と思考の沼にはまりそうになり、パンっと、五条は勢いよく両手で頬を打った。
    「よし、今日も素敵にグットルッキングガイな五条大先生のお目覚めだ!」
     気を取り直しておちゃらけてみても、頭の隅に踵を返す乙骨の顔が張り付く。
     何を言い淀んでいたのかわからないままなのが心に影を落としていた。



     カーンっと、甲高い金属音が絶え間なく校庭で響き渡る。
     うおー! どりゃー! 落ちろやあっ! 年頃の乙女らしからぬ罵声を空へ吐き捨てる元気な一年生の紅一点を日陰から眺めていた五条は、視線を上へと持ち上げた。
     空中では伏黒が多数の札を飛ばして作った式神がひらひらと地上より打ち上げられる釘から身を翻している。
     飛行系の呪霊へ正確に釘を打ち込めるよう釘崎へ課したものの、伏黒の式神操作能力が上なのか、それとも式神が遊んでいるのか一向に当たらない。
     今の釘崎は怒髪天を衝くという言葉が似合いだ。
     鳥が飛行する高度まで距離があると、どうにも目測を誤るらしい釘崎には打ってつけの授業だろう。ついでに伏黒の式神操作能力も高まる。
     問題はこいつだと、隣でひたすらスクワットをしている虎杖を横目に一瞥し、今日はどうしようかねえと呟く。
    「そういやーさ。最近の先生、元気がねぁーね」
     んっしょ、んっしょと元気にスクワットをしながら虎杖は顔を向けずに告げる。
    「えー? そんなことないよー。なんたって五条先生はグレイトなティーチャーだしぃ。ちょー元気よ?」
    「ふぅん……。でも、元気ねぁーね」
    「ねぁーねって……」
     猫みたいな語尾だと笑えば虎杖は足を止め、大きく瞬いてから照れ臭そうにほんのり赤く染まった頬を指先で掻いた。
    「あ、あー……うっかり方言出ちまった。ははっ」
    「方言って、宮城弁? かーわいーじゃーん」
     なんとも優しい響きの方言で可愛いなあと笑っていると、気になったのか伏黒と釘崎が日陰へ近付いてきた。なに照れてんだよ、機嫌の悪い釘崎が遠慮なく肘で虎杖の脇腹をどつく。
     無防備になっているところへ与えられた攻撃にくぐもった声を漏らす虎杖を横目に五条はぼんやりと青空を見上げる。
     蒼穹の彼方でふにゃりと柔らかく笑む少年の幻が見えた。
    「……方言か。そう言えば聞いたことないな」
    「ええ!? 先生、方言聞いたことねえの? 今時どこででも聞けるっしょ」
     小さな呟きを耳ざとく聞き取った虎杖が大袈裟に驚く後ろで、正確に意味を察してしまった伏黒もまた穏やかな口調で微笑む少年を思い出す。否、伏黒にとって彼は少年ではなく青年だ。五条の中ではいつまで経っても少年なままだと再認識し、あえて訂正を告げずにいる。
     伏黒にとって親代わりの五条とは長い付き合いだ。ゆえに、ここ数ヶ月の変化は奇異で奇跡に思えた。
     傲岸不遜が服を着て傍若無人に歩く。そんな男が物思いに耽るなど不気味で、理由を探れば時期を遡るだけでおおよそ察してしまう自分に伏黒は天を仰ぐ。五条が何を考えて乙骨を海外へ行かせたのか。あいにく伏黒にはわからない。特級呪術師同士で依頼など聞いたこともなく、それこそ乙骨でなければならない理由へ思考を巡らせるなど真っ白な生クリームで覆われたケーキの中に何の果物が入っているのか触れずに当てるようなものだ。
     想像は出来ても正解かは実際にフォークを差し込むまでわからない。中身を知ろうとする好奇心が湧く余裕など今の伏黒にはない。よって、水分補給を終えた釘崎へ声を掛け、先ほどまで行っていた訓練の続きへ意識を集中する。釘崎の怒声はうるさいものの、五条の呟きを聞き続けるより健全だと一人納得し、取り出した札へ呪力を練り込んでいく。
    「あの子の両親は少しなまっていたかな。でも、あの子は綺麗な標準語なんだよね。ちょっと幼さが残る感じ。言葉を知らないわけでもないし……なんでなまりがないんだろうねえ」
    「あの子……?」
    「うーん。あの子たちと話をする時もなまってなかったし……なんでだろうね」
    「あの子たち?」
    「はぁ……。一行で終わる業務報告みたいな連絡じゃなくてさあ。もうちょっと、こう……今日は何を見たとか、やったとか、感じたとか。そういうのもあっていいんじゃないの? たまには電話してくれてもいーじゃーん? あの子たちとはよく電話もしているようだしさ。なんで僕にはしてくれないんだろ」
     本格的にぐちぐちと不満を口にする五条を見る虎杖の頭上にはいくつも疑問符が浮かぶ。
     伏黒ならわかるだろうか。顔を向ける虎杖の双眸に、絶対に話しかけるなと無言の圧を放つ背中が見えた。
    「なんて言うかさー……。あの子にとって僕は他の皆よりちょーっと特別だと思っていたんだよねえ」
     すべきことへの指示がない以上、虎杖は聞き手に徹するしかなく。止まらない五条の呟きを耳にスクワットを再開しながら、うーん? 訝し気に唸りながら首を傾げる。
     五条の愚痴に、何かを思い出せそうな中途半端なモヤモヤが続く。ストレスは筋肉によろしくない。頭を振り、せっせとスクワットを続ける。今日も大臀筋と大腿四頭筋が歓声を上げている。なんだったらハムストリングがさらなる負荷を申し出ているようで、モヤモヤした気分が小さくなった。やはり筋肉はいいと、鍛える快感に虎杖の思考は冴え渡っていき、結果、消滅するはずのモヤモヤからキラリと光る答えが転げ落ちた。
    「あ……」
    「でさー。あの子が友達大好きなのは知っているけど――」
    「そっか。面倒な女じゃん」
    「……ん?」
     ぽつり、虎杖の呟きに離れた位置で切磋琢磨している伏黒と釘崎のが背を向けたまま立ち止まる。
     なんだ。何を言おうとしている。わかるわけねえだろ。でも、面倒な女って意味わかりたくねえし。同意するがこのまま放置していいのか。互いに視線だけで言葉と不安を交わし、逃げるべきか残るべきか。嫌な汗が二人のこめかみを伝う。
     スクワットを続けながら、虎杖はすっきりした面持ちで朗らかな笑みを五条へ向けた。
    「先生さー、その子のこと、めちゃくちゃ大好きだよな。すっげぇ好きってのは伝わったからさ、うじうじしてねえで、電話架けてみればいいじゃん」
     まるで、朝ご飯に食べたおかずの内容を伝えるかのような気軽さを前面に押し出す虎杖は、せんせーも恋したらフツーの男なんだなあーと楽しげに笑う。
     虎杖の陽気さに返って寒気を覚えた伏黒は、好奇心に瞳を輝かせて耳へ神経を全集中させている釘崎からそっと距離を取る。
     間違いなく、彼女が狙う次の獲物は自分だ――。親代わりな五条をこの中で誰よりも知っているのは間違いなく伏黒で。案の定、ちらりと一瞥してきた捕食者の眼差しに思わず目をそらした。そもそも、相手を問われたところで伏黒は知らない。話の流れからすれば思い当たる節はあっても確定はしていないのだ。明らかに恋をしていますと言わんばかりな五条を視界から追い出し続けていたのだ。彼が誰を思っているかなど――。
    「えー? 好きって……まあ、僕の秘蔵っ子だからね。悠二たちには悪いけど確かに特別だよ? でも、そういう意味の好きじゃないと思っていたんだけどなー」
     瞬時に相手を確信してしまった伏黒は、遙か遠くへ視線を向ける。
     思い返せば妙に距離が近いとは思っていた。それは彼が言うとおりに特別目を掛けているからだろうと。彼と同じ高みに立てるからだろうと考えていただけに虎杖の発言もあって伏黒は思考の放棄を決めた。
    「つーかさ、そういうの。マジで面倒くせえ女みてえじゃん。うじうじ悩むよりか電話してみれば? 特別って言っている時点でそういう意味の好きってことじゃねえのかよ」
     止めてくれ――ッ。伏黒の叫びは表へ出ることなく胸中だけで留まる。もしかしたら、万が一、億分の一でも違う可能性はあるのだ。それを誘導するように呆れた笑みを零す虎杖を今すぐ羽交い締めにし、口を閉ざしてやりたい。くっと喉を苦々しく鳴らした伏黒は、虎杖による決定打が与えられる前に終わらせようと踵を返す――が、一歩早くに大股で仁王立ちする釘崎が立ちはだかった。
     娯楽に飢えている釘崎にとって、いけ好かない担任であろうとも他人の恋バナは見ものだ。
     邪魔は許さんと全身でもって告げてくる釘崎を直視できず、しかし聞きたくもなくて内心右往左往する伏黒を余所に、数ヶ月前まで健全な一般男子高生だった虎杖は五条へ身を乗り出す。
    「それともさ、先生もやっぱ怖えの? 好きな人に連絡すんのってスゲェドキドキするしさ、嫌われたらどうしようって不安になるよな!」
     虎杖は過去の自分を思い出してか、一人うんうんと頷いて納得している。虎杖としては共感を覚えての発言だったが、相手が悪かったと言えよう。
     暗に怖気付いているのかと言われていると捉えた五条は頬を引き攣らせ、そんなわけないしとスマホを取り出す。
    「だからさー、そういう好きじゃないって言ってんでしょー? まあ、僕は最強ですから? 怖いなんてないしー。そういうわけで、そんなんじゃないよーって証明として電話するね」
     結局電話すんのかよっ! 偶然にも一年生三人の心が一致した。
     馬鹿馬鹿しいと頭を振った伏黒だが、ふと、話題の想い人がいる地を思い出し、時差を計算して焦る。
    「……寝てるんじゃ?」
     明らかに五条の想い人を知っているとしか思えない発言を零してしまった伏黒の双肩を勢いよく鷲掴みにした釘崎は、昼休憩時間に詳細を聞き出すべく、昼逃げんなよ……と、恐ろしく低い声で囁く。
     離れた位置で行われている恐喝じみたやり取りに気付かず、耳に当てたスマホより鳴り響く呼び出し音を聞きながら五条はようやく時差に気付く。確か今、あの子はケニアにいるはずだ。時差は六時間かと片手で顎を覆う。
     九時から始まった授業は一時間も経過しておらず。計算通りなら電話の向こうは深夜三時過ぎだ。通話に出ない時点で寝ているのだろうと判断し、残念に思う自分へ苦笑しつつ切断ボタンを親指で押そうと寄せた直後――。

    『……はい、乙骨です』

     普段よりも少し高めの、掠れた囁き声に五条の心臓は握り潰されんばかりの痛みを覚えた。
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    DONE生まれた時から親戚付き合いがあってはちゃめちゃ可愛いがられていた設定の現パロ。人気俳優×普通のDK。

    以下注意。
    ・捏造しかありません。
    ・乙パパ視点。
    ・ママと妹ちゃんとパパの同僚という名のもぶがめちゃ出歯ります、しゃべります。
    ・五乙と言いながら五さんも乙くんも直接的には出てきません。サトノレおにーさんとちびゆたくんのエピのが多いかも。
    ・意図的に過去作と二重写しにしているところがあります。
    とんとん拍子も困りものもう少し、猶予期間を下さい。


    ◆◆


    「横暴すぎるだろくそ姉貴ぃ……」

    待ちに待った昼休み。
    わくわくと胸を踊らせながら、弁当箱の蓋を開いた。玉子焼きにウインナー、ハンバーグにぴりっとアクセントのあるきんぴらごぼう。そして、彩りにプチトマトとレタス。これぞお弁当!なおかずが、ところ狭しとぎゅうぎゅうに詰められていた。
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