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    #ジクアグ

    dikuag

    sougetsu_nhz

    REHABILIジクイベ後1年くらい弄って書いてたやつ
    その日、所用があって艇内のジークフリートの部屋を訪れたパーシヴァルは、作り付けの机上に見慣れない筆記具が置かれているのを目にした。深い青の軸に、天冠とクリップの金が目を惹く万年筆である。クリップには彫金が施されており、遠目にも瀟洒なつくりのそれはそもそも物の少ない船室の中で浮いてさえ見えた。
    「ああ、アグロヴァルの……お前の兄上のものだな」
     パーシヴァルが気にしていることを見て取ったジークフリートは、あっさりと、だが意外な名前を口に出した。当然の経過としてなぜ兄の物がここにあるのかを問うと、「諸般の事情でウェールズを訪れた際に取り違えて持ってきてしまった」と言う。
     パーシヴァルは兄が万年筆を使うところを見たことがなかった。城にあって政務についているならば執務室内に置かれたペンとインクを使うだろうし、視察先で必要になったとしても従者が携えているだろう。兄自らが懐に筆記具を携帯している場面があるとは思えない。それがどういう誤りがあってこの男の手元にやってくるのだろうか。首を傾げるも、肝心のジークフリートはそれ以上このことをつまびらかにするつもりはないようだった。こういうとき、問い詰めたとしてろくな回答がないだろうことは予想がつき、また強いて必要なこととも思えなかったので早々に追及を断念する。
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    sougetsu_nhz

    REHABILIなんか風景書きたくて書いたやつ
    恵まれた秋空に色づく木々の合間から覗く空は、よく晴れて高く蒼い。
    緩やかに歩ませる馬の背から眺める森の風景は穏やかだ。木々が陽光に向かい先を争って枝を広げ葉を茂らせる夏よりも、落葉樹が務めを果たした葉をいくらか放した今の方が森は明るい。暗がりを好む魔物は何処か他所へ去り、時折顔を見せる者達はおとなしく、冬支度にと落ちた木の実を集めている。
    歩む蹄の固い音は厚く積もった落ち葉に吸われてしまう。今アグロヴァルを包む光景は信じがたいほど静謐だった。
    午後から視察に出るとだけ言えば優秀な側近は事情を飲み込んだ。そもそも数日前に隣国の港に懇意の騎空団の艇が停泊しているという話を吹き込んできたのも彼であったので、特段驚くべきことでもないのだが、物わかりのよさが少々落ち着かない事案でもある。視察に行くと言いながら馬を引いてまで人出のある街と反対方向の森に来たのはそういう事情もあった。これから顔を合わせるだろう相手はどうせ、アグロヴァルがどこに姿を隠そうが勝手に見つけ出す。ただ察しのよすぎる側近には、どこかで示し合わせて落ち合うような気安さではないことを言い訳しておかなければならなかった。
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