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    あまみ

    忘バ/圭藤(智将含む)
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    あまみ

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    しきざき

    と言いながらそんなにカップリング感はないです。
    しきざきと叢裂がわちゃわちゃしてるだけ。
    よく見かける「着地任せた」を言わせたかったんですが、元ネタ作品のことはほぼ知らないので本当にセリフをお借りしただけです、すみません。

    #シキザキ

    しきざき薄暗い路地裏を右へ左へジグザグ走る。
    瞬発力よりも持久力に自信ありだったが、このままなんとか追い詰められそうだ。
    ターゲットはかなり素早いものの、四肢のリーチにかなり差がある。まっすぐ泳がせたのちに、突き当たりで待ち構える叢裂さんが回収すれば任務完了だ。
    目前に迫るゴールに、気持ちが逸る。
     
    「っ、叢裂さんっ!」

    頼みますっ!と叫んだ祈りを嘲笑うかのように、目標は高く飛び上がる。四足歩行のその体を軽々と宙に浮かせて、そのまま青空へ消えてゆく。
    暗闇から抜け出したばかりのオレの目では、まぶしさに到底耐えられない。オレは真っ白く眩む空を、叢裂さんは自分の遥か頭上を、それぞれぽかんと見送った。

    「おお、あいつ飛ぶのか」
    「「えっ、ええーーーーーーっ!!!」」

    どれだけ大声を上げたところで、空飛ぶターゲットにはかすりもしない。
    高速で姿を消してしまったゴールに、意識が遠のく。


    ただの捕縛作戦だよ、と、とびっきりの笑顔で告げられたのは、ほんの数時間前のことだった。天使と見まごう慈悲深い“皆のママ“の笑みに、逆に嫌な予感が止まらない。
    聞けば、GARDEN内で飼育していた新種の動物が一匹、今朝方逃げ出してしまったのだという。
    「全然危険な子じゃないのよ、とってもかわいいし」「みんなの新しいご飯になったらいいなあって」「今日味見をしてみましょうって準備をしてたのだけど」
    なるほど、あまり深入りしないほうが良さそうな案件だ。サッと叢裂さんの耳を塞ぐお館様を横目に、「……で、それをオレたちが捕獲してくればいいわけですね?」、半ば強引に話を進める。
    正直、あまり千紫向きとは思えない任務だったが、空いているのがここにいる三人ぽっちなんだろう。まあ、本当に危険がなくてかわいい食用動物なら、捕えるのもそう難しくないのかもしれない。
    「そうなの!お願いきいてくれてありがとう、みんな」、対象はこんな姿をしているからね。パッと転送されたデータに、思わずんっ!?と身を乗り出す。

    「えっ…………羽根生えてるん、です、か?」
    「かわいいでしょう?けど、飛んだりしないから安心して。可食部が増えたほうがいいかなあって、つけてみたの」

    最後の一言は聞かなかったこととしよう、とお館様と目くばせする。
    かくしてオレと叢裂さんとお館様による、全然危険じゃないとってもかわいいみんなの新しい食べ物捕獲作戦が始まったのだが。

     
    「飛ばないって言ってたじゃないですか……」

    早すぎる裏切りに、げっそりと肩を落として虚空を見つめる。撃退ではなく生け捕り、というだけでやや面倒なのに、空中までフィールドになるのはさすがに難易度が上がりすぎる。いくら最強と謳われようと、お館様も叢裂さんも、もちろんオレだって空は飛べない。

    「生存本能というやつかな」

    土産話がひとつ増えたではないか、と我がKINGはなぜかご満悦だ。さっきまで『私はか弱い男の子だから』と捕獲対象に呪力だけ貼りつけると、追跡はオレたちに任せきっていたくせに。

    「笑ってる場合じゃないですよ、どうするんです?アレ」

    はるかかなた高みからこちらを見下ろす食材は、すっかり旋回をマスターしたらしい。ちょっとやそっとじゃ降りてくる気配はない。

    「まあ、こちらも上まであがるしかないな。幸い、私の呪力を辿れば居場所は掴める」

    ぐ、ぐっ、と屈伸なんか始めるお館様に、え、え?、オレの感情が追いつかない。
    上までって誰が?どうやって?どこかの騎士団から乗り物でも借りてくるんですか?
    口火を切るその前に、「叢裂、」、我が主の凛とした声が響く。オレたち千紫の大好きな、揺れる水面が時を止めるような、背筋の伸びる清廉とした声だ。

    「私の術であいつを追いかける。この体が浮き上がったら風を起こし、私をあそこまで吹き飛ばしてくれ」
    「うん、わかった。すぐに上まで送り届けるね」
    「斬、」

    「着地は任せた」

    叢裂さんの抜刀より早く、脚が大地を蹴っていた。
    この人はいつも突然だ、とか、なんでわざわざKINGが一番危険な役割を、とか、帰ったら輝夜さんに告げ口しなきゃ、とか、言いたいことは山ほどあるけれど。
    そう、けれど、あの声を聞いてしまったら。お館様から命を受けたその瞬間、この体は彼のものになる。お館様の思い描く術式を完遂させるために動く、彼の手足のひとつとなる。
    ていうか単純にあの人に無茶振りされるのが好きなだけなんすよね、オレは。
    緊張と高揚に突き動かされてひた走る。
     
    空を見上げる。
    真っ青な快晴にひとすじ雲が流れるように、お館様が宙に踊っている。
    景色を加速する。
    透明な階段を一段飛ばしで駆け上がるように、彼のもとへ速く、高く。
    両手を伸ばす。
    お館様の体も心も、なにひとつ取りこぼさないように全身で飛び込んだ。
    オレの両腕に舞い落ちる一瞬、ふわりと身を翻した主は満足そうに笑んでいた。
    ただいま、を告げられた、気がする。

    「うっ、おっ、」
    「うむ、斬、ナイスキャッチ」

    ずしっと、思い出した重力に翻弄されることなく踏み止まる。気楽なもんだ、見た目よりしっかりと鍛えられた体を持つ青年は、腕の中でケラケラと笑っている。
    “お上からの捕縛要請“、大切な人を護り抜く“、重要任務をふたつこなしたのだという安心感から、全身の力を抜いてやりたくなるけれど。

    「っ、はあ、お館様、斬くん、だいじょうぶ?」
    「おお叢裂、私はご覧の通りだよ。斬の方はちょっとわからないが」
    「舐めないでくださいこのまま落っことしますよ。あと100セットだっていけます」
    「なら、お言葉に甘えてこのままGARDENまで運んでもらおうか。なんなら叢裂もおぶってもらうといい」
    「いいですね、きっとすぐ噂になりますよ。千紫には白くてかわいいお姫様がふたりもいるって」

    ふふふ、という少女が楽しそうに肩を揺らせば、オレとお館様のみっつめの任務も達成だ。よしよし、と姫抱きにした彼と目を合わせて、作戦の成功を分かち合う。
    叢裂も見せて、と背伸びしてきた叢裂さんと三人で、今日一日の努力の結晶をあらためて囲んだ。
     
    「それにしてもコイツ、不味そうですね」

    誰も否定しないまま、どっこらせとお館様が立ち上がる。



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