司いち「星乃一歌様に恋人!?」
「誰よ!その男ッッッ!」とネットニュースに掲載されている写真を拡大しながら見るとどこかで見たことのある金髪。そもそも二人して変装しているんだろうけども、オーラを隠しきれていなさすぎて、元々知っている人からしたら、「この二人すっぱ抜かれてるの遅くない?」という感想が出てくるだろう。もしくは、この二人の身内からしたら、「やっとだけども、関係変わってないんじゃないか」と疑われるようなもの。
「誰って、これ天馬司じゃん」
隣で同じように自分のスマホを操作してネットニュースを見ている私とシェアハウスして住んでいる友人。クッションを抱きしめながら、床に寝っ転がっている友人に、「そうだけどさあ!」と嘆いた。
おかしいなぁ。あんた天馬司好きじゃなかった? 元々テーマパークが好きな友人だけども、天馬司が学生だった頃から彼のショーを見てファンになっている。一時期結構な頻度でショーを見に行ってたのに、この反応。相手が星乃一歌様だから??
星乃一歌様というずるい女。あんなかっこいいのにギャップのある可愛さを持っていて、MCでメンバーにいじられているのも好きなのに、急に引っ張ったりするのはずるい。顔がいい。歌が上手い。へにょっとする眉もかわいい。無意識でファンを増やすような仕草もずるい。本人は「そんなのやってた?」と目をぱちくりとさせるのだから…。
「一歌様ッッッッッ!!おめでとうッッッッッ!!」
「うるさっ」
えーーーん! 一歌様の彼氏が天馬司になるのは仕方ないどころか他に誰がいるんだってなるけどさっっっ!
お赤飯は、明日炊こう! まぁ、炊けないんだけど、うん! 買うかぁ! 今日ご飯食べちゃったし。
「でも、一歌様が人のものに…っっ」
「喜んでるのか苦しんでいるのか…ジェットコースターみたいだね」
「だって…一歌様、人の恋に真剣になって考えてくれたじゃん」
音楽番組はレオニードだけが出演した回だけではないけども、どのアーティストの誰しもいつかは聞かれるだろう質問。MCから新曲披露にあたって秘話があるない聞かれてたことを思い出す。恋の曲をメインに作るアーティストやアイドル等にとっては定番な質問で、すらすらって答えるようになっている。
その点ではレオニードは違う。王道な青春、前を向けるような背中を押してくれる応援ソングが多い。あ、でも、咲希ちゃんがポップに作ってる曲の中には実は、暗い曲があるのも知った時は驚いたけどね。
だから、『恋の曲ってあまりないですよね。今回の曲はだれが作詞を手掛けたんですか?』と問われた際、リーダーの穂波ちゃんが手を合わせて、『この曲はですね…』と一歌様を見てた。本当ならわかる。誰が作ったかって。いつものように作詞作曲するのが限られてるから分かりやすい。作詞を担当している一歌様は顔を真っ赤にしていた。もうバレバレすぎる。クールに磨きがかかっている志歩ちゃんだってニマァって一歌様を見て笑みを浮かべてたくらいだもの。
「あの時は友人って言ってたじゃん〜〜!!」
「人の言う友人ってあんま信用ならないでしょ」
友人が言うには〜ってやつでしょ。私じゃなくて〜と話し出すやつ。
…たしかに? 一歌様言っていた。
『ええっと、友人のことを応援したくて…』
『星乃さんの友人ですか? それはとても嬉しいでしょ、ご友人さん』
『は、はいっ。いつか…私もこんな気持ちになれるのかな…って…』
『一歌…』
『いっちゃん…』
『かわいい、一歌ちゃん』
辿々しかったけども、なにかを思い浮かべては想いを馳せてるような一歌様の言い方。その様子をあたたかい気持ちで見守るようなメンバー3人…。すぐに、『そ、そんな…っ、私が恋をしている友人…いえ、貴方を応援したいという作詞にしました。勿論、作曲は咲希がしました』と自分の話を終わらせるように、司会者に答えていた。曲を聴いている貴方と指していたが違うのはもうわかった。当然、司会者も気づかずに咲希ちゃんに今回の曲の作曲について聞いていた。
あれは本当に確定だった。メンバーも知ってますみたいな内容だったのは、もう一歌様の恋がバレバレだったからなのかもしれない。それはそれで可愛い。かっこいいのに、可愛いとか本当に反則だよ。
「一歌様と付き合いたい、結婚したい」
「推しが幸せならOK派じゃないの?」
「OKだよっっっ!!天馬司が選ばれてよかったじゃん!」
「それ、私にキレてる??」
「キレてないッッッ!」
SNSで、星乃一歌様に関するようなキーワードで検索する。悔しい…っっ、似たようなファンがいないから見て、自分の気持ちを落ち着かせよう。あれだあれ。自分より怖がってる人いたら冷静にお化け屋敷楽しんでるタイプのやつ。
途中