変身(どうぶつフォーゼのすがた)ある朝、土井半助が夢から目ざめたとき、自分が布団の上で一匹の二足歩行の犬のような生き物に変ってしまっているのに気づいた。彼はもふもふとした茶色の毛が生えた背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、同じくもふもふと毛の生えた白い腹が見えた。腹の上には掛け布団がずっしりとかかり、いつもより重いように感じた。ふだんの大きさに比べると随分と背丈が縮んでしまったと嘆く犬のような黒い鼻はしっとりと湿って日を受けて光っていた。
「というわけで、この姿になってしまったのですが」
「今度はあんたの番か。おつかれさん」
最初に乱太郎の姿が変わってしまった時は騒ぎになったのだが、今ではすっかりみんな慣れきってしまった。ある日突然、二足歩行の犬のような姿になり、数日後に何事もなかったように戻るのだ。ページを破ると目的の場所に繋がる事ができる現象に比べると便利さはないが、どうやらさほど害もないらしい。背丈が縮むので多少の不便はあれど、何故か道具を扱うこともできれば、発声にも問題はなく、食べ物も人間と変わらない。きり丸が犬の姿になった時は食券代を惜しんでいつもの量を食べ、腹がぽんぽこりんになっていた。
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