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    キタハル

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    キタハル

    DONE半伝 室町時代のつばめのことはわからんので、現代知識で好きに書いております。玄鳥去滑り込み。
    つばめさる最近、つばめを見かけなくなった。

    春、今年もつばめ達が舞い戻ってきた。この世で最も安全な場所のうちの一つである忍術学園の、しかも教師たちの住まいを兼ねる職員棟の軒先に巣を構えた、お目が高く肝の据わったつばめ達である。同一個体なのか子孫か何かなのかはわからないが、つばめ達は毎年学園に帰ってくる。つばめは我々にとって害虫を食べてくれる益鳥であり、また縁起がよいとも言われるので、学園では彼らの来訪を快く受け入れている。唯一人間が頭を悩ませる彼らの落とし物問題についても、巣の下に竹ざるを吊るして反故紙を敷く形の対策を用具委員会が考えてくれたため、ずいぶんと楽になった。
    つばめのつがいは巣を作り、卵を産み孵し、ギャアギャアと我先にと餌を強請るひなに食べるものを与えて育てる。そうして大きくなったら、子どもたちは親に教わって飛ぶ練習をしたり、餌を獲る練習をしたりする。最初は下手くそだった飛翔がずいぶんと様になるところは見ていると嬉しい。おそらく教師という生きものは、ひとが成長し、育っていく様を見守るのが好きなのだと思う。一番最後まで巣に留まっていた幼鳥が、そのうちに他の兄弟と見分けがつかないほど上手く飛ぶようになった。姿も大人のつばめとそう変わらないように見える。そんな彼らの姿が近頃ぱたりと見えなくなったのだ。
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    DOODLE現パロ同棲半伝 自宅で映画鑑賞会
    週末、自宅映画会リビングのソファの上に二人で座り、ぴたりとくっつく。このソファは二人で住み始める時に二人で念入りに選んだ家具のうちの一つだ。清掃のしやすい合皮製で、はみ出しながらも昼寝ができて、男二人で仲良くくっついて座るのにも心地のいい優秀なソファ。物には寿命があるとはいえ、長いこと使えるはずの作りのいいソファだ。見た目もいい。結構いいお値段はしたのだが、手に入れられて大満足の良い子である。ティーパックで淹れたお茶のマグカップを用意し、泣いてしまった時用のティッシュ箱を机の上に置き、二人してクッションを膝の上に抱え込んでから、照明を薄明かりに落とす。
    週に一度の自宅映画会は、元は伝蔵さんの発案だ。仕事関係のことと伝蔵さん以外への興味が薄い私を心配して、映画をきっかけに色んなものに興味をもたせようと考えてくれたらしい。今のところ映画視聴をきっかけに継続的な趣味に繋がったことはないのだが、関係する本を読んだり、出かける先に選んだりするきっかけにはなっていて、それなりの効果を上げている。しかし私の興味の最たるものはやはり伝蔵さんで、くっついた部分から伝わる体温や、映画を見て笑ったり泣いたりする横顔や声、軽い感想を言い合う時間などが好きだ。少々下心のような動機だが、伝蔵さんも映画作品を見る時間が取れるので楽しみにしていると言ってくれている。
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    キタハル

    DOODLE半伝 どうぶつフォーゼのすがた
    変身(どうぶつフォーゼのすがた)ある朝、土井半助が夢から目ざめたとき、自分が布団の上で一匹の二足歩行の犬のような生き物に変ってしまっているのに気づいた。彼はもふもふとした茶色の毛が生えた背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、同じくもふもふと毛の生えた白い腹が見えた。腹の上には掛け布団がずっしりとかかり、いつもより重いように感じた。ふだんの大きさに比べると随分と背丈が縮んでしまったと嘆く犬のような黒い鼻はしっとりと湿って日を受けて光っていた。

    「というわけで、この姿になってしまったのですが」
    「今度はあんたの番か。おつかれさん」
    最初に乱太郎の姿が変わってしまった時は騒ぎになったのだが、今ではすっかりみんな慣れきってしまった。ある日突然、二足歩行の犬のような姿になり、数日後に何事もなかったように戻るのだ。ページを破ると目的の場所に繋がる事ができる現象に比べると便利さはないが、どうやらさほど害もないらしい。背丈が縮むので多少の不便はあれど、何故か道具を扱うこともできれば、発声にも問題はなく、食べ物も人間と変わらない。きり丸が犬の姿になった時は食券代を惜しんでいつもの量を食べ、腹がぽんぽこりんになっていた。
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    キタハル

    DONE半伝 犬とか猫とかを拾ってきがちな伝と、犬相手に嫉妬しちゃう半が見たかった。山田家の獰猛なネコチャンに関する捏造を含みます。
    仔犬の半助、保護される「ははは、半助、そんなとこ舐めるな、全くもう、あっはっは」
    山田先生が「半助」に顔を舐められて、くすぐったそうに笑う。咎める言葉でありながら声音は楽しそうで、相手を本気で止めようとしているとは思い難い。人間の方の半助はムムウと頬を膨らませた。ここ数日の山田先生は、裏山で拾ってきた仔犬の半助にかかりきりだ。人間の半助の方はなかなか構ってもらえずに、ちょっぴりおかんむりなのである。

    事の顛末はこうだ。裏山の、おそらく生徒が掘ったであろう穴に、仔犬が落ちてキューキュー鳴いていた。そこに日課の朝ランニングをしている山田先生が通りかかった。そこは低学年生の実技でも使うような場所であるため、見目の愛らしい仔犬などが鳴いていては、生徒たちの気が散るのは火を見るより明らかだった。だから授業の邪魔にならぬよう、拾ってきたのだと山田先生は言う。山田先生はどこからか使っていない箱を持ってきて、ご自身の着古しの忍者装束を割いて底に敷き、仔犬をそこに入れた。私事なのに生物委員に任せきりにするわけにもいかないからと言い、それを山田・土井の職員部屋に持ち込む。手慣れた様子ではあるが、なんせ仔犬だ、手がかかる。食事の間隔も短く、食わせるのにも人の手がいる。山田先生の手からすり潰した残飯をおぼつかない様子で食べる仔犬は確かに愛らしい。甲斐甲斐しく仔犬の面倒をみる山田先生も、ご多用ではあるものの楽しそうだ。よく食べた、偉いぞ、可愛いなぁ。そう言って仔犬を撫でるのである。山田家に匿ってもらった時のことを思い出す。出していただいた食事がたいへんおいしく、遠慮も外聞もなくペロリと平らげた時も、感心した様子で鷹揚に褒めてくださったのだった。なんだか、気恥ずかしくて落ち着かない。
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