ざぁざぁと叩きつける雨粒に、窓が壊れてしまうのではないか?と心配してしまうほどだ。
「すごいね、雨」
ぺたりと雨風を受け冷たくなっている窓に手をついて外を眺める品田はまるで台風を喜んでいる子どものようだ。悪天候故に、外の景色はどんよりとした灰色に染まっている。それでも品田は嬉しそうに外を眺めていた。
「危ないで、こっち来ぃ」
「危ないの?」
不貞腐れたような声を出しつつ郷田の言うことに従順なところがある品田はぺたぺたと素足を鳴らしながら郷田の座っているソファへと身を沈める。ふわふわと優しく品田を包み込むそれは、来た当初は慣れなかったものの、今ではこのふわふわに包まれるのがやみつきになってしまった――もし、郷田が飽きて放り出されてしまったら、困ってしまうぐらいには。
「まぁ、割れはせぇへんけど……万が一ってのがあるやろ」
片手で品田のざんばらな髪を梳いてやればびくりと肩を竦めながらその手を受け入れている。何故かこの男は、"男"というものが苦手らしい。大声で笑うのも、怒鳴るのも、撫でるために手を上げるのも……その度に肩を竦め怯えたようにこちらを見上げる。
何があったかは聞きやしないが、品田辰雄という人物を調べると自ずと分かってしまう。手酷く取り調べを受けたのだろう。極道という身であれば、ちょっとやそっとじゃ動じなくなるが、彼は違う。完全なカタギであり、一夜にして"犯罪者"というレッテルを貼られてしまった才ある者だ。
日本の野球をそこまで知らないが、彼のような逸材を失うことがどれだけの損失か考えもしないだろう。品田であればメジャーリーグでも十分活躍できるというのに、たかだか地方の弱小が金のために有望な選手を殺すなど、郷田からすれば「阿呆もここに極まれり」という感じであった。
「郷田さんは、」
「龍司や」
「……りゅーじさんは!」
「えらいのぉ、ちゃんと今度は言えたやないか」
「すっげぇバカにしてるでしょ」
ぶつぶつと小さく文句を言いながら渡したジュースを飲む品田を鼻で笑いながら、大して面白くないバラエティをふたりで眺める。
外は相変わらず雨だ。