今日は2月22日、語呂合わせで"にゃんにゃんにゃん"――というわけで猫の日らしい。そういえば確かに、電車の中で猫の話題が出ていたし、SNSでは猫の写真やら猫のグッズやらが川のせせらぎのように流れていった。語呂合わせの記念日(と言うべきかどうか悩ましいところではあるが)にメディアや企業が挙って取り上げたりするのは日本だけなのではないだろうか?と思うぐらいには、特段興味という興味はなかった。猫なら嫌という程見ているし。
「でもまさか、消滅したメメントスが復活してまで影響があるとはワガハイでも思わなかったぜ」
ぱたり、ぱたりとしっぽを揺らすモルガナは先程まで路を爆走していた時のことを思い出しているのかむむっと唸っている。
「でも、メメントスはみんなのパレスなんでしょ?ならありえない話でもないよね」
だよね、と杏がその長くすらりとした脚を組み替えながらモルガナに言う。それには同意だ。あれだけ盛り上がっているのだから、多少なりとも"パレス"に影響が出ることは予想できる。予想はできるが。
「でも、その大衆のシャドウ…でいいのか?そのシャドウがまさか猫耳ついてるとは思わないだろ」
女子の鶴の一言で京都から渋谷に来ることになった善吉がやれやれと肩をすくめる。それしか出来ない、というようなあるいはどう反応していいか分からない、とでも言いたげな仕草はさすがダンディーなヒゲなだけあるな……と考えていれば旋毛を押されてしまった。身長が縮むだろ、と文句を言えば「変なこと考えてるからだ」とまるでこちらの考えていることが分かっているかのようなセリフに目を見開いてしまった。もしかしたら善吉はエスパーなのかもしれない。
「うーん、でも……気持ち悪かったよね?」
少し照れたように言ってのけた春に双葉は腹を抱えて笑いだし、竜司は「素直かよッ!」と元気にツッコんでいた。
「気持ち悪い、というより安直な気もするが…」
あのシャドウにそのまま猫耳(と思わしきもの)が生えただけ。確かに気持ち悪いと言えば気持ち悪いが、祐介が先程言ったように安直だ。
猫といえば猫耳?猫には猫耳しかないのか?モルガナを見て欲しい。この丸く愛らしいフォルム、ピンク色でぷにぷにの肉球、そしてこの口。ふにょんとした口から時折見える牙は確かに猫が元々肉食であった名残が垣間見えるのが最高なのだ。猫耳だけが取り上げられるのは些か不満であり、不服でしかない。
いや、別に猫派という訳ではないのだが。
「ジョーカーは?」
「肉球が無いのは……ちょっと……」
「あー…そういや、お前って何かにつけて肉球揉ませろってペルソナに要求してたな」
遠い目をした竜司がそう言うのを善吉以外のメンバーがフッと竜司と同じように遠い目をした。ひとり取り残された善吉はこちらの肩をぽんぽんと叩くだけに留めたのが何となく気に食わなくて。
「ビャッコ!」
別に拗ねた訳ではない。純粋に猫の日の話を聞いていたら肉球が揉みたくなっただけ。だから、ペルソナであるはずのビャッコがちょっと嫌そうな顔で肉球を揉ませてくれるのも気の所為だ。
全部、全部猫の日が悪い!