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    koshikundaisuki

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    12/20 影菅アドベントカレンダーチャレンジ

    #影菅
    kagesuga

    個人面談太陽がだいぶ昇った頃、隣の部屋から物音がした。「うぅぅ……」という呻き声が扉の隙間から漏れる。チェックしていた試合の録画を一時停止すると、立ち上がって電気ケトルに水を入れた。食器棚から取り出したマグカップにインスタントコーヒーを入れる。お湯が沸く頃、のそのそとようやく菅原さんが寝室から出てきた。あっちこっちにピンピンとはねた髪の毛に、半分も開いていない目。だるだるのスウェット姿に、何故か薄手の毛布を手にしてズルズルと引きずっている。休日の菅原先生の姿を、きっとクラスの子どもたちは想像できない。
    「コーヒー、飲みますよね」
    ソファに転がり込んだ菅原さんは、毛布にくるまった蓑虫状態で「うん」とも「ううん」とも聞こえる返事をした。しかし胃を悪くしている場合を除き毎朝コーヒーを飲む習慣があるので、聞き返さずにマグカップにお湯を注ぐ。
    ソファ前のローテーブルに淹れたてのコーヒーを置くと、「ありがと」と毛布が喋った。
    モゾモゾと毛布から顔を出した菅原さんは寝そべったままコーヒーを啜る。「溢しますよ」と注意する前に口の端から垂れ落ちたコーヒーが毛布に染みをつくる。
    やべぇ、こぼしちゃったとホヤホヤ笑う菅原さんから毛布を奪うと、キッチンの水栓で濡らし、食器用洗剤を染み込ませる。「この世にある大体のシミには食器用の中性洗剤が効く」と教えてくれたのは菅原さんだった。
    当の本人は流石に反省したのか、ちゃんと座り直してマグカップに口をつけている。ふぅ、と息を吹きかけて冷ましながら「夢の中でお前、俺の生徒でさ。さっきまで保護者面談やってた」と言う。
    ふ、と笑いが溢れた。2学期も終わりに近づき、通常の業務に加えて怒涛の面談をやっていた菅原さんらしい夢と言える。
    「影山のお父さん、チャーミングで優しい人だったけど、やっぱいつもより緊張した〜」と笑う顔が少しこわばって見えるのは、午後に俺の実家に二人で挨拶に向かう予定があるからだろう。
    それも含めてそんな夢を見させたのなら申し訳ないな、と思う。毛布くらい俺が洗おう。
    応急処置を済ませた毛布を洗濯機に入れると、リビングから「あ、やべっ」とやらかして叱られる前の子どものような声がした。



    元々菅原さんのことは話していたし、家族も会えるのをずっと楽しみにしていたから、打ち解けるのはあっという間だった。俺ならきっとこうはならない。「先生だからかな、お話が上手だね」と美羽がそっと耳打ちをしたが、職業よりも彼の人となりによるものだと思っている。髪をきちんとセットし、必要ないと言ったのにスーツに身を包んだ菅原さんは、ちゃんとした大人に見えた。朝に弱く、コーヒーを一度で2度もこぼす人間とはとても思えない。
    話がひと段落すると、菅原さんは遅くなってしまったのですが、と前置きして言った。
    「お仏壇にお参りさせてください」


    和室に案内すると、菅原さんは仏壇の前でお辞儀をした。丁寧な動作でお線香に火をつけ、手で仰いで火を消すと、一瞬だけこちらを振り返り「何宗?」と小声で聞いた。
    俺自身よくわからなかったので「適当でいいですよ」と答える。菅原さんは一瞬迷った様子だったが、線香を二つに折ってもう片方にも火をつけると香炉に寝かせた。そして仏壇を見上げ、手を合わせる。長く、穏やかな沈黙が流れた。

    ようやく顔を上げると、仏壇をゆっくりと見上げた。そして線香からまっすぐ立ち登る煙の向こうに見つけたものを「え?」という様子で凝視した。突然一時停止した菅原さんに「どうしたんですか」と声をかけるも、菅原さんは前のめりになり、眉を顰めて仏壇を凝視するだけだった。やがてこちらを見ると「え?あのさ、この方って……」と言って、二つ並んでいる遺影の片方に視線を向けた。昔と変わらない朗らかな笑顔で俺たちを見ているその人を、まだ紹介していなかったことに気づいた。
    「その人は一与さん……俺たちの祖父です」
    菅原さんは口を開けたままポカンと一与さんの遺影を見つめていたが、やがて緊張が急に解れたかのように正座をくずし、「なんだぁ、おじいさまだったのかぁ」とおかしそうに笑った。


    終わり
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    koshikundaisuki

    DOODLEラッキーすけべでお題をいただきました、影菅ノssです
    ラッキースケベ(仮)聞いて欲しい。これは俺の懺悔と、とある追憶の記録だ。

    俺、菅原孝支は宮城県内某所で小学校教諭をしているごく普通の成人男性だ。俺には年下の彼氏がいるのだが、それはそれは可愛く、そして時には大変格好良い男で、バレーボール男子日本代表にも選ばれたトップアスリートである。名前は影山飛雄という。詳しくはWikipediaでも見てほしい。

    愛し愛されかれこれ8年ほど恋人としての関係が続いている。遠距離の時期が長く続いたこともあり、取り立てて大きな事件などは起きなかった俺たちだが、半同棲をはじめて1年半がたつ今、影山を怒らせてしまった。理由はさほど重要ではないので割愛するが、俺自身の不甲斐なさが原因だ。俺は自らの過ちを認めて非礼を詫び、彼の中にあった誤解を解くためそれまでの成り行きを丁寧に説明し、最後に影山を本当に愛していることを伝えて仲直りとなった。焦った。影山が小さな不満を貯め込み、それが表面に漏れてしまうことは珍しくないが、面と向かって不満を爆発させたのはほぼ初めてだったので、俺たちの関係もこれまでかと思った。抱きしめられた影山は落ち着くためにゆっくりと深呼吸をしたあと、シュンとした表情のまま「俺も、すみませんでした」と呟いたのでたまらない気持ちになる。でもそうだよな。長い付き合いだからこそ、きちんとお互いのことを話しいくべきだよな。
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    DONE◆Distorted Love◆

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    ※この小説は18禁かつ盗撮の描写があります。この先を読む場合はご理解の上お願いします。

    ※今回の小説を加筆修正し、盗撮りんひをテーマにした本を10月のりんひプチオンリーで販売予定です。
    Distorted LoveDistorted Love



    最愛の弟である天城一彩のことを監視したいと思い始めたのはいつからだろうか。忌々しかった故郷を出る時に兄弟以上の関係性を願う想いは捨てたはずなのに。俺を故郷に連れ戻そうと追い掛けてきた一彩は、今ではアイドルとして活躍するようになった。MDMを終えて和解した俺達は少しずつ兄弟としての関係を再構築している。ユニットは別々であり、関係性を再構築しているが、まだ一彩と2人だけで過ごすにもどう振舞っていいかわからず、今でも時々冷たくあしらってしまう。酔ったフリをしでもした時だけは、あいつの前で素直な自分でいられるのに。
    4年以上も離れ離れになっている間に、あの頃はまだ小さくてかわいらしかった姿も、すっかり見目麗しくなっていた。雑誌の王子様系男子特集に抜擢されるくらい、眼はぱっちり大きく、王子様系に相応しい端正な顔付き。同じ緋色の髪は俺とは違ってふわふわのくせっ毛なのに上手い具合にパーマがかかってるように見える。兄弟以上に愛してるのを差し引いても、人を惹きつけるビジュアルだ。おまけに性格は素直で愛くるしい。こんなに愛すべき存在、放っておかれる訳がない。四六時中一緒にいられるはずもなく、かといってこちらからこまめに探りを入れる訳にもいかない。いっそ監視でも出来れば、好きな時に一彩の様子を把握出来るのに。さすがにそれを実行するには気が引ける。他に対応策も思い浮かばず、ため息を吐くしか出来なかった。
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