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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    オーソドックスな魔物退治。前回は暗かったので今回は爽やか風。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    ひとり泣いてた狼 公国の北のほう、さりとて氷剣山脈からは外れた、緑深い山の峠に、いつからか人喰い狼が出るようになりました。ええ、魔物です。
     どこの誰の魂がどんな悲劇の末にこの魔物を生んだのか、それはわかりません。神殿公認の霊媒師が訪ねたときにはもう時が経ちすぎていて、狼も己の由来を忘れていました。
     大人の男でも軽々飲み込める大きな口に、びっしり生えた頑丈な人の歯。頬から伸びた手足は細いけれど器用に伸びて、岩肌を伝い尻尾を揺らしながら死角から人に噛みつきます。
     狼が出るのは夕暮れから夜。その時刻には人はその森を避けるようになり、森の恵みを採るにも村同士で行き来するのも難儀するようになりました。

     ある日のことです。峠を挟んだ村のひとつに、旅の神官さまが訪れました。修行を兼ねた巡礼の旅の途中、村の苦境を聞いた神官さまは、二つ返事で狼の元を訪れました。

    「狼よ、かつては人であっただろうあなたよ、なにゆえ人を襲うのか。日の暮れた夜に、一体あなたに何があったのか」

     狼は答えません。月を背に白い毛並みが闇を蹴ります。神官さまを一口にしようとした歯は空を噛みました。身を屈めた神官さまが、杖で一突き、狼の腹を打ち据えます。
     神官さまが祈ると、風が狼の手足を縛ります。狼が吠えると、ツバが毒となって神官さまに降り注ぎました。風が傘となり神官さまを守ると、狼はその隙に崖へと逃れました。
     神官さまが後ろに下がります。狼は追いません。神官さまが前に出ます。狼が吠えて飛びかかります。
     狼を躱した神官さまは、すれ違いざまにその頭を叩きました。頭蓋が割られ、狼が地面に激突します。振り下ろされた杖が狼を貫いて、狼は一声天を仰ぐと、そのまま息を引き取りました。

     ええ、魔物を倒しても、魔物を生んだ魂は消えません。相応に消耗するので繰り返し倒せば薄れて消えていくでしょうが、神官さまはそれを望みませんでした。狼がよく足場にする崖に近寄り、意識を凝らします。
     すぐに、土肌に埋もれた亡骸を見つけました。骨だけになったその亡骸が誰のもので、いつどうやって死んだのか。細かいことはわかりません。崖から落ちたのか、獣の狼に襲われたのか、それとも山賊の仕業か。時は経ちすぎて、その謎を解き明かす機会は失われていました。
     神官さまはその亡骸を弔うと、社を建て、花の苗を供えました。祈りを捧げます。狼を生んだ魂に。狼が殺した人々に。精霊にその命が還るように。

     村人にその弔いを頼んで、神官さまは山を去りました。後を託された村人たちは、そりゃあ夜に行くのは勘弁でしたけど、昼間ならまぁいいかと社を参るようになりました。雨避けの屋根を拭いて、花に水をやり、祈りを捧げ。
     そうして、もう随分と狼を見なくなった頃。かつては恐れられていた山の夜道に、明かりが一つ灯るようになりました。
     社に植えられた花が、祀られた魂の感謝を示すように、淡い光を灯すようになっていました。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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    よーでる

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    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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