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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    こういうファンタジーな力の仕組みを調べて人工的に利用する話が好きです。
    そろそろキャラクターを動かしたいので明日からは主要キャラで何度か話を書いてみたい所存。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    花咲く都の菫橋について 公国の中央、と言いましても、実際の地理で言えばだいぶ西よりです。
     西方は島ですからね。まぁこの世界の地形は曖昧なのですが、住んでる人たちの感覚からすれば、中央神殿は大陸の西端、海に臨む丘にあります。
     光る花咲く丘に建つ白亜の神殿。その裾野のように広がる街並み。南の豊富な食材と歌、東の花や木材、北の高品質な製品、西の海鮮、あらゆる人材が集まり花開く、公国の中枢、文化の最先端。
     白い柱の並ぶ神殿には、原則として許しを得た神官しか入れない庭があります。公国各地の花を集めて咲かせたそこは、【菫橋(すみればし)】と呼ばれる設備です。

     それは果てを目指す島が公国に加わってしばらく経った後のこと。東の森で霊菫(たますみれ)を咲かせている樹に、南の林で霊菫を咲かせているのとそっくりな樹がありました。というかそのものでした。ええ、東の森と南の林に、その樹は同時に生えていたんです。
     ええ、この世界は曖昧ですから。特に霊菫を咲かせるくらい霊力を強く含んだ樹なら、そういうことも……いえいえ、さすがにそれだけじゃ起こりません。
     これは星龍ポリマクリアの龍燐(ブレス)。あわいの海をループさせている現象が、公国の陸地に霊菫を通じて流れてきたのです。

     それが発覚したのは、迷子が原因でした。南の林で光る花咲く樹を見つけたその子は、キレイキレイとはしゃぎながら幹に触ってぐるりと回って、気づいたら東の森に来ていたのです。
     無事神官に保護されお家に帰れましたが、このことで遠くの地と繋がる霊菫の咲く樹……『双子の樹』とも『あわいの樹』とも呼ばれる現象が認識されました。

     では、二つのあわいの樹で道を挟んだら、どうなるでしょう?
     試行錯誤の結果、上手く行きました。霊菫の咲き誇る花街道でなら、あわいの樹に挟まれた道は同じ道と認識され、遠く離れた街道同士が繋がったのです。
     では、霊菫で門を作って見たらどうでしょう。遠く離れた地に、そっくりの門を作って、そこに同じように霊菫の咲く蔦を絡ませてみたら?
     成功しました。しちゃいました。東であわいの門をくぐってみたら、北で作ったあわいの門を背にしていました。
     ならなら、もういっそ、霊菫が咲いてさえいれば、咲いてる別の地に行けちゃったりするのでは?

     こうして用いられるようになったのが【菫橋】。星龍の権能で生じ、人によって運用されるようになった霊的なトンネルです。
     公国中央神殿に設置されたのはその最新鋭。陣を組んだ神官が祈りを捧げることで同じ種の霊菫を霊的に同期させ、一時的にあわいの花にして。同じ花の霊菫が咲く他の地に繋げます。
     霊菫が咲いている場所同士でないと繋がらないので、ほとんどの花が枯れる冬……花龍の龍脈が弱まる季節は使えませんし、神官による丹念な調整と保護が必要、失敗すればどこに飛ばされるかわからないなど、難点も多いですが、この技術により公国の交通は革命が起きました。

     霊菫の咲いている場所同士、大都市の神殿なら直通で行けるのです。中央神殿には各地の主要な神殿に咲かせている霊菫が用意されており、温室で保護して年中飛べるようになっています。さすがに片道ですけどね。
     あわいの樹で挟んだ街道も現役です。人工的に建てるのは大変ですが、常駐する神官が少なく一般の人でも安定して飛べる利点があります。
     菫橋によって龍脈が強いけれど都から離れていたり道中が険しい場所にも早く行けるようになりました。まだまだすべての人が気軽にとは行けませんが、それもこれから変わっていくでしょう。菫橋によって栄えた街もあれば廃れた街もありますが。それもまた人の世の移り変わりです。

     ではそろそろ、実際に旅してる人々の冒険を見てみましょうか。今を生きる人たちのお話。四人の旅人と一柱の龍の物語を。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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