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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    公国南方の紹介。しれっと実龍の二つ名変えてますがイメージカラー入れ忘れてただけです。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    南の歌う農村と砂塵の歌姫について 公国南方の農耕地帯を守護する沃野の九尾/小川華やぐ金狐/実龍アンシステルウマの龍燐は【霊土(たまつち)】と呼ばれる現象です。土と呼称されていますが、その源は流れる川にあります。
     アンシステルウマは荒野を潤す一筋の小川から生まれた龍。その水を浴びた大地は肥えて、作物をよく実らせるようになります。
     ゆえにアンシステルウマの水を浴びた土は霊土と呼ばれ、信仰を浴びた川は今ではいくつにも枝分かれして、公国を潤す大河となりました。

     さて、一口に作物をよく実らせると言っても、植物によって好む土は様々です。霊土はよく風を通し、水をよく溜めてよく通す、滋養豊かな土ですが、それだけですべての作物に適した土と言えるのでしょうか?
     もちろん言えます。何故なら、アンシステルウマの水を撒き土を耕す者たちが祈れば、霊土は彼らの祈った通りに形を変えるのです。

     えんやこらさっさ♪ えんやこらさっさ♪ 踊れ土土♪ 水といっしょに♪
     粘ってヌラヌラ♪ しっぽり重なり♪ だけど息は きちんと吐いて♪
     手をつないで窓開けろ♪ 風に汗拭き髪に口づけ♪ 土水仲良し元気な証♪

     と、これがオーソドックスな歌ですね。え? 下品? やだなぁ。風通しが良くて水捌けが良く保水性に優れた沃土を願う歌だよ? 何を邪推したんだい?
     ともかく、作物を育てる村によって歌詞が違って、合わせてリズムも変わる。基本的にはその土地の土を活かした作物を育てるから、霊土に祈るのは病毒や害虫避けが多いかな。それと栄養補給に酸度調整。祈りを養分にできるのが、霊土のいいところだ。

     えんやこらさっさ♪ えんやこらさっさ♪ 笑え土土♪ 水といっしょに♪
     体洗って口づけろ♪ お前は俺の♪ 悪い虫なんてお呼びじゃない♪
     いつも元気でいておくれ♪ 俺を元気にしておくれ♪ 疲れていたなら知らせておくれ♪
     体を洗ってキスをくれ♪ お前が洗ってくれるなら♪ 俺はいつでも元気溌剌♪

     え? これは法術か、それとも巫術か? ふふ、そうだね。精霊に通じやすいリズムの研究はされてるけど、体系的なものじゃない。歌う人々が全員神官だなんてことがあるわけもない。
     分類上は法術になるのかな。でも祈りが届くのが法則と言い切るのはちょっと寂しい話かな。じゃあ巫術かな。言ったろう? ふたつの境は意外と曖昧なんだ。区分に意味がないこともままあるしね。

     さて、そんなわけで公国南方において音楽は大事な資質です。
     アンシステルウマに感謝を捧げ豊穣を願う祭りでは、村の舞い手たちが太鼓や笛に合わせて神殿で踊りを披露します。空の下に伸び伸びと広がる歌声は、都の劇場で奏でられる繊細な歌舞音曲とは違った趣で人気があります。

     そんな南の村の一つに、とても伸びやかな美しい歌声の女の子がいました。細く澄んだ歌は力強く天を衝き、大地に染み渡り、精霊を揺さぶります。
     どのくらい魅力的な歌声だったかというと、底の底の土まで彼女の歌を聞きたがるせいで、異様に通気性が良くなり、彼女が水を撒いた霊土はみんな砂になってしまうほどです。

     発覚したのは子どもの頃だったので、そこまで大事にはなりませんでした。畑の一角が砂地になったくらいです。そこそこ大事? そうですね。
     家族も驚き、慌てました。祈りの歌は公国の農業を支える基本です。それができないとなると……いえ、できないわけではないのです。並外れた音痴なら家族もすぐに諦められたでしょう。でも娘は、とても素晴らしい歌声だったのです。
     神官さまが調べてくれて、精霊に疎まれているわけではないことも証明されました。むしろ逆です。とても美しい歌声だからこそ、土が見る見るうちに砕けて砂になり、風に乗って舞い散るのです。

     結局、娘は農家の道を諦めることになりました。
     ある日のことです。土砂崩れで道が塞がり、村はたいへん困りました。そのときです。
     土砂を掻き出そうと汗水垂らす男たちを掻き分けて、駆けつけた娘は土砂に水を撒きながら歌ったのです。

     どっこらしょ♪ よっこらしょ♪ 重たい体♪ 運んで七夜♪ 一休みにはもう飽きた♪
     どっこらせ♪ よっこいせ♪ ここらでいっちょ♪ 運んで八倒♪ 八方塞がりには飽き飽きだ♪
     見せましょ九尾に♪ 一等賞♪

     娘が歌い終えたときには、土砂は砂埃となって風に散り散りになっていました。歓声を風に乗せて広めていく砂利とは反対に、村人が歓声を上げて娘に駆け寄ります。
     娘は大変に感謝され、娘はこれを生きる道にすることにしました。旅支度を整え、南の村々を訪ね歩き、砕いてほしい土を砕く旅に出たのです。

     意外にも砂を求める声は多く、娘はたちまち人気になりました。ガラスの材料、土嚢造り、河岸の整備。砂は至る所に必要です。
     娘はいつしか砂姫と呼ばれるようになり、砂姫が砂を作るときには大勢の人が作業を止めて耳を澄ませ、その歌声に感嘆の息を風に漏らしました。

     いくつもの賛美の声を浴びながら、今までの旅で最も印象深かった場所を尋ねられると、砂姫は決まってこう答えたそうです。

    「故郷だわ。故郷が一番好きなの。食べ物も、空気も、人も、文化も、故郷が一番好き。叶うなら、ずっとあそこにいたかった。
     ええ。あそこに私の居場所はなかった。あそこでは私は生きられなかった。わかっているの。だけど。
     あそこは、私の故郷だったから」

     そう告げる砂姫の表情は寂しげで、人々はそれ以上、何も言えなかったそうです。

     数多の岩を砕き、河岸を砂で癒し、人々の暮らしを大いに助けた、実龍の寵愛厚き砂塵の歌姫。
     その亡骸は故郷へと運ばれて、その墓は今も輝く霊菫に囲まれているそうです。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
    1226

    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
    3002

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    3002