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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    せっかくのヒロイン闇堕ちなんだからこんくらい暴れてくれて良かったんですよ、という煩悩アクションパートです。
    ノウェパートはあと1回の予定!

    ##二次創作
    #DOD

    罪の終わり、贖いの果て(5)『ノウェ。マナは僕が。あなたはエンシェント・ドラゴンを!』

     飛んできたセエレの思念に、ノウェはレグナを駆りエンシェント・ドラゴンへ突進した。
     罠かもしれないとは考えた。だが、今のノウェに他に縋るものはなかった。

    『悠久の果てに神の尖兵と成り果てた先達よ、今その呪縛から解放しようぞ!!』

     レグナが吠え、蒼炎が古竜の鱗を抉った。ノウェの光刃が追撃し、その下の肉を削ぐ。
     古竜があぎとを開き、角と一体化した頭部がノウェたちを見た。

    「レグナッ!!」

     返礼のブレスが空を灼いた。聖なる竜の異名に相応しい真白い炎が、直撃を避けレグナとノウェがそれぞれ二重に障壁を張ってなお、肌を炙り視界を眩ませる。
     長期戦は不利。下手に避ければ地上のセエレ神官長らゴーレム群も焼き払われる。魔力で治癒力を活性化させながら、ノウェはレグナと魔力を一体化させた。
     竜騎士の本領。魔力の交流が互いの魔力を爆発的に強める。
     レグナの力が高まっているからか、ノウェ自身の成長か、交感はかつてなく深く、湧き上がる力は絶大だった。膨れ上がった青い輝きに、古竜が再びあぎとを開く。

    『このまま突っ込む!』

    『は、おまえも馬鹿者になったものだな!』

     レグナの思念に歓喜が滲むのを聞きながら、ノウェはレグナと共に視界を埋め尽くす白い炎へと突進した。

      *  *  *

    『ららら、天使が歌った、天使は笑うよ、らららら、天使!』

     調子外れに響く神の思念を聞きながら、セエレは無数のゴーレム兵を操作した。
     ゴーレム兵一体一体の力は、ドラゴンに遠く及ばない。空は飛べないし動きも遅い。出力と耐久性はなんとか及第点だが、持たせられた機能は魔弾と障壁のみ。速射と溜め撃ちは切り替えられるが、それだけだ。
     だが、セエレが指揮を取ることで、ゴーレム兵は群れとして機能する。降り注ぐ神の魔弾を、セエレはゴーレム兵の障壁を組み合わせて規模・硬度・密度すべてを向上させた多層結界で撃墜した。

     ゴーレムを生み出し、操る石の里。帝国軍に滅ぼされた故郷の技を、セエレは復活させ、進化させた。
     それを可能としたのは、セエレの契約相手、心の芽生えた稀有なゴーレムだ。
     彼の思念を他のゴーレムと連結させ、全体で一つのゴーレムと認識させる。セエレが指示を出すのは彼だけでいい。それだけで、無数のゴーレムが一個の生き物のように完璧に連携する。

    「ごめんね、ゴーレム」

    『ゴゴゴ、ヘイキ。セエレ、ヤクニタツ……ウレシイ』

     健気で頼もしい友の言葉に微笑をこぼす。自分の心だけが大人になり、彼を置き去りにしてしまったような気がしていたが、それでもやはり、自分の相棒は彼だった。

    「うん……行くよ、ゴーレム!」

    『ゴーッ!!』

     気合の言葉と共に無数の魔弾が波のように神へ殺到した。弾速を調整し、絶え間なく妹の体へ浴びせかける。
     未だ本来の器を取り戻していない神にとって、仮ではあってもマナは希少な器。いくら攻撃しても神が防ぐだろうが、万一命中したら。
     それでも、セエレは攻撃を緩めなかった。

    『ららら、わたしが憎いのね? お兄ちゃん。怨んでるのね? 殺したいのね? 愛されてるから!!』

    「君を憎んだことなんてないよ、マナ」

     神が代弁する妹の思念に、セエレはささやいた。妹には届かない言葉だ。
     セエレが憎んだのは自分だ。あの頃も、今も。妹を見捨てて母の愛を甘受した。自分が母を諌めていたら。せめて、マナを逃していたら。世界が滅びることは、少なくとも、マナが神の器になることはなかった。
     そして、マナがセエレとの対話を拒み、鍵を破壊することも。自分に彼らを責める資格も、罰する権利もない。誰よりも世界を救い、赤き竜を、カイムを救わなければならなかったのは、セエレなのだから。

    「自分を責めてはなりません、セエレ。
     ……あなたは、たったの六歳だったのですから」

     肩に触れた穏やかな声に、セエレは顔を上げた。
     微笑みを浮かべる歳経た男、盲目の隠者レオナールが、朧に舞い飛ぶ誘導弾を放ち神の魔弾を撃墜する。
     十八年間、ずっと自分を守ってきた男に、セエレは首を振った。レオナールも家族を失い、自分を責めているのを知っている。秘めた欲望も今は知っていたが、それを堪える真心を信じてもいた。

    「ぼくはもう、二十四歳なんだ。だからいい加減、お兄ちゃんをやらなくちゃ」

    「……大きくなりましたね」

     レオナールの微笑みに水を差すように、絶叫がふたりの間に飛び交った。

    『うっぜぇぇぇぇ! くっせぇぇぇぇ!! なぁぁあにイチャついてんですかぁ。時と場所を弁えてくださいよぉ、神官長さぁぁん』

    「フェアリー」

     レオナールと契約した妖精が、鼻を摘んでわざとらしく舌を突き出してくる。
     今更その毒舌に付き合う気も起きなかったので、セエレは鷹揚に頷いた。

    「そうだね、ごめん。レオナール、頼める?」

    「お任せください」

    『はぁぁぁぁ? テメェらで勝手にやってろよ。俺はいち抜け、ぐぇっ』

    「私とあなたは一蓮托生、そうでしょう?」

     フェアリーを掴み、レオナールは宙へ跳んだ。魔力が背中に翅を形成し、フェアリーの鱗粉が誘導弾となって神の魔弾を撃墜する。
     ゴーレム兵の弾幕も厚みを増し、神は次第に追い詰められていった。障壁を兼ねた光の帯が穴だらけにされ、撒き散らす魔弾が一つも地上に届かない。

     不意に障壁を消して、神は両手(もろて)を挙げた。

    『殺したいんでしょ? どーぞっ』

    「──…」

     ゴーレム兵の魔弾が、外れた。マナの体を掠めて、背後へと逸れていく。
     勝ち誇った笑顔で、神がレオナールを指差す。唇が呪文をさえずろうとして、止まった。

     マナから逸れた魔弾がそのまま旋回し、天使文字を描いていた。呪文の檻がマナを囲み、神を閉じ込めようとする。

    『おのれ、まだ抗うか。醜い、醜いぞ、人間!!』

     苛立つ神の思念を浴びながら、セエレは檻の完成を急いだ。魔弾を掻き消し逃げようとする神を、レオナールがフェアリーの鱗粉を飛ばして邪魔立てする。
     檻の完成まで、二手足りない。セエレは悟ったが、ただ手を動かした。

     檻を砕こうとした神の魔弾をレオナールが撃ち落とすが、続く光の帯が広がるのを止められない。
     地上から閃いた純白の光条が、光の帯を斬り裂いた。魔槍を掲げた女騎士が崩れ落ちるのを、レオナールが掬い上げる。あと一手。
     檻の端に届いた神が、そのまま結界の外へ逃れようと手を伸ばす。

    「マナを、返せぇぇぇえええっ!!」

     振り下ろされた光刃が、障壁となりその門戸を閉ざした。
     エンシェント・ドラゴンを貫いたノウェが、レグナとの共鳴を解かぬまま神を阻む。

    「天の時よ、凍りつけ」

     結界が完成し、指を伸ばし顔を引き攣らせた姿勢のまま、神は空中で静止した。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
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