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    よーでる

    推敲に超時間かかるタチなので即興文でストレス解消してます。
    友人とやってる一次創作もここで載せることにしました。

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    よーでる

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    公国ガイド北方編。今回も異名をマイナーチェンジしてますが、これは設定変更ではなく時代の流れで異名が変わったパターンです。ヤマアラシとハリネズミは別の種ですが龍はイメージ生物なので変身させてみました。

    ##龍のうたった祭り歌
    #龍のうたった祭り歌
    festivalSongsSungByDragons

    北の勇ましき人々と不壊の氷について 山の薄氷/銀嶺を抱く火鼠/鋼龍カウンキパゴウンの守護する公国北方。山脈が大半を占めるこの地方の、最も高く険しい山の奥、夏も雪が溶けることなき銀嶺の頂きに、深々と雪の降り積もる氷河があります。
     そこがカウンキパゴウンの生まれたところ。彼の本体。北の龍脈の奥地。かつてはマグマの沸き立つ噴火口だったそこは、今は内から光を発する氷が積み重なる、底のない洞窟になっています。
     この氷が【霊鋼(たまはがね)】。カウンキパゴウンの霊力を凍てつかせた、決して熔けず壊れぬ氷です。

     霊鋼は祈りによってのみ形を変えます。とはいえ、言葉では金剛不壊の霊鋼に響きません。ですので、鍛冶師たちは炎と槌で霊鋼に祈りを伝えます。
     ええもちろん、炎で霊鋼を熔かすことはできませんし、ハンマーで霊鋼を曲げることはできません。でも祈りが届いたら。霊鋼はカウンキパゴウンのかつての形、万物を熔かす炎の姿を思い出すのです。
    【鋼火(はがねび)】と呼ばれる白い炎になった霊鋼は、そのままだと何もかもを熔かして消えてしまいます。ですので鍛冶師は霊鋼と鉄を混ぜて熱して、まず鋼火に鉄を沸かしてもらうのです。

     沸き立つ鉄を何度も叩いて、叩いて、重ねてはまた叩いて、鉄の不純物を追い出し純化させていくたびに、鋼火もまた純粋な炎へと還っていきます。そうして鋼火を宿した鋼を望む形に整えたら、用意しておいた水桶で一気に冷やすのです。
     水桶の水はどうなるのかって? 凍ります。鋼火が霊鋼に戻りますからね。桶に張り付いた白い霜を剥がすと、そこには冷えて成型された鋼と、その鋼と瓜二つの形になった【霊鋼】が輝いています。

     これが霊鋼の加工法です。霊鋼の依代になった鋼を【純鋼(すみはがね)】と呼びますが、こちらも大変価値の高いものです。もちろん霊鋼には及びませんけどね。
     霊鋼で作られた武器は、どんな魔物もバターのように切り裂く最上級の退魔具です。法術の媒介としても最高峰のため、需要は増々高まっています。
     それともう一つ。霊鋼は北の人々を温める炉火でもありました。

     暖炉に置いた霊鋼に槌で祈りを捧げると、霊鋼は鋼火のかけらをこぼします。その火は長く残り広く空気を温めます。民が祈りを捧げたままに。
     さすがに花街道が敷かれた今では東部から輸入した薪を使う家庭のほうが多いですが、古くから住んでいる家には炉火に使っていた霊鋼が家宝として残っていますし、北部の大きな都市は今でも大きな大きな霊鋼で街全体を温めていますよ。魔物避けにもなりますからね。最近だと巨大法具を動かす動力源にもなるのではと注目されています。

     さて。そんなわけで、霊鋼は北部の生活に密接に関わり、カウンキパゴウンの元にその氷を採りに行くのは名誉ある行いでした。
     カウンキパゴウンの大氷穴の深くほど、澄んだ大きな霊鋼が採れます。ええ、霊鋼を氷穴から剥がすのに必要なのもまた氷。浅いところで祈りを込めてハンマーを振るえば細かい欠片が、深いところで振るえば中々剥がれない限りに重く大きな欠片が採れます。
     山の頂きまで登り洞窟を降りてまた帰るのがどれほどの難行か。しかも帰りは重く冷たい霊鋼を背負っているのです。大氷穴から出るまで、霊鋼は骨さえ貫く冷気を発し続けます。
     その身を温めるのもまた霊鋼。ハンマーで叩いた空気を熔かす鋼火で身を温めながら、採掘者たちは帰り道を目指します。鋼火を使いすぎては持ち帰るはずの霊鋼まで火に還ってしまいます。さりとて節約しようとすればたちまち骨身がかじかみます。自分がどれだけの重さの霊鋼を持ち帰れるのか、その寒さにどれだけ耐えれるのか。その見極めが重要です。
     中には見極めを誤り、氷穴で凍てつき霊鋼の一部になった者もいます。それもまた祈りの証。カウンキパゴウンの試練を超えて生還した者のみが、霊鋼を持ち帰る栄誉を得るのです。

     そんなわけで、公国と繋がる前の氷剣山脈では霊鋼を持ち帰るのが成人の儀でした。今では専門の訓練を積んだ人たちの仕事ですけどね。ええ、男たちが山へ登り、女達は無事の帰りを祈り。愛する人との婚姻を認めてもらうため、無茶をした若者も随分といたそうです。
     山での生活は力強く丈夫な体が大事ですので、かつての氷剣山脈では家長は男が務めるものという風習があり、今でも根強く残っています。え、どうして廃れそうなのかって? どうしてって、うーん、じゃあ、今日はその話をしましょうか。

     大きく重く澄んだ霊鋼ほど、鋼火にした際の熱効率が高く、炉火として長く使えます。魔物を祓う剣も大切ですが、街を照らす明かりは山を拓き新たな居住区を興すのに不可欠です。
     ですから、街の長を決めるのもまた持ち帰った霊鋼の大きさで決まりました。いえいえ、あながち統治と無関係とも言い切れませんよ。
     霊鋼を持ち帰る難行は、一人では成し得ないもの。一人では抱えきれない重さの霊鋼も、二人なら持ち上げられます。三人ならもっと。四人以上で仕事を分担できればもっと。
     たくさんの人を借りれる人望、集まった人に適切に仕事を割り振る采配、街を暖める霊鋼を持ち帰るのに必要なそれらは、そのまま人を率いるのに大切な能力でもあります。

     さあ、あの明かりを見てください。街の中心に聳える巨大な氷の柱、いいえ、輝く剣を。あれこそが氷剣山脈の歴史で最も大きな霊鋼。捧げられた祈りで鋼火を燃やし、時を経ても欠けることのない、氷剣山脈の宝です。
     あれを持ち帰ったのはどんな益荒男たちだったのかって? ふふ、あれを持ち帰ったのは小柄で可憐な乙女。そう、アデラ公子殿下です。
     いえ、お一人で。はい……王族の力で。山頂までひとっ飛び、両手で霊鋼を掲げて、どしっと広場に突き刺して、「これでわたしがここの長ね!」と。
     氷剣山脈の公国参入、そこそこ揉めたんですよ。当たり前ですけどね。それを納得させるのに地元の慣習を利用したわけなんですけど……いえ、アデラ様は聡明な方でしたよ。決して脳筋では……あったかもしれませんが。ちょっと当時の氷剣山脈は度の過ぎた男尊女卑で、それでお冠に……ええ、普段はもう少し、手心が……もうちょっとは……

     ともかく、それで女性は霊鋼を持ち帰るのに適さないという偏見は破壊されたわけです。なにせぶっちぎりで巨大なやつを目の前で持ち帰られちゃったので。いえ王族を一般女性にカウントするのは無理があるんですが、インパクトって大事ですからねぇ。
     今では法術や仙術が広まって、女性の採掘隊も増えてますよ。そもそもリーダーシップに性差はないですからね。女の癖にとか言うと笑われるようになってますよ。お前毎日誰が持ち帰った鋼火で暖められてると思ってんだよって。霊鋼の採掘で亡くなる人も随分減りました。

     これが公国北方です。いかがでしたか? そうですね、寒くて春と夏が短い場所なので、咲く花が少なく霊菫の恩恵が限られているのは大きいかもしれません。山に流れる川が霊土の川と合流するのも麓を過ぎてからですし。独自の文化が色濃く残っている地方と言えるかも知れませんね。
     とはいえ、変化は徐々に訪れてます。良きにつけ悪しきにつけ、それが人の世、いいえ世の中というものですから。
     これなんかが一番わかりやすい例でしょうか。食べます? カウンキパゴウン饅頭。可愛いでしょ、フカフカの白い皮に糖衣で角を立てて針に見立てて……え? ああ、はい、聞き間違いじゃないですよ。カウンキパゴウン饅頭です。
     山を踏み荒らして吠え猛っていた豪猪(ヤマアラシ)は、今は人の掌に収まる愛らしいハリネズミに。畏れ敬われていたカウンキパゴウンは、今は愛され親しまれる存在に。人の世の移り変わりは、自然の象徴たる龍にも無関係ではないのです。
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    よーでる

    PROGRESS完!! うおおお、十数年間ずっと頭の中にあったのでスッキリしたぁ。
    こういうカイムとマナが見たかったなー!!という妄執でした。あとどうしてカイムの最期解釈。
    またちょっと推敲してぷらいべったーにでもまとめます。
    罪の終わり、贖いの果て(7) 自分を呼ぶ声に揺すられ、マナはいっとき、目を覚ました。ほんのいっとき。
     すぐにまた目を閉ざして、うずくまる。だが呼ぶ声は絶えてくれない。求める声が離れてくれない。

    (やめて。起こさないで。眠らせていて。誰なの? あなたは)

     呼び声は聞き覚えがある気がしたが、マナは思い出すのをやめた。思い出したくない。考えたくない。これ以上、何もかも。だって、カイムは死んだのだから。
     結局思考はそこに行き着き、マナは顔を覆った。心のなかで、幼子のように身を丸める。耳を覆う。思考を塞ぐ。考えたくない。思い出したくない。思い出したく、なかった。

     わからない。カイムがどうしてわたしを許してくれたのか。考えたくない。どうしてカイムがわたしに優しくしてくれたのか。知りたくない。わたしのしたことが、どれだけ彼を傷つけ、蝕んだのか。取り返しがつかない。償いようがない。だって、カイムは、死んでしまったのだから。
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    よーでる

    DOODLE公主は本来プリンセスという意味ですが、祭り歌では公国の代表という意味の言葉になってます。アデラさんは武闘家系ギャルです。
    ほんとは東西南北それぞれの話するやるつもりだったけど西と南はちょっとド鬱なのでまたの機会にします。子どもに無配慮に聞かせたら怒られるやつ……
    一通りの世界観の説明が終わったので、明日からはこの世界観で単発話を量産する予定です。
    公国の興り(2)凍てず熔けぬ鋼の銀嶺 道行く花に光を灯しながら、アデラティア公子一行は海に臨む丘にたどり着きました。丘に咲く白い菫を見渡して、公子は軽やかに宣言します。

    「ここにわたしたちの都を作りましょう」

     こうして光る菫の咲き誇る白き都コノラノスは作られました。号は公国。龍王国最後の公子が興した国です。
     公子は精霊の声を聴く神官を集め、神殿を築きました。血ではなく徳と信仰で精霊に耳を澄ませ、精霊の祈りを叶え、世に平穏をもたらし人心を守る組織です。
     国の運営は神殿の信任を受けた議会が行います。アデラは神殿の代表たる公主を名乗り、花龍ペスタリスノの光る花【霊菫(たますみれ)】を国に広めました。

     霊菫は花龍の息吹。花の光が照らす場所に魔物は近寄らず、死者の魂は慰められ、地に還ります。公国が花の国と呼ばれる由縁です。
    3002

    よーでる

    DOODLEどんどん敬語が剥げてますが語りじゃなく講義だからということで……
    あと大まかな国の特徴語ったらひとまず単発ネタ書き散らす作業に入れるかなぁ。
    ぶっちゃけお話の途中で世界観説明しようとすると毎回語りすぎたりアドリブで知らん設定出たりするのでその事前発散が狙い……
    巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
     精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
     この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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    よーでる

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     欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
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