とある傭兵部隊の話「おれの情けないとこを見たんです。隊長も何か情けない話を教えてください」
部下の無茶振りに、少し考えて男は答えた。
「俺の妻は知っているな?」
「ああ、はい。任務で結婚する必要があって、奥さんもそれは承知で……一昨年亡くなったんですよね?」
「ああ。薄情な女でな。俺の先輩で、年上の部下になった人の娘で、父親の葬儀に涙も見せなかった。
俺が『父君には生前お世話に』と挨拶すると、『そうですか』と一言。
『悲しくないのか』と尋ねると『あまり家に寄りつかない人でしたから。もちろん感謝はしてますけど』と淡々と。
俺にも、最期までその調子だった」
隊長がそこで話を終えたので、部下は戸惑った。
「今のが、隊長の情けない話ですか?」
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