巫術と法術について 今の世界の魔法は大きく分けて2種類あります。1つは精霊に語りかけて世界を変えてもらう魔法。王族が使っていたのがコレだね。
精霊……王祖の末裔じゃなくても、精霊の声を聞きその力を借りれる人は増えています。それが龍王国衰退の遠因になったわけだけど、今はいいか。
この方法は【巫術】と呼ばれています。長所は知識がなくても複雑な事象が起こせること。細かい演算は精霊任せにできるからね。代表的なのが治癒。肉体の状態や傷病の症状を把握するに越したことはないけど、してなくても力尽くで「健康な状態に戻す」ことができます。
欠点は精霊を感知する素養がないと使えないこと。だから使い手は少ない。それと精霊の許しが出ない事象は起こせない。代表的なのが殺傷。自衛や狩りは認められてるけど、一方的で大規模な殺戮は巫術でやろうとしてもキャンセルされるし、最悪精霊と交感する資格を剥奪されます。
もう1つは自身の霊力、魂を使う魔法。魔物を生み出す魔法、と表現すると聞こえが悪いけど、要は使い方さ。
自分の魂を直接起こしたい事象に変換して世界に流し込む。長所は使い勝手がいいこと、精霊の許しが降りない事象も起こせること。悪事に使えそう? 否定はしないけど、精霊の指定する禁止事項は女の子の価値観というか倫理観というか「世界はこうだった」って実感が基になってるからね。理不尽なのも多いんだよ。「死者は蘇らない」もそうだけど、「時間は巻き戻せない」とかね。
欠点は消耗が激しいこと。特に起こしたい事象を正確な知識に基づいて導かないと、精霊に修正されて消耗が激しくなり効力も減衰する。その点さえクリアすれば誰でも使えるんだけどね。現状だと巫術の下位互換と見なされがちだ。
この方法は【法術】と呼ばれています。法則の理解が大事な技術だからね。うん? ああ、よく気づいたね。そう、霊力を使って事象を起こすという点だけで見れば、人間の使う法術と巫術の区別は意外と付けづらい。世界、即ち精霊への理解が必要なのは巫術もいっしょ。法術の呪文は精霊への祈りにも通じる。
だから魔物の使う魔法を法術と分けて【外法】と呼ぶこともあるけど、うーん、あんまりいい言い方じゃないんだよね。魔物を利用して魔法を使うのも外法って呼ぶからそっちのイメージが強いし。犯罪者と死んだ霊をごっちゃにするのってあんまり良くないでしょ? うん、納得してもらえてよかった。
法術は公国で主に発展しています。王族がいなくなって苦労したからね。四柱も龍と交流のある国が、精霊に頼らない国造りをしようとしているのは面白い。
もちろん巫術の使い手もいるけど、彼らも法術を習い併用しています。海上連盟や教会都市は龍の加護で巫術を使える人が多いから、純粋な法術はそこまで発展してません。
ひとまずはこんなところかな。明日は公国と龍の話をもう少し詳しくしようか。龍と彼らから広がる世界の話。その下で暮らす人々の話を。