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    ねこまんま

    @GWT60624633

    GW:T K暁
    ねこが自分の食べたいものを自炊するところ🍙

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    ねこまんま

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    KKと暁人がデートをする話。
    ※ワンライ用ネタを供養します。南無三。

    #K暁

    「こんなに美味しいのに食べられないなんて勿体ないね」そう言いながら暁人はハンバーガーを頬張った。側から見れば独り言を言っているように見えるだろう。『こちとら腹は減らねぇからな、問題ねぇよ』
    ゆっくり食え。彼の後ろにふわりと浮かぶ幽霊がそう答える。
    人間と幽霊。渋谷でデートの真っ最中。幽霊はともかく人間動けば腹が減る。立ち寄った商業施設で目についたハンバーガーショップに入った。分厚い炭火焼きのパティが売りのハンバーガーの高さは優に15センチを超えている。それを2つ平気で平らげる暁人を見て幽霊──KKは自分までハンバーガーを堪能した気分になる。暁人が残りのポテトをジュースで流し込むと、2人は再び街へと繰り出す。

    9月とはいえ照りつける日差しはまだまだ強い。味覚もなければ感覚もない幽霊のKKでもアスファルトの上を漂う陽炎を見ているだけで身体が溶けて流れていってしまいそうな錯覚に陥る。いや、溶ける身体もないのだが。こんなに暑いなら家で映画でも見てればよかったね…。普段愚痴などほとんど口にすることのない暁人ですら恨めしそうに太陽を見つめている。

    日陰をたどるように歩き路地裏に入ると突然暁人の嗅覚が反応した。

    「こんなところに新しいカフェができてる」
    ちょっと涼しもうよ、そういって暁人はふらふらと吸い込まれていく。
    『お前、まだ食うのかよ』と言いながらもKKはその後について行かざるを得ない。

    カランコロン。
    新しいカフェだからだろう。店内はおよそ満席だ。
    ホールを忙しく歩き回っていた店員が暁人たちの姿を見て声をかける。

    「いらっしゃいませ〜お二人でよろしいですか?」

    思わず目を合わせる暁人とKK。
    二人が案内されるがままに席につくと店員は暁人とKK、それぞれの前におしぼりとお冷を手早く並べメニューを差し出す。
    「お決まりになりましたらそちらのベルでお知らせください」
    そう言って店員はペコリと頭を下げ、他のテーブルへと向かった。

    「もしかしてKKのこと視えてる?」
    『…霊感が強いのかもな』
    「まいっか。なんかどれも美味しそうだよ」真剣にメニューと対峙する暁人を見てKKは、さっき食ったもんはどこにいったんだよ…というセリフを心の中に留めた。
    『好きなもん食えよ』

    注文が決まった暁人がベルを鳴らすと先程の店員が飛んできた。
    「フレンチトーストとアイスカフェオレください」
    「フレンチトースト…カフェオレのアイス…お客様はいかがされますか?」
    まさか声をかけられるとは思ってなかったKKは反射的に『ホットコーヒー』と答える。
    店員は再度メニューを復唱すると慌ただしそうにキッチンへと戻っていった。

    「せめてアイスコーヒーにすればよかったのに」
    外に目をやれば地面に落ちる影は色濃く、まだまだ日差しは強そうだった。
    『いきなり聞かれて他に思いつかなかったんだよ』

    でもさ、と前置きしてKKを見つめる暁人の眼差しはいつもに増して優しい。

    「たまたまかもしれないけど、こうやって二人で食事できるのって嬉しいね」

    魂で繋がっている暁人にとってKKは実態のある恋人。すこし地面から浮いているけど。触れられるし、肌を重ねれば温もりを感じる。
    それでも外に出れば実在しない者として扱われてしまうことに不満がないわけではない。いや、大いにある。
    暁人は貴重な時間を楽しみたくて、テーブルの上に乗せられたKKの手に自分の手を重ねてみる。突然なんだよ、とぶっきらぼうに言うKK。周りから見えていないのをいいことに普段はもっと大胆なことをしている事はすっかり棚の遥か上の方に上げている。

    「おまたせいたしました」
    フレンチトースト、アイスカフェオレ、ホットコーヒーがテーブルの上並べられる。もちろんホットコーヒーはKKの前に。

    「いただきます」言うが早いかナイフとフォークを手に取り、熱々のフレンチトーストを口に頬張る暁人。熱いものは熱いうちに。それが暁人の食べ物に対する信条である。それで火傷をすることはままあるのだが。

    コーヒーカップに口をつけたタイミングでKKはふと気づく。斜め向かいの席でパソコンを開いているサラリーマン、後ろ姿で顔がよく見えないがおそらくあれは影法師だ。
    後ろで楽しそうにパフェをつついている学生たち。気配から察するに喜奇童子だろう。
    そっと霊視をしてみれば店内にいる客のうちおよそ半分は人間、残りの半分はマレビトもしくは妖怪だ。
    なぜ店に入った瞬間気がつかなかったのか。今の暁人では戦えない。暁人の身を守らなければならないと、KKは咄嗟に身構える。周りに気取られないよう指先へとエーテルを集中させる。

    しかし店内にはただただ穏やかな時間が流れている。穢れに群がるマレビトたちと異なり、ここにいるマレビトたちには一切の殺気がない。店員だけが慌ただしそうにテーブルの間を行き来している。うまそうな料理がそれぞれのテーブルに運ばれるのを目で追っていると壁のポスターが目に入った。

    「冥コーヒーあり〼」

    美味しいものを食べて満たされていればマレビトも人を襲わない、か。冷たいホットコーヒーを啜りながらKKは心の中で独り言つ。

    暁人はKKのそんな気も知らず静かにフレンチトーストを平らげていた。
    満足そうな顔の頬にはお約束のごとくクリームがついている。KKがいつものように指で拭うと「今日は店員さんに見られてるかも知れないだろ」と暁人は嬉しそうに笑った。

    作成していた書類ができたのだろう。影法師がパソコンを閉じて席をたつ。KKと目が合った彼は会釈をするとそのままレジへ向かった。

    レジ係の横にはふよふよと猫又が漂っている。
    なるほど、この商売上手め。

    まだ食べれるかも、とメニューを捲っている暁人ににつられてKKもメニューを開く。
    『……せっかくだからオレも何か食べようか』
    そうつぶやいた彼の横顔を眺めつつ、暁人はいつもより少し多めの幸せを噛み締めていた。
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