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    何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。

    #クロヒル
    blackHill
    #ロレマリ
    lloremali

    3.C(side:L) ローレンツは大荷物を抱えて忙しそうにしているベレトに手伝いを頼まれた。

    「そろそろ雨が降る。では頼んだ」

     ベレトの指差す方向を見てみれば確かに雲が密集し色濃くなっている。彼から渡された学生宛の手紙は雨に降られる前に配った方がよさそうだった。

     結構な量の手紙の束を確認してみると改めて平民と貴族の違いがよく分かる。貴族の学生宛の手紙は中の手紙を守るため頑丈な紙で出来た封筒に入れられているしその封筒はきちんとその家に伝わる印璽で閉じられている。知識がある者がみれば差出人の名を読まずとも印璽だけでどの家の者が出した手紙なのか分かるのだ。一方で平民の学生宛の手紙は封筒に入っていない。紙が高価だからだ。平民たちは手紙のやり取りをする際、三つ折りにした紙の真ん中に宛先を書き本文はその裏側に書く。書き終わったら中身が見えないように再び三つ折りにして左右の端を折り蝋で閉じるが印璽など持っていないので適当な意匠の印章で閉じる。封筒に守られていないものから早く渡してやる必要があった。いささか焦りながらも敷地内を歩いて回ると皆がどう放課後を過ごしているのかがよく分かる。

     ラファエル以外の平民の学生たちは意外そうな顔をしながらローレンツに礼を言い自分宛の手紙を受け取っていた。左手には名家の印璽で封をされた豪華な封筒の束があるのにローレンツがそちらには目もくれずたった一枚の紙を折ったもの、から配っていたからだ。

    「レオニーさん、先ほどから軽く驚かれるのは何故だろうか?」

     レオニーはいつも堂々としていて何者にも臆することがない。ローレンツはかつて彼女が些か図々しいのではないかと感じたこともあったが今は考えを改めている。彼女はセテスたちの目指す理想、身分や出身地の垣根がない士官学校の在り方を体現しているような優秀な学生だ。

    「ローレンツの日頃の言動のせいだな。領地が大きい順に配りそうに見える」
    「心外だ!そんなことはしない!」

     ローレンツは常に合理的な行動を心がけている。だがその結果、担任であるベレトから呼び出しを食らい級友からは理不尽な態度をとる人間だと思われていた。

    「君たち宛の手紙は便箋が剥き出しだから傷まないように少しでも早く渡したかったのだ。先生が言うにはそろそろ雨が降るらしい」
    「はは、冗談だよ。でも先生が言うなら雨は本当に降るんだろうなあ」

     訓練場に行く途中だったレオニーも空を眺めた。ベレトは口数が少ないが繰り返し天候や地形について言及する。彼に師事すればローレンツもレオニーもいつか初めて訪れた土地でも彼のように空模様を読めるようになるのだろうか。

     レオニーと別れローレンツは次に厩舎に向かった。道すがら他の学生にも渡せたので手紙の束はかなり薄くなりマリアンヌ、ヒルダ、クロード宛の三通だけが手元に残っている。マリアンヌはローレンツの予想通り厩舎にいて馬の世話をしていた。制服が汚れることも厭わず丁寧に鉄爪で蹄についた塵を取り除いてあげている。その姿はローレンツの父が恐れる論客エドマンド辺境伯とはかけ離れていた。だが手仕事に没頭する姿は珍しく萎縮していない。今渡しても受け取れそうにないだろうと判断したローレンツは手紙の束を手にそっとその場を離れ曇天の中ヒルダを探すことにした。

     ローレンツがヒルダを探し出した頃には傭兵上がりの教師の読み通り堪えきれなくなった雨粒が天から落ちてきていた。ベレトは本当に天候を読むのがうまい。ヒルダはちょうど食堂で青獅子の女子学生たちと共に焼き菓子を食べているところだった。

    「先生からヒルダさん宛の手紙を預かっている」
    「ありがとね、ローレンツくん。ああ、これ兄さんからだわ、参ったなあ」

     ヒルダの兄ホルストは隣国パルミラにもその名が知られている勇将だ。彼女自身はその可憐な見た目通り戦いを好まないようだが。

    「すぐに読んで返事を出したいところ本当に申し訳ないのだがヒルダさんはマリアンヌさんと部屋が隣同士だったね?先生からマリアンヌさん宛の手紙も預かっているのだ。渡してもらえないだろうか?」
    「え、厩舎にいなかったの?」

     厩舎にいたが熱心に馬の世話をしていてとてもではないが渡せる状況でなかったことを説明するとヒルダは快く引き受けてくれた。ゴネリル家の印璽で封がされた手紙とエドマンド家の印璽で封がされた手紙が再びヒルダの手によって重ねられる。

    「これで最後寝る前にでもクロードに手紙を渡せば先生の手伝いがようやく終わる」

     クロードは本当に何処にいるのか全く分からない時が多い。無駄に探し回るより消灯前の点呼をやり過ごすために戻ってきたところを捕まえる方が早いのだ。

    「そうか、ローレンツくんとクロードくん部屋が隣同士だっけ」
    「不運なことにね」
    「言っとくけど私はマリアンヌちゃんが隣の部屋なの嫌だと思ったことないからね!」

     この時ローレンツが渡した手紙がきっかけでヒルダとクロードは親交を深めていくことになるのだがまだ誰もそのことには気づいていない。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    4.C(side:H) マリアンヌの鉄筆をすぐに拾ってやれたことからも分かる通りローレンツは気になることがあるとつい目で追ってしまう癖があるようだ。そして自分が見られていることには無頓着らしい。断りきれずに食事を共にした女子学生はさぞ居心地が悪かっただろう、とヒルダは思う。

    「マリアンヌちゃん、何か困っていることはない?」

     先日、マリアンヌに書庫整理の手伝いをしてもらった結果全て自分で作業をする羽目になったヒルダは本格的に彼女が心配になった。マリアンヌには何か根本的な欠落がある。

    「特にないつもりです……」

     養父であるエドマンド辺境伯はマリアンヌとの関係を良好たしたいと考えているのだろう。こまめに手紙や差し入れが届く。だがローレンツから託された手紙をヒルダが渡した時マリアンヌは戸惑っていた。きっと理由を聞いても教えてくれないのだろう。無駄なことはしないに限る。身内になれない他人が踏み込むべきではない領域があるのだ。そう思ってヒルダがマリアンヌに対して引いていた線を数日前、ローレンツはあっさり越えた。
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    MAIKINGロレマリに続きようやくクロヒルの方もちょっとそれっぽくなってきたかもしれません。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    7.B(side:L) ローレンツが厩舎の管理をマリアンヌと共に担当していた時に上空警備を担当していたクロードとヒルダが戻ってきた。金鹿の学級で軽業師の真似事が流行ったことがある。ナイフ投げも軽業もレオニーが飛び抜けて上手いのだがクロードも負けていない。下馬の際に左足を鎧から抜き忘れた人の真似、というのがクロードの得意技だ。羽ばたきやペガサスの嗎に混ざってヒルダが楽しそうに笑っている声が聞こえる。

    「また同じことを繰り返して……ヒルダさんも飽きたと言ってやれば良いのに寛容なことだ」
    「最初拝見した時は心臓が止まりそうになりました……」

     それはそうだろう。普通の馬であったとしても肝が冷える光景だがクロードはなんとそれを上空でやっているのだ。何かひとつでも間違いがあれば死にかねない。好きな人に良いところを見せたいと言う気持ちは分からなくもないがレスター諸侯同盟の次期盟主として相応しくない振る舞いなのは言うまでもなかった。
    2092

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    DONEクロヒル&ロレマリの話、ロレマリ後日談の話です。この話はこれでおしまいです。エドマンド辺境伯がらみの捏造が我ながら本当にヒッデェなと思います。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    19.sequel:L&M 紋章を持つ貴族同士の婚姻は動物の品種改良と似ている。好ましい形質が確実に顕になるよう交配していくからだ。逆に好ましくない形質を持つものは間引かれる。マリアンヌの実父は"おこり"を恐れていた。モーリスの紋章を持つ子供はそれはそれは美しく生まれてくるのだという。両親は美しい乳児を愛さずにはいられない。子供は自分の一族にかかった呪いを知らずに育つが子供の成長と時を同じくして呪いはゆっくりと親を侵蝕していく。

     "おこり"、いや"興り"が訪れると最初はぼんやりする時間が増える。言動に異常をきたしてしまえばもう死ぬまで止まらない。人格が崩れ獣性が剥き出しになっていく。人格が崩れ社会的に破綻し最後はヒトの形を保てなくなる。ヒトのまま尊厳を保ち周囲から愛されて生涯を終えたいなら早く死ぬしかない。モーリスの紋章を持つ一族は前線で武器を持たず治療に専念する修道士や消火隊など危険な仕事に従事するようになった。その結果かつて社会から根絶やしにされかけた一族は信頼を回復し地方で領主を務めるまでになった。それでもモーリスの紋章を持つ一族の生存戦略は変わらない。
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    MAIKING何話か進めばクロヒルかつロレマリになる予定です。

    書いてる人間はこの2年間クロロレのR18本しか出していないのでTwitterアカウントは閲覧注意かもしれません。タイトルはそのうち決めます。
    2.C-(side:H) クロードは他人の喉元に入り込むのが上手い。ヒルダ自身も楽をするために他人の喉元に入り込む自覚があるのですぐに分かった。それにしても十代の男子が女子の体調を気遣うなんて珍しい。ディミトリもメルセデス辺りに頼んでいるのだろうか。そんな訳で不本意ながらヒルダは女子学生の意見をまとめクロードに伝える係をやっている。レオニーは臆さないが盟主の嫡子と言うだけで萎縮してしまう学生もいるのだ。

     一度役割を任されてしまえば期待に応えないわけにいかない。だからこそヒルダは期待をかけられることを嫌い責任というものから逃げ回っていたのだがそうなってみるとどうしても気になる同級生がいた。マリアンヌだ。とにかく何も話さずすぐに一人で厩舎へ行ってしまうので噂話だけが流れている。ダフネル家の代わりに五大諸侯に加わったやり手のエドマンド辺境伯は注目度が高い。おそらくヒルダの兄ホルストの次くらいに学生たちから注目されている。マリアンヌは彼のお眼鏡に叶って養女になったとか目ぼしい若者が彼女しかいなかったから仕方なく彼女を養女にしたとかそんな噂だ。クロードの耳にも当然入っている。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    14.誘拐・下
     ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。見当違いだと分かっていることを敢えてセテスに聞いたら先方が何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。五年前から問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたがそれに加えてエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。

    「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったがそんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
    「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」

     エーデルガルトが見つけたと称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探 2099

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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