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    ltochiri

    二次創作いろいろ

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    ltochiri

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    2019年の秋に書きかけていたもの

    ##斑あん
    ##小説

    本音と分け前 星の砂がきらりと反射する。月明かりの下で流れ落ちていくのは今日が初めてだった。
     手のひらに握り込めるサイズの砂時計に収められたその砂は、これまで何度も時間を知らせてきた。


    『三分間だけ君を助けに行こう』


     これは約束を叶えるための装置であり、再会するためのお守り。
    騙されたと思って使ってみてほしい。そう言って半信半疑の彼女に託された。
     一度目は、風邪をひいて動けなくなった時。
     二度目は、たくさんの荷物を運ぶ時。
     三度目と四度目は忘れてしまったけれど。
     五度目は採寸のモデルを頼んだ時。
     いったいどんな手段を使っているのか。どこにいても、何度でも、呼べば彼は必ずやって来た。
     制限は、駆けつけた途端に始まるカウントダウンのみ。どう使うかは、自由だった。

     星の砂は一定のリズムで落ちていく。さらさらと流れる音が二人に時間を与えていた。
     あんずはストールを巻いて公園のベンチに座っていた。目の前には遊歩道と芝生が広がって、時折トレーニングに励むランナーが通って行く。スポーツドリンクを呷る姿を見て自分も喉が乾いているのだと気がついた。ガシャガシャとコンビニ袋から缶入りの温かいお茶を取り出す。
     キャップは開けずに暖をとっていると、ランナー達の足音に混じって地面を揺らす音が聞こえた。荷物運びをお願いした時もそういえば、と思い出す。外での待ち合わせはそれ以来かもしれない。
     遠くから名前を呼ぶ声量はやや抑えめだ。だがはっきりと聞こえるので、夜間ではじゅうぶんに近所迷惑である。
     プシッとキャップを回してカフェインレスのお茶を飲む。息を弾ませた斑があんずの前にやってきた。
    「眠れないのかあ?」
     到着早々、気遣う風に声をかける斑に無言で同じ銘柄のお茶を手渡した。砂時計がベンチの上でひっくり返される。あんずに急ぐ様子は見られない。
    「四つ葉のクローバーが見つからないんです」
     切羽詰まった様子もなく淡々と求められる助けに斑はスッと目を細めた。
    「一緒に探してくれませんか?」
    「それはわがままを聴いて欲しいってことかなあ」
    「この使い方はダメ、ですか」
     上目遣いの問いかけに斑は弱かった。ダメじゃないぞお、と昼間の太陽みたいな笑顔をあんずに向けて、クローバーってどこに生えているものなのかと訊いた。
     案内されたのはベンチの背もたれの裏だった。スマホのバックライトを点けてしゃがみ込み、手でかき分けて捜索する。
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