Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    yuno

    @inblue_info

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 39

    yuno

    ☆quiet follow

    虚淮独白小話。霜降イラストを見て思いついたちょっとした書き散らし。

    #虚淮
    xuHuai.

    【虚淮】『わからないのか』「あれは何を考えている」
    「わからぬ。読めぬ」
     微動だにしない冷たい顔の下でいったい何を考えているのか。こちらに悟らせようともしない。術に因る解析も不可能。その心の内を何一つ波立たせることなく、ただ静かに沈黙している。
    「虚淮。何を考えている……」



    「……」
     行ったか。
     牢の前に屯していた気配が遠ざかるのに疎ましげに息をつく。
     あれから何度となく干渉を受けているが、そのいずれにも反応を返したことはない。ただ座し、在るのみだ。それ以上の何かを示すつもりはないのだといい加減理解すれば良いものを。

     彼らが自分の処遇を持て余していることは知っている。
     従属するのなら制限の下に解放もできよう。害意があるのなら処断もできよう。
     だが、そのいずれも示さない相手にどうすれば良いのか、彼らは答えを見つけられずに未だ惑っているらしい。

    「……」
     馬鹿め。そう易易と思惑通りになるものか。

     外界と隔絶させるつもりはないと差し入れられた端末。知己の便りに触れることで変化を促す狙いでもあるのだろう。
     だが、虚淮が送ったのは諦聴へたった一言、変わりないかと尋ねたのみ。それへの返答にも既読したのみで新たに何かを返すことはなかった。
     時折洛竹から便りが届く。それにただ目を通し、読み終えれば目を伏せる。それだけ。そうかと思う、ただそれだけであり、そのたった一言を言葉にして返すことはしなかった。伝えるまでもない。既読であることが返答の代わりであり、洛竹もそれは承知しているだろう。

     そうやって時を止めているつもりかと詰る者がいた。馬鹿め。私の意思に関わらず時は勝手に動く。流れ行くものだ。そんな無意味な抗いなどするものか。

     いつまで消えた者を悼むつもりだと嘲る者もいた。それはお前に関係のないことだ。

     我らを恨んでいるのか、憎んでいるのかと問う者もいた。恨む。憎む。その言葉が適切かどうかはわかりかねる。ただ、酷く腹を立てていることは確かだ。

    「……」
     この心に一片の漣も立たぬほどに。この冷えた身に僅かな熱さえ灯らぬほどに。
     もし自分に臓物があったとして、果たして腸とやらは煮えくり返るだろうかと思う時がある。空想にすぎないが、およそ想像がつかなかった。
     ふと己の手に視線を落としても、この両の手は変わらずそこにあり、かすかな震えも見いだせない。

     ただ静かに沈黙を通す己の姿は傍から見れば、なるほど時を止めているようにも見えるだろう。だが、時はこちらの都合などお構いなしに勝手に動く。自分の意思で止めることはできない。

     自分はただ失っただけだ。大切に思っていた者を永遠に失った、ただそれだけだ。その事実を受け入れ、在るだけに過ぎない。

     心が動くはずがない。この身が熱を持つはずもない。そんな気になれない。その必要もない。ただそれだけだ。

     たったそれだけのことがなぜわからない。

    「馬鹿め」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    takami180

    DOODLE攻め強ガチャより
    「澄を苦しませたい訳ではないけれど、その心に引っ掻き傷を付けて、いついかなる時もじくじくと苛みたいとどこかで願っている曦」

    阿瑶の代わりだと思い詰めている澄
    vs
    いつまで経っても心を開いてくれないから先に体だけ頂いちゃった兄上
    「また」と言って別れたのは、まだ色づく前の、青の濃い葉の下でのこと。
     今や裸になった枝には白い影が積もっている。
     藍曦臣は牀榻に横になると、素肌の肩を抱き寄せた。
     さっきまではたしかに熱かったはずの肌が、もうひやりと冷たい。
    「寒くありませんか」
     掛布を引いて、体を包む。江澄は「熱い」と言いつつ、身をすり寄せてくる。
     藍曦臣は微笑んで、乱れたままの髪に口付けた。
    「ずっと、お会いしたかった」
     今日は寒室の戸を閉めるなり、互いに抱きしめて、唇を重ねて、言葉も交わさず牀榻に倒れ込んだ。
     数えてみると三月ぶりになる。
     藍曦臣はわかりやすく飢えていた。江澄も同じように応えてくれてほっとした。
     つまり、油断していた。
    「私は会いたくなかった」
     藍曦臣は久々の拒絶に瞬いた。
    (そういえばそうでした。あなたは必ずそうおっしゃる)
     どれほど最中に求めてくれても、必ず江澄は藍曦臣に背を向ける。
     今も、腕の中でごそごそと動いて、体の向きを変えてしまった。
    「何故でしょう」
     藍曦臣は耳の後ろに口付けた。
     江澄は逃げていかない。背を向けるだけで逃れようとしないことは知っている。
    1112

    takami180

    PROGRESS長編曦澄16
    🦍兄上vs🐒
     猾猿はその夜に狩ることになった。
     まずは山の四方より禁錮陣の内側に入り、一回り小さい陣を張る準備をする。封異陣といって、妖異を封じ込め弱体化をはかる。その後、五年ほど待ち、十分に弱ったところで妖異を滅する。
     気の長い話である。
     問題は封異陣を引く間、猾猿を引きつけておかねばならず、さらには陣の中央におびきださねばならない、という二点である。
     各世家の仙師は陣術の得意な者と、剣の得意な者とで分かれた。さらに腕の立つ者が最前線で猾猿を引きつけることも決まった。
     なお、封異陣を引くのは魏無羨である。
    「私は魏嬰を守る」
     藍忘機の役割は問答無用で決まった。陣が完成したら魏無羨は戦線を離脱する。陣の起動は各世家の仙師たちが行う。
     残った問題は陣中央にどうやって誘い出すかである。
    「ならば、私が妖異を捕まえよう」
     ここでまさかの名乗りがあった。江澄である。
    「怪我してんのに何言ってんだ」
    「捕縛に紫電ほどうってつけの宝具はあるまい。縛仙網では破られるぞ。右腕は使えるのだから、紫電は扱える」
     誰もが江澄を止めようとした。だが、彼の言うことはもっともだった。
    「ほかに縄縛のできる宝 2255