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    みすみ

    妄想をぽいぽい。🛹沼心地良い……❤️🌺、🌹🌺、🐍🌺中心。

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    みすみ

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    遅刻してしまいましたが、こっそりバレンタイン愛暦(アダ暦)。
    付き合っていないけど無自覚片思いの🌺くんと、ちょっとばかり策士な💓さん。

    #アダ暦
    personsCalendar
    #愛暦
    calendar
    ##愛暦

    まだ、知りたくない「今日は何の日か、知っているかい?」
    「……バレンタインデーだろ?」
    「なるほど、君にもそれは分かるんだね」
    「どういう意味だよ」
    「そのままの意味さ」

     クレイジーロックの開放日。ランガと思いっきり滑るつもりでわくわくしながらやって来たというのに、コースを何度か滑って、ゴールの廃工場からスタート地点に戻ろうとしたところで、見慣れぬ車に連れ込まれた。
     エスでもビーフでもないのに、一体何が起こったのかと警戒した暦の隣に座っていた人物を見て、暦の警戒心が最大まで上がる。
     後部座席に並んで座る形で、長い脚を組む男。見慣れた赤い衣装を身にまとい、仮面で顔を隠した男――愛抱夢――に、警戒しながらも疑問が沸く。
     ――なんかあったっけ?
     トーナメント以降、暦は愛抱夢にあまり近寄らないようにしている。ランガと居るとふらりと現れるので完全に回避出来ている訳ではないが、そう言う時の愛抱夢はランガのついでに暦を雑魚と呼んでは煽るような事を言ってくるので、それを腹立たしく思いながら、暦が気に入らないのならランガが一人の時に来れば良いだろうにと、もやもやしたものを抱えてしまう。
     そんな暦のもやもやを知ってか知らずか、愛抱夢はにこりと話し始めたのだった。
    「俺だって、バレンタインくらい知ってるし。っていうか、何の用だよ」
     思わずとげとげしくなる態度に肩を竦めて見せた愛抱夢が、それで?、と自らの手のひらを差し出してくる。
    「……なに?」
    「君は、今の話を理解していないのかな?」
    「はあ?」
     話の見えない回りくどい会話に、眉間に皺が寄るのを感じながら愛抱夢を睨む。そんな暦の反応に、やれやれとこれ見よがしなため息を吐いて見せて、愛抱夢が子どもに説明するように言い直す。
    「今日はバレンタインだろう?」
    「……だから?」
    「何か用意していないのか?」
    「はい?」
     愛抱夢は何を言っているのだろう。思わず聞き返してしまった暦に、出来の悪い子どもを見るような目で見られている気がして、いや、と否定する。
    「なんで、アンタに用意すんの?」
     確かに、昨夜は月日に付き合ってチョコを刻んだりラッピングを手伝わされたし、その分け前としてもらったチョコは先ほどランガ達に渡した。が、それは日頃交流があるメンバーにであって、愛抱夢は含まれていない。そもそも、強請るならランガにだろう。
     そう言うと、不思議そうに首を傾げられる。
    「何故、ボクがランガくんに強請るんだい?ランガくんへは、ボクから贈るのが当然だろう」
     暦にはいまいち理解の及ばない言い分に、はあ、と思わず生返事をしてしまう。
    「で、なんで俺は贈る側なわけ?」
     楽し気な愛抱夢に、いつまで付き合わなくてはいけないのだろうと内心でため息を吐いていると、愛抱夢がずいと身を乗り出してくる。思わず身体を引いて、後頭部を窓に強打してしまう。
    「……ってえ」
     不意打ちの衝撃に目尻に涙が滲むのを感じながら、元凶である愛抱夢を睨むと、にんまりとチェシャ猫のような笑みを口元に浮かべた愛抱夢が歌うように囁いた。
    「だって君、僕が好きだろう?」
    「……は?」
     言われた意味がすぐに理解できず、じわじわと時間をかけて言葉が脳に届く。
    「は!?」
     一体、何を言っているのか。そんな事、ある訳がないのに。
     そう思うのに、顔が熱くて仕方ない。
    「素直じゃないなぁ、君は」
     獲物を甚振るように愉しげに笑われて、何か言い返してやりたいのに言葉が出てこない。座席シートに置いていた手をグローブ越しに握られて、思わず息を詰めてしまう。
    「反応は、こんなに素直なのに」
    「……何言ってんだよ、ばっかじゃねーの」
    「そう思うのなら、振り払えば良いだけだろう?」
     何故、そうしないんだ?と、聞いたことが無いくらい甘い声で問い詰められて、内心でパニックを起こす。
     一体、何が起きているのだろう。どうして自分は、この手を振り払わないんだろう。
     自分で自分がよく分からない。
     混乱しながらも、何か逃げる為のものを探して、ふと上着のポケットに入れたままになっていたペットボトルを思い出して、勢いよくポケットから出すとそれを愛抱夢に放り投げた。緩い放物線を描いたそれを思わずキャッチする為に握られていた手が離れたのを確認すると、体当たりする勢いでドアを開けて勢いよく閉める。
    「絶対!好きじゃねーから!」
     聞こえているかは分からないが、車に向けてそれだけ言うと、連れ込まれたときに落としたボードを拾い上げて飛び乗る。
     どこからどう見ても逃げているのは暦の方だが、今はそれどころではない。
     ――戦略的撤退だ!
     勢いよく地面を蹴りながら、握られた手を握りしめる。グローブ越しで体温なんて感じるはずがないのに、どうしてこんなに熱いのだろう。
    「……意味分かんねえ」
     普段とは少し違った雰囲気で愛抱夢があんな事を言うから、調子が狂う。
    「絶対、そんなこと、ない……っ」
     ランガの事しか見ていない癖に、どうしてそんな事を言い出したのか。
    「……ばかみたいだ」
     自分の方を見る筈がないのに。気まぐれに、あんな風に人を揶揄うなんて、悪趣味にもほどがある。
     軋むような胸の痛みに気付かないフリをして、暦はもう一度地面を強く蹴った。

     ******

     暦が出ていった車内で、反射的に受け止めたペットボトルを見下ろして、愛抱夢は笑う。

    「……今は、これで我慢するとしようか」

     まだ仄かに温かい飲みかけのココアに口をつけて、甘いなとまた笑った。
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    みすみ

    MOURNING最早、ハロウィンてなんだろう、なネタその2(愛暦/アダ暦)です。
    書いて行くうちに、予定とだいぶ変わってしまいました……。
    🧛‍♂️の❤️さんと、その使い魔な🐱🌺くん。それと、🐺な🐍さんも登場します。
    パロな上にかなりの独自設定が入ってますので、いつも通りなんでも許せる方向けです。ぼんやりと中世ヨーロッパ辺りをご想像いただけますと幸いです💦
    そのままの君で 暦は、所謂使い魔と呼ばれる存在である。
     使い魔と言っても、種族も様々、誰に仕えるかも様々だ。猫魔族である暦が契約しているのは、吸血鬼の男だ。
     普通、猫魔族を使い魔に選ぶのは魔法使いが多い。人間の間でも、魔法使いと言えば黒猫、と連想するくらいだ。暦も、そう思う。
     けれど、それは叶わなかった。
     猫魔族は一般的に黒毛の者が多く、次いで白、茶やサビ柄が僅かに居る程度。そんな中、暦は生まれついての赤毛だった。
     いつからかは覚えていない。気がついた時には、路地裏でゴミを漁る生活をしていた。
     恐らく捨てられたのだろうというのは、暦を見た同族の反応でぼんやりと理解した。街中で使い魔として見かける猫魔族の中に、暦と同じ色をした者は居なかったから。
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