竜父子の現パロ設定の妄想竜父子現パロの妄想
読む前の前提
ディーノはパパっ子の幼児5歳ぐらい。ソアラさんは現存で、3人でマンション住まい。バランは会社員で自家用車持ち、ソアラさんは運転できない(もしくはペーパー)。バラン、ソアラの両親は既に鬼籍に入っている。親戚はいるものの、殆どが遠方の為連絡はあまりとっておらず、唯一ブラス(ソアラの母方の伯父)のみ比較的距離が近いため年に1、2度会う程度。
その日はもうすぐ誕生日を迎えるディーノに誕生日プレゼントを買うため、バランの運転する車で3人でレジャースポットのあるショッピングモールへ出かける予定だった。
いつも忙しい父バランの発案であり、ディーノは以前からとても楽しみにしていた。
だが外出の直前、バランに会社から電話が入る。どうやらバランを中心に動いていた案件でトラブルがあり至急来て欲しいとのこと。この案件は社内でも期待の案件であり、その核となるバランは無視するわけにはいかなかった。
仕事に行かなければならなくなったことを2人に伝えると、ディーノは酷く落ち込み泣きわめいた。今度埋め合わせをすると伝えるも、納得せず、しまいには「父さんのウソつき!父さんなんか嫌いだ!」と言われてしまう。
意気消沈するバランだが、ディーノのほうがもっと傷ついていることは分かっていた。妻ソアラにディーノを託し、会社へ向かう。
ソアラはディーノを抱き締めながら、バランも決して本意ではないことを伝える。
「父さんだってウソをつきたくてついたわけではないのよ。父さんが大好きなあなたならわかるでしょう」と。
なんとかディーノも納得し、母と2人で比較的近くの百貨店へと外出した。
百貨店で、ディーノは父の好物をお土産に買う。朝はひどいこといってごめんなさい、と謝るために。
夕方、バランは会社で、トラブルへの対処がなんとか済み、帰路につこうとしていた。
だが、共に仕事をしていた社内の者からニュースを知らされる。バランの自宅近くの百貨店で爆破テロ事件が発生したというニュースだった。3人でもつい最近出掛けた場所だ。嫌な予感がするバラン。
そこで携帯に見知らぬ番号からの着信が。それは妻ソアラと息子ディーノがテロに巻き込まれ病院に搬送されたという最悪の報せだった…。
病院に駆けつけるバラン。そこで聞かされたのは、ソアラがディーノを庇って残念ながら息をひきとったこと、ディーノは辛うじて息はあるものの、重症であることだった。あまりのことに言葉を失うバラン。最愛の妻を失い、さらには息子までも失ってしまうのか…。バランは神に祈るような気持ちであった。
奇跡的にもディーノは一命をとりとめ、順調に回復するかに見えた。
だが意識を取り戻したディーノの様子に、バランは愕然とする。医師の診察によれば、事件のショックで記憶喪失となってしまったらしい。ディーノは事件のことどころか、父バランのこと、自分が誰であるのかさえも忘れてしまっていた。
度重なる不幸に気が狂いそうになるバラン。妻との突然の別れ、息子の記憶喪失だけではない。あの日、自分が約束を守っていればこんなことにはならなかった。その罪悪感が一層彼を苛んでいるのだった。
このままでは父子もろとも駄目になる。そう判断した医師は、父子がしばらく離れて暮らすことをバランに提案する。父子が2人で暮らすことで、まだ幼いディーノの精神が、記憶を取り戻そうとすることに耐えられないのではということと、父バランの今の精神状態では、父子共に妻の後を追いかねないと思ったからだった。
医師の提案により、ディーノと離れて暮らすことを了承するバラン。ディーノは唯一交流のあった親類のブラスに預けることとなった。一方のバランだが、このまま3人の思い出が残る家に住み続けることは耐えがたかった。家を引き払い、ダイには自分は死んだと伝えるようブラスに言い残し、悲しみから逃げるように海外へと赴任するのだった。
それから数年後ーーー
ディーノはダイという名でブラスの家に住んでいた。ダイと名乗っている理由は、記憶を刺激するものはまだ幼いディーノにとってリスクが高いとの医師の配慮によるものだった。
ダイは、幼い頃に事故に巻き込まれて記憶をなくしたこと、その事故で両親は亡くなったのだと聞かされて育っていた。
両親はいないものの、祖父であるブラス、ペットのゴメ、近所に住むポップやマァムといった友人達のおかげで、ダイは自分を決して不幸だとは思ったことはない。
ただ、両親と仲睦まじく過ごす友人達を見るとチクリと胸が痛むことはあった。
両親の顔も覚えておらず、はたしてどんな顔だろうと思ってはいたが、ブラスはそういった写真の類いを所持しておらず、気にはなっていた。
ある時ダイは、ブラスの部屋の押し入れの奥でアルバムを見つける。厳重に保管されていたそれは、ダイが亡き両親と3人で写っている写真達であった。
それを切っ掛けに記憶を取り戻すディーノ。
帰宅したブラスに記憶を取り戻したことを告げる。ディーノにせがまれて、ポツリポツリと当時のことをブラスは語る。
母はあの事件で自分を庇い亡くなったこと。そして父は今は遠く離れた地で生きていることを。なぜ一緒に暮らさず、わざわざ離れた地で暮らしているのかを。
ディーノは父に一刻も早く会いたかった。
だが、同時に不安だった。父は自分のことなど忘れてしまったかもしれない。会ったとしても拒絶されてしまうかもしれないと。
翌日早速ブラスはバランに、ディーノが記憶を取り戻したこと、バランに会いたがっていることを報告する。
驚くバラン。その報せはもちろんバランにとって喜ばしいものだったが、素直に応じる気にはなれなかった。
自分のせいであのような悲劇を招いた上、現実を受け入れられず、遠く離れた地へ逃げた。今更どんな顔をして会えばよいのだ、と。
だがブラスはひたすらに説得を続ける。隠してはいても、時折寂しそうな表情で他所の親子を見ていること。決してあの子は父親のことを恨んだりはしていないだろう、と。
遂に根負けしたバランは説得に応じる。例え冷たい目を向けられようとも、罵声を浴びせられようとも、一目成長した我が子の姿を見届けられればいい…ディーノが拒絶するのなら二度と会わなければいい。それがバランの本心だった。
そして、両者とも心の準備がいるだろうとのことで、1か月後、父子は再び見えることとなった。
1ヶ月後ーーー
そこにはブラスとやや緊張した面持ちのディーノがいた。押し入れでアルバムを見つけてから1ヶ月。朧気ながら少しずつ記憶を補完してきたディーノ。大好きな父にようやく会える…!拒絶されたら…という不安は残るものの、父に会えるという嬉しさのほうが勝っていた。
そしてようやくバランも到着する。2人が待つ室内へ入室する。お互いに姿を確認する父と息子。
一瞬の緊張。だがそれを破ったのはディーノの一声だった。
「父さん…」ディーノの瞳からみるみる内に大粒の涙がこぼれ落ちる。後から後から溢れでるその様子を見、バランの不安は消えた。
「ディーノ…!」手に持っていた荷物を床に落とし、手を広げ片ひざを床につく。
次の瞬間、記憶よりもずっと大きくなった温もりが、バランの手の中へ飛び込んできた。その暖かな身体を、2度と離さぬようしっかりと抱擁する。自然とバランの両目には涙が浮かんでいた。
あの時の失ってしまった悲しみとは違う、歓びの涙。
「おれ…ずっと父さんに会いたかったよ…!記憶がなくったって…ずっとずっと父さんに会いたかったんだ…」
涙ながらにディーノが言う。それはバランも同じだった。
「私もだ…ディーノ。あれから1日足りともソアラと、お前のことを忘れたことはない。本当に…大きくなったな…」
再会の歓びを噛み締める父子。
ブラスはその光景を、我が事のように嬉しく眺めていた。当時この一家に訪れた突然の悲劇を目の当たりにした際は、自分などがこの父子を救うことがはたしてできるのだろうかと思ったものだ。だがこうして、幸せそうに抱き合っている父子を見ていると、自分がしてきたことは間違っていなかったのだと実感する。もうこの父子は自分が助けてやらずとも支えあって生きていけるだろう。ブラスはディーノが我が家を出ていく日もそう遠くないだろうことを感じていた。
それから一時、父子は離れていた年月を埋めるかのように、お互いの話をし続けた。だが、再び父子に別離の時が訪れる。バランのフライトの時間が迫っていたのだ。
また父と会えなくなってしまう…。
落胆し、思わず涙するディーノの頭に手を置きながらバランは言う。
「泣くな、ディーノ。
私は一旦あちらへ戻る。
……引越しの準備と、今まで世話になった者達へ挨拶をしておかねはならないのでな。」
「……!引越しって…じゃあ…!」
驚きと期待の表情を浮かべるディーノに、バランは表情を緩めながら告げた。
「我々はもう離れることはない。
……一緒に暮らそう、ディーノ…」
その数ヶ月後、父子は再び生活を共にすることとなる。
もう二度とこの手を離さない、忘れたりなどしない…。
父子はそんな思いを抱きながら、再び訪れた穏やかな日々を過ごすのだった。
おしまい!