Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    ナカマル

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🐻
    POIPOI 43

    ナカマル

    ☆quiet follow

    #10月3日は103号室の日 おめでとう!
    定時で帰った千景と残業で疲れた至と稽古を頑張った夏組と風呂に入るガイさんが出てくるよ。
    #ナカマルの103

    お前を洗濯機に突っ込んでやろうか◇◆──────────

     同室者が帰ってこない。
     ご飯は残しておいてほしい、と連絡が入っていた。今日の夕飯は、臣のビーフストロガノフだ。茅ヶ崎を置いて先に帰った俺は、自分の分を取り分けるついでに奴の分も器によそって、ラップをかけて冷蔵庫に入れた。
     夕飯を食べ終えたとき、ちょうど夏組の団員たちが戻ってきた。公演を控えている彼らは、ここのところ毎日稽古に励んでいる。手を洗ってきます!と元気な声が聞こえたので、いってらっしゃい、と返した。その間に鍋を火にかけ直して、厚めに切ったバタールをオーブントースターに入れる。
     時刻は八時半を過ぎたが、茅ヶ崎からは連絡が入らない。バタールが焼き上がる頃、六人の若者たちが戻ってきた。
     腹を空かせた彼らは、ビーフストロガノフをぺろりと平らげた。全員が「おかわり」をして、大きなバゲットは六人だけで二本消費した。茅ヶ崎の分を残しておいてよかったな、と思いながら、空になった鍋に水を張る。
    「千景さん、ありがとう。後片付けはオレたちでやる」
    「そう?じゃあ、お任せしようかな。稽古お疲れ様」
     俺は布巾で手を拭いてから、談話室を後にした。ああでもない、こうでもないと演技の話をしながら後片付けをする音が、ドアを閉めても聞こえてきた。

     一〇三号室に戻った。茅ヶ崎からはまだ連絡が来ない。電車なら迎えに行ってやってもよかったが、あいつはマイカー通勤だ。俺は先に入浴も済ませてしまうことにした。
     部屋に散らばる、俺のものではない靴下やTシャツを(不本意ながら)かき集めて、プラスチックのカゴに入れる。それとタオルと着替えを持って、一度電気を消して、また部屋を出る。
     寮にはドラム式洗濯機が三つある。一番右の洗濯機にカゴの中身を入れて、まだスイッチは押さずに浴室へ向かった。
     先にガイさんが入っていて、俺が湯舟に入ると、ザフラからまたスパイスを仕入れる予定だと教えてくれた。そのスパイスを使える料理の話などをしていたら、俺としたことが少しのぼせかけた。
     脱衣所で服を着ながら、茅ヶ崎が衣類を脱ぎ散らかして困ると愚痴を言ったら、ガイさんは少し笑った。そして、「俺は雪白が部屋で着替えているところを見たことがない、魔法でも使っているのだろうか」と真剣に言うので、今度は俺が笑った。
     洗濯機に自分の衣類とタオルを放り込んで、洗剤をポケットにセットして、スイッチを入れた。

     そろそろ何かしら連絡が来ている頃だろうかと思い、再び一〇三号室に戻った。部屋の鍵が開いていたが電気は消えたままだ。
     嫌な予感がして電気を点けると案の定、床に茅ヶ崎が落ちていた。
     俺がそれを足で押すと、ゴロゴロと転がった。意識はあるようだ。
    「風呂は?」
    「入りたいという気持ちはありまーす…………」
     舌打ちをしたら思いの外大きな音が響いた。ベージュの背広とスラックス、それからネクタイとシャツを剥ぎ取ってソファーに放り、なおも床に転がったままの人体を小脇に抱え、立ち上がった。
     洗濯機を一時停止しなければ。まだ「すすぎ」になっていなければいいのだが。
    「ヤッタ〜、全自動俺を風呂に入れてくれる機…………」
    「黙れ」

    ──────────◆◇
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤❤👏💘😍🛀💖💖💖💖🛀❤❤❤❤💘😍💖😍😍❤❤❤❤❤❤❤❤👏❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works