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    わかば

    @wakabatteru
    ビリグレがすきな社会人

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    わかば

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    ビリグレ空のお散歩&プロポーズ


     一歩違えば落下死に直面するというのに、グレイは自分の全権を、全幅の信頼を、当然と言うかの如く寄せてくる。
     それが、むずがゆくて、あたたかくて、うれしくて、何とも表現しづらいのだが、グレイと出会って初めて覚えたこれが、おそらく『あいしている』という気持ちなのだろう。

    ↑ってビリー・ワイズが言ってました
    山場とか落ちとかは消えた……どこ……

    #ビリグレ
    bigotry
    ##ビリグレ

    極東の夜鳥




     消灯時間が過ぎ、日付も越え、辺りがしんと静まる、そんな深い夜。

     ふと、就寝中のグレイは眩しさを感じ、閉じていた目蓋をゆっくりと押し上げる。

    「…………っ」

     開けたばかりの目を、思わず力を入れてもう一度閉じ、眉間にしわが寄った。
     まぶしい、周囲は真っ暗だというのに、

     何故か、まぶしい。

     オプシンを生成して明順応をすればいいのか、ロドプシンを生成して暗順応をすべきなのか。
     まるで両目の機能が混乱しているかのようだ。
     しかしそのまぶしさの中に、ひときわ強く輝くなにかが見えた気がして、グレイは目が光に痛むのを堪えて今一度、目蓋を上げた。




     ────月だ。




     向かい側に位置する太陽の光を反射した、その丸い天体が、地球へと光を注いでいる。

     満月によるものか、過ぎた月明かりは周囲に存在しているはずのいくつもの星々を掻き消し、貴様らの出る幕はないとばかりに夜空を明るく照らしていた。
     建物の陰影がくっきりと伸びる様は昼間の光と混同してしまいそうになる。
     グレイは上体を起こし、布団から出て窓の方へと歩を進め、そっとカーテンの隙間を閉じ……ようとして。

    「……あれ?」

     ふと、見やった部屋のなかに、ルームメイト兼、恋人であるビリー・ワイズが居ない事に気付いた。
     グレイがカーテンの隙間を見逃してしまったばかりに、ビリーの眠りが浅かったらどうしよう、と、そう考えてビリーが眠っているはずのベッドへと視線をやったのだが。

    「ビリー君……?」

     慣れてきた両目でもう一度ビリーの居住スペースを見るが、やはりビリーは居ない。手洗いだろうか。

    「うんん……」

     本来ならばもう一度布団に潜り、速やかに就寝するべきなのだろう。しかし、この月明かりのせいか、どうも目が冴えてしまった。
     意識も既にはっきりとしている。
     グレイは光源のためにひとまずカーテンの隙間をそのままにして、自分達の居住スペースを後にした。
     ホットミルクに蜂蜜でも入れて飲めば、成分の作用ですぐに眠気がやって来るだろう、そう考えて。

     あまり音をたてないようにドアを開けて、食事を摂ったりTV鑑賞等をするリビングへと足を運ぶと、ライトをつけていないはずなのに、あまりにも良好である視界にグレイは戸惑った。
     窓側へと目を向ければ、カーテンは全開になっており、強い月明かりが惜しみ無くリビングへと注がれて──

    「……ビリー、くん……?」

     その視線移動のさなかに、先ほど見当たらなかった赤茶毛の髪色を見つけた。

    「ワォ、グレイ、どしたの?」

    「あ、お、驚かせちゃった……かな、ごめん」

    「んーん大丈夫、喉でも渇いた?」

    「えっと、そんな、感じ」

     ソファーに深く腰かけたビリーが、グレイに気付き、振り向く。
     ゴーグルに隠されていない、海のような青色の光彩がグレイの姿を写してゆるめられ、そのあまりの鮮やかさにグレイは目を奪われた。

     普段から、就寝前やリラックス時にゴーグルを外していた所は幾度と見ていたはずなのだが。

     この、月明かりのせいだろうか。
     夜の、せいだろうか。

     まぶしい。

     まぶしいのに。
     ハッキリと浮かび上がった、インテリアやソファーの陰影は、暗いというよりも『塗りつぶされたような黒』で。
     やはり現時刻が深夜であるということを感じさせる。
     そんな、強烈なコントラストの中心で。


     ──き、れい。


     存在を主張する、
     ビリーの鮮やかな両目の光彩。

     この明暗の狭間のような空間で働く、網膜の細胞が織り成す舞台の上では、なによりも。


     青色が、よく映える。


    「ンン~?どしたのグレイ、お月様も相まってグレイのおめめが宝石みたいにキラキラしてるよ~!そんなに見つめられたら俺っち照れちゃうな~」

    「っ!あ、あう、ごめん……!あの、えっと、……ぷ、プルキニェ現象……!が……!」

    「…………へ?」

    「えっと、網膜の視細胞には錐体細胞と桿体細胞っていう細胞があるんだけど、その二つの間で視感度が」

    「ちょっ、wait wait!グレイったらごまかす時は早口になりがち~!でもそんなとこもスキ!なになにオイラに見とれてた?」

     図星を突かれ、グレイは顔が熱くなるのを感じた。
     楽しげに笑いながら問うビリーは、グレイの両目から、その鮮やかな青を逸らさない。

     じっと見つめられて、耳まで熱を持ち始め、グレイは正直に自白をした。

    「………………う、ん……、その……ビリー君の目が、すごくきれいで……み、見とれて、ました」

     ビリーが満足そうに「ンッフフ、そっかあ」と笑って、ゆっくりと、その両腕をひろげた。

    「ねぇねぇ、こっち来て、グレイ」

     それは、『触れたい』の合図。
     グレイがビリーの隣へゆるく腰かけると、不意に腕を引かれ、

    「ゎ……ひゃっ!」

     二人して、ソファーに寝転ぶかたちとなり、グレイはビリーに抱きしめられた。

    「……グレイ、ドキドキしてる?」

    「っ……!」

     ビリーの両目に見つめられただけでも心臓が高鳴るのだから、これほど体が密着すれば更に鼓動が激しくなるのは必然で。
     それがビリーに伝わってしまった事にグレイは恥ずかしくなり、赤くなっているであろう顔を俯かせてビリーの胸元に顔をうずめる。
     しかし今度は愛するビリーのかおりをいっぱいに吸い込んでしまって、

    「ひぇ……!」

     より心臓があまく、速く、脈打つのを感じた。

    「グレイかわい~」

    「うぅ……」

     しばらくの間そうしていて、ふと、ビリーの口から言葉が紡がれた。

    「なーんか眠れなくてネ。アイマスク外してチラッとグレイのほう見たらカーテン開いてて、ワォ満月きっれ~い!って思ってたらこんな時間」

    「それで……リビングに?」

    「うん、ホットミルクに蜂蜜入れて飲んだら眠れるかな~って」

     それは、偶然にもグレイが考えていたことと全く同じで。

    「っふふ、そっか、僕と一緒だね」

     グレイは小さく笑みをこぼした。

     背の高い男が二人で密着するには些かスペースの足りないソファーの上で、ぽつりぽつりと言葉を交わす。
     眠りへと向かうためにリビングへと赴いたのに、逆に目は冴えてしまって、しかし、だいすきなビリーの体温と、かおりと離れがたくて、グレイはビリーの背中へと回した両手でビリーのシャツを弱く掴んだ。

    「ねぇグレイ、パトロールって午後からだったよね」

    「……?うん」

     ビリーの突然の問いにグレイが首を傾げる。
     現時点で"夜更かし"というには度を越えているのだが、早朝からのパトロールではないぶん、もう少し、もう少しだけと、グレイはこの離れがたさに甘んじていた。
     幸い、ビリーとグレイは二人揃って午後からのパトロールだ。
     あまり健康的にはよろしくないが、時間的な余裕は、あるといえばある。

    「ちょーっとだけ、オイラとお散歩、行かない?」

    「……散歩?」

    「YES!特等席をご用意するヨ!」

    「ふふっ、うん、行きたい」

    「ありがとグレイ!一名様ご案内~!」




     ──────




     はい、これつけてと手渡された、ビリーのスペアのゴーグルを身に付けて、「ど、どう、かな……」とグレイが照れくさそうに尋ねる。

    「オイラのグレイって感じですっごいGOOD」

    「はゎ……ぁぅ……」

     ビリーが発する一言二言だけで、グレイはすぐに耳まで熱くなるが、カーテンも窓も開けたそこから冷たい風が流れてくる。
     火照った体温を下げる夜の空気が、心地いい。

    「じゃ、しっかり掴まっててね!最初は危ないから、口閉じてて~!」

    「う、うん……!」

     ゆるいルームウェアの上からアウターを羽織り、グレイはビリーにしがみつく。
     同じくアウターを羽織ったビリーが、自分ごと、グレイを能力の糸でぐるぐると、しかし息苦しくはならないように巻き付けた。

    「いっくよ~!特等席一名様!夜空のお散歩へご招待~!」

     強く目蓋を閉じたグレイを片腕と糸でしっかりと抱え、ビリーは開け放たれた窓から、




     勢いよく、
     飛び降りた。




    「ひゃっふ~~~!!」

     指先から黄緑色の糸を伸ばし、要所要所にくくりつけてはジェットコースターのように次から次へと、建物の間を跳び回る。

    「はゎわ……!すごい!すごいよビリー君!!」

    「でっしょでしょ~!!」

     建ち並ぶビルの隙間を通り抜け、スポーツ観戦の施設の上を飛び越え、そびえ立つ電波塔を横目に。

     夜の街の上空を、
     自由自在に。

    「すごい!すごい!!僕の憧れのスパイダーヒーローみたい!!わぁあ……!!」

    「えっへへ!誰もがご存知のあんな大物に例えてもらえるなんて、光栄デース!!HAHA~!」

     ビリーにしがみつきながら、目の前に広がる景色を見つめるグレイの光彩が、キラキラと輝く。
     いくらか傾いた満月がそれを照らして、より美しく。より明るく。

     ビリーの青色の両目がきれいだと言ったグレイの両目も、それこそ宝石のようにきれいなもので。

     シトリン、トパーズ、カルサイト、プレナイト、アンバー。

     様々な宝石がビリーの脳を過るが、
     月明かりの効果で、いつもの数倍、明度を上げて光るグレイの両目は、現存するどの宝石とも違う。


     ビリーの心を掴んで離さない、
     この世でいちばん、うつくしい宝石だ。


    「あ!見てビリー君!地平線!」

    「ワ~ォ!!もうすぐ夜が明けるね!」


     目的地はもうけず、跳び回って駆け回って、二人の眼前に現れた、広大な海。

     まだ顔を出してはいないが、海の向こうから昇るであろう太陽の薄い光が、辺りを、夜から朝へと塗り替える準備をしていく。


     その時、

     こんな時間から、既に活動を始めている生き物が、

     二羽。

     大きく羽ばたいて、ビリーとグレイを追い越した。


     仲睦まじげに寄り添い、地平線へ向かって飛行する彼らに、
     自分達の姿が、重なって。


    「ふふっ僕達もまるで、鳥みたい!だね!」

    「んフフ!あの子達も、オイラ達と同じで、眠れなかったとかあり得るかもね~!」

     滑空する彼らを視線で追いかけていると、

    「……あ!」




     ────太陽だ。




     太陽がほんの少し顔を出したその場所から滲んで、朝と夜のグラデーションが出来上がっていく。
     ほんとうに限定的な、その時間。

    「っわ、ぁ……!」

    「びゅーてぃふぉ……すっごいきれいだネ……」

     その光景に目を奪われながら、糸を使ってゆっくりと地面へ降り立ち、ゴーグルを外して二人で砂浜へと足を踏み入れる。

    「……ねえねえグレイ」

    「……?ビリー君?」

    「ごめん、本当はもっとこう……いっぱいかっこつけるつもりだったんだけど」

    「え?」

     黄緑色の糸がしゅるしゅると、グレイの左手の薬指に巻かれて、淡く光った。

    「ごめん。ぶわーって気持ちが止まらなくて、我慢できなくなっちゃった」

    「び、りぃ、君……」

     えへへとばつがわるそうに眉尻を下げて笑うビリーが、光る糸の輪が存在感を放つグレイの左手をとり、背伸びをして、

     下から、

     掬いあげるように、グレイと唇を重ねた。


    「ねえねえ、すき、だいすきだよグレイ、グレイのここ、オレがもらっても、いい……?」

     ビリーは右手の親指で、グレイの左手薬指に通された光る糸をなぞって、問いかける。

     大きく開かれた黄み色の明るい両目から、大粒の涙がぼろぼろとこぼれて、グレイの頬を伝った。右手でぬぐってもぬぐっても、次から次へとあふれてくる。

    「っぅ、……ぅ……!びり、ぃ、君……ッ」

    「本当はいろんなシチュエーションとか台詞とか考えてあったんだケドね、案外、堪え性ないねオレ……。だいすきだよ、グレイ」

    「……っ!!あ、ぁ……!っう……!!」

     しゃくりあげながら泣くグレイの嗚咽に、言葉が混じる。

    「っ、……ッゆび、だけじゃ……っや、だ」

    「グレイ……?」

    「ゆび、だけっ、じゃなく、て、ッ僕のぜんぶ、もらってッ……よぉ……!」

    「……!!」

     今度はビリーの青色の両目が大きく開かれて。
     同じく大粒の涙が流れた。

    「っ、あったりまえ、でしょ!ぜんぶ!ぜ~んぶ!グレイのぜんぶ!オレが、ほしい……!ぜん、ぶ!オレ、に……っ!ちょうだい、ぐれい……っ!!」

    「っう、ん!うん……!!ぜんぶ、もらって、ほしい……!びりー君に、ぜんぶ……!」

    「ごめ、っごめん、グレイ、……これっ、じゃ、ぜんぜん、かっこつかない、ね」

     お互いに涙を袖で雑にぬぐい、鼻を啜るビリーがグレイと目を合わせて、
     その瞬間、

     海が、空が、朝焼けの面積を急激に増やした。

     空の端にまだ色濃く残る夜と、そこへ向かって広がる朝。

     そんな、夜と、朝の、真ん中で。

    「……っあ……」

     ビリーの髪が、朝焼けに、
     ビリーの両目は、夜に。

     二色の空が、それぞれビリーを鮮やかに、強く、際立たせて。

    「……きれい」

     思わず、グレイが感嘆の息をこぼした。

    「どし、たの、ぐれい……オイラに……っ見とれてた?」

    「ふふっ、うん、見とれ、てた……」






     かっこつかないだ何だとは言うが

     この時間は、きっと
     空のすべてが、
     ビリーのための、舞台である




     ──せかいいちだいすきなきみが、せかいいちかっこいい




    far east night bird
    猫叉Master+

    無心で書いていたらイメージ元となっている曲の要素が飛び去っていきました


     ──────
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    そっと、ビリーを起こさな 1368

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