二回目のキス「なぁ、おれたちってつきあってんのか?」
「なぁに? 急に」
「カオルに聞かれたんだよな~『君たち仲良すぎるけどつきあってるの?』ってさ」
「ふぅん。かおくんがねぇ。で、なんて答えたの?」
「ん~……よくわからないけどつきあってるかもしれない……? って」
「なんでそんな曖昧なの……」
「だった別に告白されたわけじゃないし」
「あんたは毎日俺に告白してるけどねぇ」
確かにセナのことは好きだし、毎日好きだ愛してる大好きだ! って言ってるような気がするけれど、セナは「はいはい」の返事が九割だ。たまに一割の確率で「俺も、れおくんのこと嫌いじゃないよぉ」って返ってくる。セナの嫌いは好きだってことは知っているけれど、直接好きだと言われたことはほぼない。
「それにさ、一回おれにキスしただろ」
「気のせいじゃない?」
「い~や。おれが寝てる時にしたの、気づいてないと思ってた?」
「そのまま黙っておいてくれれば可愛げがあったのにねぇ」
クツクツ笑っているセナを他所に、口を尖らせてアイスブルーの瞳を見つめる。楽しそうに笑ってるけど、寝込みを襲うなんて趣味悪いぞ。
「で、なぁに? 俺とつきあいたいわけ?」
どこまでもセナっぽい発言。全く自分からつき合おうなんて言わなさそうなタイプだ。
「おまえがおれのこと好きなんだったら、つきあってやってもいいかな~って思っただけ」
だから、おれも可愛くないセリフで返してやった。さぁ、セナはどう出るのか楽しみだなぁ。
「なっ!?」
真っ直ぐな瞳をしたセナに肩を抱かれたと思った三秒後、唇に柔らかな感触が訪れた。
「まぁ、これが答えかなぁ?」
余裕をこいてニヒルに笑うセナは最高に格好良い。フッと笑みを浮かべた瞬間に周りに花が咲いて、キラキラと光が輝いている。でも今おれが求めているのはそれではない。
「セナ~……今日のおれはそれでは絆されないぞ。ちゃんと言ってくれないと」
腕を組んで、納得していない意を表す。目をパチクリと何回も瞬きをして驚いているセナを、眉をひそめてじーっと見つめる。
「だからぁ……ちゃんとあんたのこと……その……好きっていうか」
「声が小さくて良く聞こえないな~?」
「れおくんのバカ! あんたのこと好きだって言ってんの!」
「わはは☆ おれもセナのことがだ~い好き!」
セナに勢い良く抱きついて、そのまま床へと倒れ込んだ。些かセナに似つかないカエルの鳴き声のような声がしたけれど、それは聞かなかったことにして煌めくアイスブルーの瞳を見つめる。セナの手がゆっくりとおれの頬に添えられた。暖かくて優しい手。
「じゃあおれ達、今からつきあってるってこと?」
「次会ったらかおくんにそう言っておきなよね」
セナが長い睫毛を伏せたので、おれも目を閉じ、二回目のキスをやり直した。今日この瞬間からおれ達は恋人なんだと思ったら嬉し過ぎて、永遠にこのまま体温を感じていたいなと思った。