ここに居るはずがない。居てはならない。そんな小さな気配にシノは呆れ果てた。
シャーウッドの森の小屋から顔を覗かせる。念の為の応急処置セットを片手に森の小道を歩んでいけば、小さく聞こえていた泣き声が大きくなった。
「お嬢様」
シノがそう話しかければ、小さく身を縮こまらせていた一人の少女がびくりと肩を震わせた。まだ齢十にもなっていない、幼い少女。上品なワンピースの裾は泥で散々に汚れており、シノは眉を顰めた。
木漏れ日が癖のない真っ直ぐな金の髪をチラチラと照らす。ヒースがくせっ毛じゃなかったらこんな感じなんだろうな。シノはそうぼんやりと考えながら少女の傍にしゃがみこんだ。
少女は恐る恐る顔をあげる。その大きな青い瞳からはボロボロと大量の涙を零していて、シノを見つけた途端安心したように顔を歪めた。
1229